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第48話:学院に潜む影、狙われるフィルミナ?

「大丈夫か?」


ゼルヴォードは、魔道具を爆発させた男子生徒に目を向ける。

爆風のせいで服は焦げかけているが、怪我はなさそうだった。


「は、はい……すみません、僕のせいで……」


「まぁ、ミスは誰にでもある。問題は"何を間違えたか"だ」


ゼルヴォードは、もう一度その焦げた魔道具を観察した。

魔力回路のズレ、流動圧の偏り……だが、それだけではない。


(……やっぱり、どこかで見たことがある"痕跡"があるな)


「お前、この設計図、誰からもらった?」


男子生徒は少し驚いた顔をした。


「えっと……学院の資料室にあった古い設計図を参考にしました」


(学院の資料室……?)


ゼルヴォードは一瞬考え込む。


この魔力回路のズレ方、単なるミスとは思えない。

まるで"意図的に仕組まれたもの"のようだった。


「……どの資料を見たか、後で教えろ」


「えっ?」


「気になることがあるんでな」


男子生徒は戸惑いつつも、「わ、わかりました……」と頷いた。


ゼルヴォードは腕を組みながら視線を周囲に向ける。


(……それにしても、まだ"視線"を感じるな)


さっきから、誰かがこちらをじっと見ている。


だが、振り向くたびに、その気配は消えてしまう。


(……気のせいじゃねぇな)


「フィルミナ、さっきのリングだけど」


教師が改めてフィルミナの作った"魔力補助リング"を手に取る。


「非常に完成度が高い。学院としても、改良を進めて正式な魔道具として研究する価値があるかもしれない」


「えっ、本当ですか?」


フィルミナの顔が明るくなる。


「ただし、さらに安定性を高める必要がある。魔道士ギルドの協力を仰ぐのも手だな」


その言葉に、ゼルヴォードはわずかに眉をひそめた。


(……魔道士ギルドが絡んでくるのは、ちょっと気になるな)


彼自身、ギルマスのアステリアとは面識があるが、ギルド全体としての動きは読めない。


特に、リオネルのような研究者が関わってくると、"勝手に改造される可能性"がある。


(まぁ、フィルミナが変な実験材料にされないように気をつけるか)


「それじゃあ、私はギルドに報告を……」


教師がリングを持って出ようとした、その時だった。


「おっと、それは困るな」


不意に、教室の入り口から声が響いた。



"ガチャ"


扉が開かれ、そこに立っていたのは、黒衣の男だった。


・特徴:黒いローブに身を包み、顔の半分を覆う仮面をつけている

・口調:丁寧だが、どこか冷たい雰囲気を漂わせている


「すまないが、その指輪……"私のほうでも調査させてもらえないか?」


彼はゆっくりと教室へ入ってきた。


ゼルヴォードはすぐに直感した。


(……コイツ、"普通の学院関係者"じゃねぇな)


アステリアも眉をひそめる。


「あなたは……?」


「ふむ、これは失礼。私は"王都研究機関"の者でして」


男はスッと胸元から王都の研究機関の証を取り出した。


「先ほどの魔道具の爆発について、少し気になることがありましてね」


彼の視線が、フィルミナの作ったリングへと向けられる。


「特に、その指輪……"特殊な魔力反応"を示しているように思えるのですが」


フィルミナは驚いたように自分の指輪を見つめる。


「……え?」


ゼルヴォードはわずかに目を細める。


(……やっぱり、コイツ"何かを知ってやがる"な)


ゼルヴォードは静かに前へ出た。


「研究機関の人間が、わざわざ"学院の授業"に首を突っ込むってのか?」


男は軽く笑った。


「ええ、たまたま"興味深い魔道具の情報"を耳にしましてね」


「そりゃまた、ご熱心なことだ」


ゼルヴォードは腕を組み、男を見据える。


(こいつ……"フィルミナのリング"を狙ってやがる)


確かに、"王都研究機関"は鍛冶や魔道具に関する技術開発を行っている。

だが、こいつが持っている"空気"は、研究者というより……"監視者"のそれだった。


「悪いが、このリングは"俺の弟子"が作ったもんだ」


ゼルヴォードは静かに言った。


「勝手に持ち出すのは、許可できねぇな」


男はしばらくゼルヴォードを見つめた後、クスッと笑う。


「なるほど、"あなたが"彼女の師でしたか」


男は静かに一歩下がった。


「では、今回は引き下がるとしましょう。しかし……」


男の視線が、一瞬だけフィルミナへと向いた。


「その指輪、我々としても非常に興味深いものです。もし、後日"正式な協力"をお願いすることになったら……」


「断る」


ゼルヴォードは即答した。


男は小さく笑い、くるりと踵を返した。


「ふふ……では、またお会いしましょう」


男はそのまま、静かに教室を後にした。


ゼルヴォードは軽く舌打ちする。


「……チッ、面倒なことになりそうだな」


フィルミナは不安そうにゼルヴォードを見つめる。


「師匠……あの人……?」


ゼルヴォードは彼女の頭を軽くポンと叩いた。


「心配すんな。あんな連中に、お前の作ったもんは渡さねぇよ」

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