第46話:魔素鉱の安定化、そして忠告
鍛冶屋ギルドの工房。
ゼルヴォードとリオネルの共同研究が続いていた。
「さて……これで、"暴走しない魔素鉱"が完成したな」
ゼルヴォードは完成した"魔力安定装置"をテーブルに置く。
魔道具名:『魔力変換装置・試作型』
・ランク:A-
・効果:魔力暴走を抑制し、安全な形でエネルギー放出に変換する
・特性:過剰な魔力が蓄積すると、"安全な爆風"として排出
・備考:使用者の魔力量によって変換効率が変動
リオネルが装置を見つめながら、満足げに頷く。
「ふむ、これなら"魔素鉱の危険性"を大幅に下げられる」
「だろ?」
ゼルヴォードはハンマーを肩に担ぎ、ふっと息を吐く。
(まぁ、予定通りだな)
鍛冶屋ギルドの職人たちは、まだ完全に理解しきれていない様子だったが、それでも"なんかスゲェもんができた"のは分かるらしい。
「すげぇな……」
「つまり、"魔力を暴発させずに放出する"装置ってことか?」
「ま、そんな感じだな」
ゼルヴォードは適当に頷くと、リオネルをじっと見た。
「……で、お前ら魔道士ギルドはこれをどう使うつもりだ?」
リオネルは少しだけ目を細める。
「君は勘が鋭いな」
「そりゃな。俺の作ったモンが、後から"変なもん"になってたら嫌だからな」
ゼルヴォードは、テーブルに置いた"魔力変換装置"を指でトントンと叩きながら、ゆっくりと言った。
「"これ以外の改造はするなよ、責任はとらないからな"」
工房内の空気が一瞬ピリッとする。
リオネルは静かにゼルヴォードを見つめた後、微笑を浮かべた。
「……君は、随分と"未来のこと"まで考えているんだな」
「当たり前だ。鍛冶師ってのは"作ったモンの先"まで考えるもんだ」
ゼルヴォードは腕を組み、リオネルを睨む。
「もしも"勝手に改造"して、"この装置"が暴走したら……」
彼はニヤリと笑った。
「……"俺の鍛冶屋ギルドに迷惑がかかる"ってこと、忘れんなよ?」
リオネルはしばらくゼルヴォードを見つめた後、クスッと笑った。
「安心したまえ。魔道士ギルドとしても、"君の忠告"はしっかりと受け止めるよ」
「……ならいいがな」
ゼルヴォードは最後に、もう一度"魔力変換装置"を確認すると、作業台から離れた。
(ま、勝手にいじって暴発しようが、俺の責任じゃねぇ)
彼は内心そう思いながら、肩をすくめた。
「さて、じゃあ"こいつの使い道"はそっちで考えてくれ」
「ありがとう、ゼルヴォード。実に有意義な研究だった」
リオネルは満足げに微笑み、魔道士ギルドの使者たちと共に工房を後にした。
鍛冶屋ギルドを出た後、リオネルはふっと笑う。
「……"これ以上の改造は禁止"か」
彼は空を見上げ、ゼルヴォードの言葉を思い返す。
(だが、"これ以上の改造"ではなく、"応用"なら問題ないだろう?)
リオネルは僅かに目を細め、意味深な笑みを浮かべた。
──魔道士ギルドの"次の計画"が、静かに動き出す……。




