第45話:専門用語が飛び交う異次元の会話
鍛冶屋ギルドの一角、ゼルヴォードの作業台。
ゼルヴォードは魔素鉱を片手に持ち、リオネルと向かい合っていた。
「さて……"魔力暴走を別の形に変換"ってのは、お前も考えてたんだな?」
リオネルは頷く。
「もちろん。だが、変換の方法が問題だ。我々は"魔力圧縮制御"を試していたが、どうやら"外部干渉式の魔力転送"の方が効率が良さそうだ」
ゼルヴォードはニヤリと笑い、カウンターをトントンと指で叩く。
「へぇ……だが、それだと"魔力変換損失"が大きすぎるんじゃねぇか? いくら外部干渉式だとしても、"転送過程で魔力共鳴の位相ずれ"が発生するだろう?」
リオネルは目を輝かせた。
「ほう、面白い指摘だ。"位相ずれ"を最小限に抑えるために、"波動干渉"を利用する手はどうだ?」
「波動干渉か……確かに"振動魔力制御"を応用すれば、共鳴エネルギーのロスは減るな」
「そう、それに"ルーンエングレイヴ技術"を組み合わせれば、エネルギー変換効率が20%向上するはずだ」
「でもよ、それだと"魔力保存則"に引っかかるんじゃねぇか?"エネルギーの累積反応"が起こって暴走する可能性がある」
「確かに……なら"流動魔力制御"を応用するのはどうだ?」
「なるほど! それなら"魔力スパイク現象"を抑えられる!」
──完全に異次元の会話。
「お、おい……なんか話がすげぇことになってねぇか?」
「な、何言ってるのか、さっぱり分からねぇ……」
「"魔力共鳴の位相ずれ"とか言われてもな……なんか難しいことしてるのは分かるが……」
「ゼルヴォードが難しい話をするのは分かるが、魔道士ギルドの奴までノリノリで話してると、もう訳が分からねぇ……」
ギルマスターのグレイヴ・ドランハンも腕を組み、頭を抱えていた。
「……いや、半分くらいは理解できるんだがな……」
「半分理解できるのがスゲェよ、ギルマス……」
職人たちは完全に置いてけぼり。
(フィルミナがいたら、確実に"????"になってただろうな……)
グレイヴはため息をつき、ゼルヴォードたちの会話に割って入った。
「おい、お前らよ……」
「ん?」
「"簡単に説明しろ"」
ゼルヴォードとリオネルは顔を見合わせ、しばし考えた後──
「……"爆発しない爆弾"を作る」
「……"魔力を安全に放出する装置"を作る」
グレイヴは目を細める。
「最初からそう言えや!!!!」
職人たちも「それなら分かる!」と頷くが、それでもまだ理解できていない顔をしていた。
ゼルヴォードは苦笑しながら、改めて魔素鉱を手に持つ。
「ま、結論から言えば、"暴走する魔力を別のエネルギーに変換して、制御可能な魔道具にする"って話だ」
リオネルも頷く。
「魔道士ギルドとしても、この技術は非常に興味深い。我々の"魔力制御装置"とも連携できる可能性がある」
グレイヴは溜息をつきながら、それでもゼルヴォードを見てニヤリと笑った。
「まぁ、いいだろう。"未知の鉱石"をまともに扱える奴は、お前くらいだしな」
ゼルヴォードは笑いながら魔素鉱をポンッと投げ上げる。
「じゃあ、"暴発しない魔素鉱"……作ってやるよ」
──新たな魔道具の開発が、今始まる!




