第40話:鍛冶の極致、古代文字の真理
旧工房の奥、"鉄の処刑人"の鍛冶場。
ゼルヴォードと"殺しの鍛冶師"が対峙していた。
「まさか、鍛冶屋同士で"戦う"ことになるとはな」
黒い鍛冶エプロンの男は、淡く光を放つ剣を握りしめる。
ゼルヴォードはそれを見て、鼻で笑った。
「……それが、お前の"鍛冶の奥義"か?」
「ほう……分かるのか?」
「いや、分かるも何も──"低レベル"すぎて笑えるな」
──ピキッ……
"殺しの鍛冶師"の表情が僅かに歪む。
「貴様……」
ゼルヴォードはゆっくりと、大剣の刃を地面に突き立てた。
ゼルヴォードは指で自分の大剣の刃をなぞりながら、ゆっくりと語る。
「鍛冶には"古代文字"という概念がある。お前の技術はせいぜい──"第一段階"だ」
"殺しの鍛冶師"の眉が動く。
「……古代文字?」
「知らねぇなら教えてやるよ。お前のレベルじゃ、一生辿り着けねぇ世界だがな」
ゼルヴォードは刃に魔力を流し込む。
次の瞬間、大剣の表面に"淡い紋様"が浮かび上がった。
「これが"第一段階"──"魔力共鳴"。
鍛えられた武器が、持ち主の魔力に適応しやすくなる技術だ」
"殺しの鍛冶師"が握る剣も、僅かに光を帯びていた。
「お前の剣はここ止まりだな」
「……続けろ」
ゼルヴォードは不敵に笑い、さらに魔力を込める。
「"第二段階"──"意志の刻印"。
これは武器そのものに"持ち主の戦闘技術"を刻み込み、最適な斬撃を補助する技術だ」
ゼルヴォードの大剣が微かに震え、刃が淡く光を放ち始める。
「ここからが"本物の鍛冶師"の領域だ」
"殺しの鍛冶師"は息を呑む。
(……何だ、この剣の雰囲気は!?)
ゼルヴォードは最後に、刃全体を覆うように"古代文字"を浮かび上がらせた。
「そして"第三段階"──"魂鋼"」
──ゴォォォォ……!!!
ゼルヴォードの大剣が、まるで生き物のように脈動する。
「これは武器に"魂の波長"を刻み込み、持ち主の精神と連動させる技術だ。
斬撃の精度が限界まで引き上げられ、"持ち主が望む最適解の一撃"を生み出す」
"殺しの鍛冶師"の顔が蒼白になる。
「馬鹿な……そんな技術が……!」
「お前が知らねぇだけだよ」
ゼルヴォードは軽く肩をすくめる。
「ま、"第一段階"で満足してる時点で、お前が俺と同じ鍛冶師を名乗る資格はねぇ」
"殺しの鍛冶師"は震える手で剣を構えた。
「な、なら……この剣で証明してやる……!!」
彼が一歩踏み込む。
──しかし、その瞬間。
──シュバッ!!!
ゼルヴォードの姿が掻き消えた。
「……っ!?」
次の瞬間、彼の視界が"赤く染まる"。
「な、何……?」
ゼルヴォードの大剣が既に"殺しの鍛冶師"の胸元に突き刺さっていた。
「終わりだ」
ゼルヴォードが冷たく呟く。
「"魂鋼"に刻まれた一撃は、戦う前から"勝ち"が確定してんだよ」
"殺しの鍛冶師"は口を開こうとしたが──
──ドサッ
言葉を紡ぐ間もなく、そのまま崩れ落ちた。
ゼルヴォードは大剣の血を軽く払い、淡々と呟く。
「死人に口なし、だ」
彼の視線が、背後にあった"奇妙な鍛冶台"へ向く。
(……こいつ、何を作ろうとしてた?)
ゼルヴォードは鍛冶場の奥へと歩を進めた。




