第29話:鍛冶と学びの道
ゼルヴォードが棚から取り出した過去作の武器を見て、フィルミナは目を輝かせていた。
(こんな武器を作れるなんて……)
彼女の中に、「もっと知りたい」という気持ちが膨らんでいく。
そんな中、アステリアが新たな話題を持ち出した。
「ところで、フィルミナ。あなた、"座学"を学ぶ気はない?」
フィルミナは驚いたようにアステリアを見つめた。
「座学……?」
アステリアは優雅に微笑む。
「ええ。魔道士ギルドには"王都魔術学院"という教育機関があってね。
そこでは、魔法理論や魔道具の使い方、歴史なんかも学べるのよ」
ゼルヴォードは腕を組みながら、興味なさそうに聞いていたが、ふと考えた。
(確かに、鍛冶の実践だけじゃなく、"知識"も必要かもしれねぇな)
フィルミナは少し考えた後、ゼルヴォードを見上げる。
「……通った方がいい?」
ゼルヴォードはニヤリと笑う。
「お前が"鍛冶師"としてやっていくなら、"魔力の仕組み"とかも知っといた方がいいだろうな。
鍛冶の腕を磨くのも大事だが、知識がねぇと"活かし方"を間違える」
アステリアも頷いた。
「魔道学院に通えば、同年代の仲間もできるわ。……あなた、今までずっと孤立してたんでしょう?」
フィルミナは少し表情を曇らせた。
(確かに……私はずっと、研究施設に閉じ込められていた)
友達なんて、一度もできたことがない。
「……分かった。通ってみる」
ゼルヴォードは軽く頷いた。
「よし、じゃあ"仕事"と"勉強"の両立だな。しっかりやれよ?」
フィルミナは真剣な表情で頷いた。
「……うん」
ゼルヴォードはフィルミナの成長を見守りながらも、鍛冶屋としての仕事をこなしていく。
彼自身も、「古代の杖」の修復という依頼を抱えており、そちらの調査を進めることになる。
(……魔術学院ってのも、ちょっと覗いてみるのも面白いかもな)
ゼルヴォードは気まぐれにそう考えた。




