第26話:それぞれの道
ギルドでの手続きを終えた後、ゼルヴォードは大きく伸びをした。
「よし、これで一件落着ってとこか」
エリックは少し複雑な表情を浮かべながら、ゼルヴォードを見つめる。
「ゼルヴォードさん……俺、ここで別行動しようと思います」
ゼルヴォードは驚いた様子も見せずに、エリックの目をじっと見た。
「ほう、どういう心境の変化だ?」
エリックは拳を握りしめながら答えた。
「俺……まだまだ弱いって思い知らされました。ゼルヴォードさんの動きを見て、正直、衝撃だったんです。
あんな戦い方……俺には到底できない。でも、俺は俺なりに強くなりたいんです」
ゼルヴォードは静かに頷いた。
「……いい決断だな」
エリックは驚いた顔をする。
「え? 反対しないんですか?」
「俺がお前の人生を決めるわけじゃねぇしな。それに、"自分の道を探す"ってのは大事なことだ」
ゼルヴォードは少し笑い、肩をすくめる。
「まぁ、しばらくは鍛冶の仕事に集中するつもりだしな。お前がどう動こうが、俺は俺のやることをやるだけだ」
エリックは感謝の気持ちを込めながら頷いた。
「……ありがとうございます。俺、しばらく旅に出ます。またいつか会いましょう!」
ゼルヴォードは軽く手を上げて見送る。
「気が向いたら、また鍛冶屋に来いよ。剣くらいは見てやるぜ」
エリックを見送った後、ゼルヴォードはフィルミナを連れて自分の工房へと向かった。
「さて、お前の"適性"を確認するか」
フィルミナは驚いたようにゼルヴォードを見つめる。
「適性……?」
「お前が何に向いてるのか、それを調べるための道具を使う」
ゼルヴォードは棚から昔作った"魔力適性診断具"を取り出した。
■ ゼルヴォードの昔作ったアイテム
名称:魔力適性計測具【エーテルスコープ】
ランク:B+
効果:対象者の魔力適性を視覚化し、属性や得意な魔法系統を判定する
特性:
魔力を流し込むことで適性が色で表示される
強大な魔力がある場合、装置が反応しすぎて誤作動することもある
「これに手をかざして、魔力を少し流してみろ」
フィルミナは戸惑いながらも、エーテルスコープに手を伸ばした。
──次の瞬間、装置が強烈に光を放つ。
「……おいおい」
ゼルヴォードは目を細める。
装置に浮かび上がったのは──
"深い紫と黒の混じった魔力"
さらに、通常の魔力診断ではあまり見られない、"銀色の光"が微かに混ざっていた。
「……これは、面白ぇな」
フィルミナは驚いた様子でゼルヴォードを見つめる。
「これは……?」
ゼルヴォードは腕を組みながら、ゆっくりと説明する。
「お前の魔力は"闇"と"魔鋼の適性"を持ってるみてぇだな」
「魔鋼の適性……?」
「つまり、お前は"魔力と金属を融合させることに向いてる"ってことだ」
フィルミナは戸惑いながらも、自分の手を見つめる。
「……だから、私が実験体にされてたの?」
「まぁ、そりゃそうだろうな」
ゼルヴォードは興味深そうに笑った。
(これは鍛冶師としては、なかなか面白ぇ素材だな)
「お前、鍛冶の才能もあるかもしれねぇぞ?」
フィルミナは驚いた表情を浮かべる。
「私が……鍛冶を?」
「そうだ。お前の力を使えば、"魔力を込めた金属の加工"ができるかもしれねぇ」
ゼルヴォードは椅子に座り、ニヤリと笑った。
「助手兼弟子……やってみるか?」
フィルミナは少し考えた後、静かに頷いた。
「……やってみる」
ゼルヴォードは満足そうに頷く。
(さて、新しい鍛冶屋生活の始まりだな)




