表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/186

第23話:格の違い

──ズンッ!!


巨大な剣が振り下ろされる。


空気が震え、床が砕けるほどの衝撃。


エリックは息をのむ。


「な……ッ!!?」


もし今の攻撃をまともに受けていたら、粉々になっていたはずだ。


しかし──


「遅ぇな」


ゼルヴォードは、ただの一歩で攻撃を躱していた。


(この速度……!?)


エリックは信じられないものを見たような顔をする。

ゼルヴォードの動きは、まるで"戦場を知り尽くした者"のようだった。


「……命令を継続。"適合者"の捕獲を──」


人造兵士は再び構え直し、ゼルヴォードを狙う。


だが、その様子を見て、ゼルヴォードは鼻で笑った。


「……なんだ、お前」


人造兵士の大剣が振り上げられる。


だが、ゼルヴォードは動かない。


それどころか、肩の力を抜き、片手で剣を担いだままだった。


「こんな不良品で……俺を止められるとでも思ってんのか?」


「……」


人造兵士はゼルヴォードの言葉に反応せず、攻撃を開始する。


──ズバッ!!


今度は回転斬り。

力と遠心力を乗せた、強烈な一撃。


──しかし。


──カキィン!!


「っ!?」


ゼルヴォードは剣の"側面"だけで攻撃を受け流していた。


その場から一歩も動かず、ただ、軽く腕を動かしただけで。


エリックが呆然とする。


(……こいつ、今ので全く力を込めてねぇ!!)


まるで、子供の遊びを見ているような余裕。


人造兵士が再び攻撃を繰り出す。


ゼルヴォードは、それを完全に見切り、受け流し続ける。


──カンッ、カンッ、カンッ……


音が響くたびに、ゼルヴォードが圧倒的に優位に立っていることが明らかになる。


「……つまんねぇな」


ゼルヴォードは軽く息を吐くと、剣を肩に担ぎ直した。


「お前みてぇな半端モンは、所詮"模造品"だ」


「……ッ!!」


「俺はな、"本物の異界の脅威"とやり合ってきたんだよ」


ゼルヴォードの脳裏に、一瞬、過去の戦場が蘇る。


──世界の理すら歪ませる、"異界の怪物"たち。

──人間の枠を超えた、"絶望そのもの"。

──戦場の大地が血と肉で染まり、魔物の咆哮が空を裂いた。


(……あれに比べれば、こいつなんざ"おもちゃ"みてぇなもんだ)


ゼルヴォードは、不敵に笑った。


「本物の異界の化け物ってのはな──」


「"殺気を感じた瞬間には、もう首が飛んでる"んだよ」


エリックが背筋を震わせる。


「……ッ!?」


(今の……ゼルヴォードさんの目……!!)


まるで、"死を司る戦士"のような視線だった。


その瞬間──


ゼルヴォードの空気が変わる。


人造兵士が再び剣を振るう。


──ズバァッ!!


その斬撃は、まるで風を断つような鋭さだった。


だが、次の瞬間。


──"ゼルヴォードの姿が消えた"。


「……ッ!?」


人造兵士は戸惑いながら周囲を見渡す。


エリックも、一瞬何が起きたのか理解できなかった。


(ゼルヴォードさんが……消えた!?)


いや、違う。


──ゼルヴォードは"すでに"動いていたのだ。


そして、次の瞬間──


──ズンッ!!


ゼルヴォードの剣が、人造兵士の"胴体"を叩きつける。


「……ッ!!」


──ゴゴゴォォォン!!!


床が砕け、人造兵士の巨体が"吹き飛んだ"。


一瞬だった。


人造兵士は壁に叩きつけられ、そのまま床に転がる。


「……分析不能……」


ガクッ、と膝をつく。


(たった……一撃で……!?)


エリックは、ただ呆然と立ち尽くす。


ゼルヴォードは剣を軽く振り、ため息をついた。


「ったく、見た目だけデカくしても、強くなるわけじゃねぇんだよ」


人造兵士は膝をついたまま、ガクガクと体を震わせていた。


「……修復不可能……戦闘継続、不能……」


ゼルヴォードはニヤリと笑う。


「お前も"おととい来やがれ"って言っとくぜ」


その言葉を最後に、人造兵士の光が消えた。


エリックは震える手で剣を握りながら、ゼルヴォードを見た。


「……ゼルヴォードさん、今の……」


ゼルヴォードは肩をすくめる。


「別に"本気"じゃねぇよ」


「っ……!!」


(今の動きで、本気じゃない……!?)


エリックはゼルヴォードの背中を見つめながら、改めて理解する。


(この人……一体、どのランクだったんだ?)


ゼルヴォードは、そんなエリックの様子に気づきながら、通路の奥を見つめる。


「……さぁて、"実験の核心"はもうすぐそこだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ