第22話:第五研究区画、突入!
ゼルヴォードは壁に刻まれた「第五研究区画」の文字を見つめながら、不敵に笑った。
「研究区画……? これは面白ぇな」
エリックは目を丸くしながらゼルヴォードを見る。
「え、まさか……?」
ゼルヴォードは何の迷いもなく、倉庫の扉を蹴り開けた。
──ドンッ!!
「んじゃ、さっそく行くか」
「えええっ!? ちょ、普通は情報収集とか……!」
「何のために追いかけたと思ってんだ? ここでビビってもしょうがねぇだろ?」
エリックは頭を抱えた。
(この人、本当に慎重に動くって概念ないのか!?)
しかし、ゼルヴォードの言葉には妙な説得力がある。
結局、エリックも覚悟を決めた。
「……分かりました。行きますよ」
ゼルヴォードはニヤリと笑い、エリックの肩をポンと叩いた。
「よし、行くぞ」
倉庫の奥には、地下へ続く隠し通路があった。
(なるほどな……地下施設か)
ゼルヴォードは通路を慎重に進みながら、周囲を観察する。
壁には黒ずんだ鉄扉が並んでおり、ところどころに奇妙な魔法陣が刻まれている。
「……ここ、本当に"研究施設"なんですか?」
エリックが不安そうに呟く。
ゼルヴォードは壁の魔法陣をじっと見つめた後、低く答えた。
「研究ってのは、何も"学問"だけじゃねぇ。"人体実験"だって研究の一つだ」
エリックの顔色が変わる。
「……嫌な予感しかしないですね」
ゼルヴォードは剣を抜き、扉を一つ蹴り開けた。
──ギィ……
中には、ボロボロの鎧が散乱していた。
(……いや、違う)
エリックが近づくと、目を見開く。
「これ……"人"じゃないですか?」
鎧の中には、乾いた骨が転がっていた。
ゼルヴォードは少し考えた後、結論を出した。
「……まぁ、答えは奥にあるだろうな」
「ってことは、奥まで行く気なんですね?」
「当たり前だ」
ゼルヴォードは笑いながら、通路のさらに奥へと進んだ。
奥へ進むにつれ、雰囲気が変わっていく。
壁には古い書類や研究記録が散乱しており、ところどころに血の跡が残っていた。
「ここ、本当にやばい場所ですよ……」
エリックは剣を握る手に汗を滲ませた。
──その時だった。
「……侵入者か?」
低く響く声が、廊下の奥から聞こえた。
ゼルヴォードは即座に剣を構え、視線を向ける。
暗がりから姿を現したのは──
巨大な鎧を身にまとった、異形の戦士だった。
(……これは)
エリックは言葉を失う。
「おいおい、こいつ……"人"じゃねぇな」
ゼルヴォードは目を細めながら、相手の姿を確認した。
──青黒い鎧、無骨な大剣、そして露出した部分には肉がなく、金属と同化している。
「まさか、これって……!」
エリックが息を呑む。
「……"造られた兵士"ってやつか」
異形の兵士は、ゆっくりと剣を持ち上げると、無機質な声で呟いた。
「……命令を受領。"適合者"の捕獲を開始する」
「……"適合者"ねぇ」
ゼルヴォードは剣を肩に担ぎ、ゆっくりと構えを取った。
「なら、俺も"鍛冶屋"として見極めさせてもらうぜ」
──ズンッ!!
兵士が巨大な剣を振り上げ、ゼルヴォード目掛けて一撃を繰り出す!




