表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/186

第21話:絶望の境界

──キィンッ!!


倉庫内に金属音が響く。


ゼルヴォードの黒鋼のロングソードと、デガルの短剣が交差していた。


火花が散り、デガルがニヤリと笑う。


「ほう……俺の攻撃を防ぐか」


「当たり前だ。お前の動き、雑すぎるぜ?」


ゼルヴォードは軽く笑いながら剣を構え直した。


(こいつ、速さはあるが……力が足りねぇ)


デガルは短剣を巧みに操りながら、再び間合いを詰める。


──シュンッ!


一瞬でゼルヴォードの背後へ回り込み、短剣を突き出した。


「もらっ──」


──ガキンッ!!


「なっ!?」


デガルの短剣は、ゼルヴォードの剣の"柄"に正確に弾かれていた。


ゼルヴォードは微動だにせず、視線だけでデガルを見下ろしている。


「……何だ、今の防御……!?」


「防御? いや、ただの"見切り"だ」


デガルの顔が歪む。


(完全に読まれた……!?)


デガルは冷や汗を流しながら、再び姿勢を低くする。


「……速さが足りねぇなら、もっと上げるだけだ!」


彼は短剣を逆手に構え、猛然と連撃を繰り出した。


──シュババババッ!!


目にも止まらぬ速さの斬撃が、ゼルヴォードに襲い掛かる。


……だが。


──カンッ、カンッ、カンッ……


「は?」


デガルの短剣はすべて正確に弾かれていた。


ゼルヴォードは、一歩も動かず、剣の角度だけで"受け流している"。


「そんなんで勝てると思ってんのか?」


「なっ……!?」


デガルの顔が青ざめる。


(こいつ……反応が異常だ……!)


(いや、それだけじゃない……俺の"動きそのもの"を読んでる!?)


ゼルヴォードは軽く溜息をつき、剣を肩に担いだ。


「お前、"速い"だけだろ?」


「……っ!」


「速ぇのは確かにすごいがよ……それだけじゃ、戦いには勝てねぇんだよ」


デガルは焦りながら、再び突進しようとする。


しかし──


ゼルヴォードの手が、一瞬だけ淡く輝いた。


「……!? なんだ、今のは……」


(体が、動かねぇ!?)


デガルは理解できなかった。


目の前のゼルヴォードが、まるで"絶対的な存在"のように見えた。


ゼルヴォードはニヤリと笑い、剣を軽く振る。


──シュゥゥ……


彼の剣が"わずかに赤熱する"。


「試しに、一太刀くらい喰らってみるか?」


「っ!!」


デガルの背筋が凍りつく。


(この剣……やばい!!)


本能が、"この一撃を喰らえば終わる"と警告を発していた。


「……クソッ!」


デガルは即座に後方へ跳び、距離を取った。


ゼルヴォードはその様子を見て、軽く笑う。


「やっと"命の価値"に気づいたか?」


「っ……!!」


デガルの手が震える。


(こんなの……戦いじゃねぇ)


(これは……"勝てない絶望"だ……!)


ゼルヴォードは剣を鞘に戻しながら、肩を回した。


「おい、デガルとか言ったな」


デガルは警戒を解かず、いつでも逃げられる体勢を取っている。


ゼルヴォードはニヤリと笑い、こう言い放った。


「"おととい来やがれ"」


「っ!!」


デガルは歯を食いしばり、拳を握る。


「……クソッ!!」


そして、全力で後方へ跳び、倉庫の窓を突き破って逃げ去った。


エリックが驚いたようにゼルヴォードを見る。


「……いいんですか? 逃がして」


ゼルヴォードは肩をすくめる。


「ああ、殺す価値もねぇ」


「……強すぎる……」


エリックは思わず呟いた。


さっきの戦闘は、戦いですらなかった。

ゼルヴォードの余裕が、まるで絶対的な支配者のように見えた。


(……俺は、どれだけ未熟なんだろうな)


エリックは自分の剣を握りしめながら、決意を固める。


(このままじゃ……いつまで経っても足手まといだ)


ゼルヴォードは最後に倉庫内を見渡し、何か手がかりがないか探る。


すると、壁に何かが刻まれているのを発見した。


「……これは」


ゼルヴォードは刻まれた文字を指でなぞる。


"第五研究区画"


ゼルヴォードは小さく笑った。


「……追跡は、まだ終わらねぇな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ