第199話:噂を辿る刃
食卓に落ちた沈黙は、短くはなかった。
ノクシエルは俯いたまま、自分の手元を見つめていた。
考えが間違っているとは言われなかった。だが、やり方は間違っていると、はっきり言われた。
その言葉は、思っていた以上に重かった。
「……で、どうする気だ」
先に口を開いたのはノクシエルだった。
顔を上げると、ゼルヴォードは椅子にもたれたまま、静かにこちらを見ている。怒っているわけでもない。責め立てるつもりもなさそうだ。だが、何も流してはいない目だった。
「お前が持ち込んだ噂を確かめる」
「確かめるって、どうやって」
「まずは出どころを探る」
あまりに当然のように言うので、ノクシエルは眉をひそめた。
「そんなの、すぐ見つかるわけないだろ。酒場で転がってる噂話だぞ」
「だからこそ、最初に手癖の悪い流れを知ってるやつに聞く」
その言い方に、ノクシエルは嫌な予感を覚えた。
「……誰にだ」
「冒険者ギルドだ」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
ゼルヴォードはもう立ち上がっている。
話は終わったと言わんばかりの動きだった。
「行くぞ」
「いや待て、なんでそうなる」
「冒険者が集まる場所は噂も集まる。特に武具の話はな」
「だからって、ギルドに正面から入るのか?」
「入るが」
ノクシエルはこめかみを押さえたくなった。
ギルド。
よりにもよって、冒険者ギルド。
普段の自分なら、まず近づかない場所だ。依頼の出入りが多く、人の目も多い。受付、職員、常連冒険者。顔を覚えられるには最悪で、妙な噂を抱えている人間が立ち寄るには向いていない。
まして今は、昨夜盗みに入って捕まったばかりだ。別件とはいえ、こういう時に公的な場所へ行くのは落ち着かないにもほどがある。
「……私は行かない」
「お前の話を聞いたのはお前だろう」
「だからって、ギルドに入る理由にはならない」
「ある」
即答だった。
「お前がどこで、どういう調子でその噂を拾ったかは、お前にしかわからん」
ぐ、とノクシエルは言葉を詰まらせる。
たしかにそれはそうだ。
そうだが、納得したくはない。
その空気を埋めるように、カリーナが静かに口を開いた。
「ノクシエルさん」
「……なんだよ」
「逃げるつもりなら、今のうちに諦めたほうがいいと思います」
ノクシエルが睨むと、カリーナは少しも動じずに続けた。
「ゼルヴォードさんが動くと決めた時点で、たぶん連れていかれます」
「連れていかれます、って……」
「それに、あなたも本当は知りたいのでしょう?」
その一言に、ノクシエルは黙った。
知りたい。
それは事実だった。
自分が信じていた噂が、どこまで本当で、どこから歪んでいたのか。
もし誰かが意図して流していたのだとしたら、何のためなのか。
それを知らないままでは、今後また同じようなことを繰り返しかねない。
「……最悪だ」
「自覚があるなら結構だ」
ゼルヴォードはそう言って工房の方へ向かった。
ノクシエルは渋々立ち上がり、その背を追う。
カリーナも、二人を見送りながら淡々と告げた。
「ノクシエルさん」
「まだ何かあるのか」
「今回は、まだよかっただけです」
振り返ると、カリーナはいつもの落ち着いた顔のまま立っていた。
「相手がゼルヴォードさんだったから、朝を迎えられました。でも、同じ真似を続ければ、そのうち本当に命を落とします」
ノクシエルは口を開きかけ、閉じた。
昨夜から何度も刺さっている言葉だ。
耳障りなくせに、否定できない。
「……説教は、もう十分だ」
「忠告です」
カリーナは静かに言う。
「助けたいからこそ動くのなら、死なないやり方を覚えてください」
返す言葉は出なかった。
工房へ入ると、朝の光が金属棚や工具類を鈍く照らしていた。
昨夜は闇の中で得体の知れなさばかりが目についた場所も、昼の明かりの下では、ひとつひとつが実直な仕事場に見える。
ゼルヴォードは棚のひとつを開け、しばし中を見てから、一本の短剣を取り出した。
「使え」
無造作に放られ、ノクシエルは反射で受け取る。
「……は?」
「貸してやる」
手の中の短剣を見て、ノクシエルは一瞬言葉を失った。
黒鉄めいた深い色の刀身。
細身だが安っぽさはまるでなく、重心の収まりも異様にいい。刃の中央には青白い紋が細く走っているが、飾りとも術式とも断じきれない、静かな刻み方だった。
黒い煙が出ているわけでもない。
禍々しい圧もない。
だが、触れた瞬間にわかる。これはその辺の店先に並ぶ品ではない。
「……盗人に貸すには、ずいぶん上等すぎるだろ」
「今は盗人じゃない」
ゼルヴォードは平然と返した。
「噂を持ち込んだ当人だ」
「答えになってない」
「お前の得物じゃ、面倒が起きた時に保たん」
ノクシエルは思わず自分の腰の短剣に触れた。
昨夜弾き飛ばされたそれは、返してはもらっている。だが、たしかに質はよくない。使えないわけではないが、無理をさせれば折れる類だ。
「面倒が起きる前提かよ」
「起きるだろうな」
断言だった。
ノクシエルは顔をしかめたが、否定できなかった。
ゼルヴォードが動く。しかも噂の出どころを探る。平穏に済む絵のほうが浮かばない。
「……名前は」
「聞くのか」
「借り物なら、覚えておいたほうがいい」
ゼルヴォードはほんの一瞬だけ黙り、それから短く答えた。
「ヴェルノアだ」
ノクシエルはもう一度、手の中の短剣を見る。
「ヴェルノア、ね……」
口にした響きは静かだった。
不思議と、その名は黒い刀身によく馴染んだ。
鞘に収めて腰へ差すと、妙に収まりがいい。借り物のはずなのに、手の位置も抜き差しの感覚も自然すぎて、かえって気味が悪いくらいだった。
「壊すなよ」
ゼルヴォードが背を向けたまま言う。
「貸してるだけだ」
「……わかってる」
本当にそう思っているのか、自分でも半分怪しかった。
こんな品、借りるほうが落ち着かない。
それでもノクシエルは、腰に加わったその重みが嫌ではなかった。
工房を出てしばらく歩くと、町はすっかり昼前の活気に包まれていた。
行商人の声。
荷車の軋み。
露店の呼び込み。
朝食時の静けさとはまるで違う、日中のルナエストだ。
ゼルヴォードは周囲を気にする様子もなく歩く。
ノクシエルはその半歩後ろをついていきながら、何度目かの溜息を吐いた。
「本当に行くのか……」
「ここまで来て帰るのか」
「帰れるなら帰りたい」
「そうか」
「止めろよ、そこは少しは止めろ」
ゼルヴォードは答えなかった。
その無反応が腹立たしい。
やがて見えてきたのは、冒険者ギルドの建物だった。
出入りは昼前でも多い。
革鎧姿の冒険者、荷を持った運び手、受付へ向かう見習い風の若者。壁には依頼板があり、その前に何人かが集まっている。
ノクシエルは無意識に足を止めた。
「……やっぱり嫌だ」
「何がだ」
「全部だよ」
「具体性がないな」
「こういう場所、入らないんだよ私は」
ゼルヴォードがようやく足を止めて振り返る。
「後ろ暗いことがあるやつの言い分だな」
「あるって言ってるようなもんだろ今のは」
「昨夜の時点で知ってる」
ぐうの音も出ない。
結局、ノクシエルは渋い顔のままゼルヴォードについて中へ入った。
ギルド内は人の声と紙の音と靴音が混ざり、外よりもさらに落ち着かない。
酒臭い時間帯ではないぶん、まだましではあるが、それでも自分のような人間が立ち寄る場所ではないという意識が抜けない。
ゼルヴォードは迷いなく受付へ向かう。
受付にいた若い女性は、顔を上げるとすぐにゼルヴォードに気づいたらしく、営業用の笑顔の中にわずかな親しみを混ぜた。
「おはようございます、ゼルヴォードさん。本日はご依頼でしょうか?」
「いや。オルグを呼んでくれ」
あまりにも自然に言うものだから、ノクシエルは思わず横を見た。
受付嬢も一瞬だけ目を瞬かせる。
だが、ゼルヴォードを知らない相手を見る顔ではない。
「オルグ副長を、ですか?」
「ああ」
「ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」
「噂話だ」
ノクシエルは頭を抱えたくなった。
何ひとつ説明になっていない。
だが受付嬢は露骨に怪しむでもなく、困ったように少しだけ微笑んだ。
「……ゼルヴォードさんらしいご用件ですね」
「そうか?」
「はい。少々お待ちください、確認してまいります」
そう言って奥へ下がっていく。
ノクシエルは小声で吐き捨てた。
「……知り合いなのかよ」
「ギルドに出入りしてれば顔くらいは知られる」
「顔を知られてる程度の相手に、サブギルドマスター呼べって言わないだろ普通」
「そうか?」
「そうだよ」
ゼルヴォードは本気でわかっていないような顔だった。
その鈍さなのか図太さなのか判別しづらい部分が、余計に厄介だ。
「出てくるわけないだろ」
ノクシエルはさらに声を潜める。
「サブギルドマスターだぞ? 受付でいきなり呼んで、噂話です、で出てくる相手かよ」
「出てくる」
「なんでそんな自信満々なんだよ」
「たぶん面倒そうな顔はする」
「それはもう半分駄目だろ」
言っているうちに、奥の扉が開いた。
「まったく……朝から何の用だ、ゼルヴォード」
低く太い声とともに現れた男を見て、ノクシエルは言葉を失った。
本当に出てきた。
大柄だった。
いや、大柄という言葉では足りない。威圧感のある体躯に、漆黒の毛並みを持つ狼獣人。現場を知る者特有の圧が、立っているだけで伝わってくる。右頬には古傷があり、鋭い金の目は険しく見えるのに、完全な冷たさではない。荒っぽさの奥に、面倒見のよさを隠している顔だった。
しかも、口では面倒そうにしながら、本気で嫌がっているわけでもない。
言葉とは裏腹に足取りは自然で、むしろ「またか」と慣れているようにすら見えた。
「噂を聞きたい」
「雑すぎるだろうが」
男――オルグはそう言いながらも、その場で追い返そうとはしなかった。
視線がノクシエルにも向く。
「……そっちの嬢ちゃんは何だ」
「噂の持ち込み元だ」
「また妙なのを拾ってきたな、お前は」
ノクシエルは呆れを通り越して乾いた気分になっていた。
受付で普通に顔を通す。
サブギルドマスターが文句を言いながら出てくる。
しかも、その呼び出しにどこか慣れている。
何者だよ、こいつ。
昨夜から何度目かわからない感想が、また頭を過った。
オルグは近くの空いた一角へ顎をしゃくった。
「立ち話で済む話か?」
「済めばそれでいい」
「済まなきゃ?」
「その時考える」
「お前な……」
深いため息をひとつ吐き、オルグは三人で壁際へ移るよう促した。
周囲の冒険者たちはちらちら見てくるが、サブギルドマスターが絡んでいるとわかると、あからさまに聞き耳を立てる者はいない。
「で、何の噂だ」
オルグの問いに、ゼルヴォードは横目でノクシエルを見る。
「話せ」
仕方なく、ノクシエルが口を開いた。
「……ゼルヴォードの工房に、表に流れない武具があるって噂だ」
オルグの眉がぴくりと動く。
「一般には出ない品を抱え込んでる、とかな」
「ほう」
「依頼記録にも載らない特別な武器が動いてる、とも聞いた。必要な相手にしか渡さないとか、裏で回してるとか……そういう話だ」
言い終わる頃には、自分で口にしていてもだいぶ胡散臭い。
だが、昨夜の時点では確かにそう思わせるだけの筋があった。
オルグは腕を組み、ゼルヴォードを見た。
「……まあ、尾ひれはつきやすいな」
「だろうな」
その反応に、ノクシエルはむっとする。
「なんだよ。その言い方だと、元になる何かはあるってことか」
「あるにはある」
答えたのはオルグだった。
「こいつが特注品を打つのは珍しくない。しかも、普通の鍛冶師じゃ作れないような一点物を平然と出すことがある」
「おい」
「隠しても無駄だろ、この程度は」
ゼルヴォードは不満そうにしたが、否定はしなかった。
オルグは続ける。
「ただし、別に裏で抱え込んでるわけじゃない。表に出ないってのは、そもそも一点物だから数がないのと、持ち主側が余計な騒ぎを避けたがるからだ。依頼記録だって、全部が全部、馬鹿正直に細部まで表へ出るわけじゃない」
ノクシエルは唇を引き結ぶ。
つまり、完全な嘘ではない。
だが、自分が聞いた形のままでもない。
「市場で一回、『えらくいい剣を持ってる冒険者がいた』なんて話が出ればな」
オルグは肩をすくめる。
「次には『どこそこの工房の裏仕事だ』になる。酒場を二つ三つ回る頃には、『表には流れない武具を抱えてる鍛冶屋がいる』だ」
「尾ひれだな」
「ああ、尾ひれだ」
ゼルヴォードとオルグが揃って言うので、ノクシエルは少しだけ居心地が悪くなった。
だが、そこでゼルヴォードが続けた。
「問題は、それがまだ消えていないことだ」
オルグの目つきが、少しだけ変わる。
「……そうだな」
「与太話なら、そのうち別の話に流れる。だが、お前みたいなのが実際に忍び込む程度には、形を保ってる」
ゼルヴォードの視線がノクシエルに向く。
責めるでもなく、ただ事実として置いてくる目だった。
「誰かが完全に消さずに放ってるか、面白がって時々混ぜ返してる」
「あるいは」
オルグが低く継いだ。
「意図して利用してるやつがいるか、だな」
ノクシエルは顔を上げた。
「利用?」
「武具絡みの噂ってのはな、流し方次第でいくらでも都合よく使える」
オルグは周囲に一度だけ視線をやってから、声を落とした。
「本当に質のいい品を扱う工房の名を混ぜれば、話そのものに妙な真実味が出る。すると、別口の横流しや不正な売買話まで信じる馬鹿が増える」
「……」
「あるいは逆だ。本当にいい物を作る工房の周りをわざと濁して、目を逸らさせる手もある」
ノクシエルの背筋に、嫌な感覚が走る。
自分はそれに引っかかったのかもしれない。
ただの噂の被害者、というだけでは済まない。誰かの都合のいい駒にされかけた可能性がある。
「心当たりは?」
ゼルヴォードの問いに、オルグはすぐには答えなかった。
「なくはない。中古武具の仲介を妙に急に広げてる連中がいる。表向きは合法だが、流れがきれいじゃない。どこで拾ったかわからん品が混ざることもある」
「そいつらが噂を混ぜてるか」
「断定はできん。だが、筋は通る」
ノクシエルが呟く。
「……じゃあ、私は」
「見事に釣られた側だな」
オルグの即答に、ぐさりと刺さった。
「言い方!」
「事実だろうが。でなきゃ、こんな鍛冶屋の工房に夜這いみたいな真似せん」
「夜這い言うな!」
思わず声を上げると、近くの冒険者が何人かこちらを見た。
ノクシエルは慌てて口を閉じる。
オルグは鼻で笑い、ゼルヴォードへ視線を戻す。
「で、どうする」
「辿る」
「だろうな」
その返しがあまりにも自然で、ノクシエルはまたしても頭が痛くなった。
本当にこの二人は何なんだ。
ゼルヴォードは短く言った。
「場所と名を寄越せ」
「後で紙にして回す。だが、お前一人で勝手に潰すなよ」
「潰す気はない」
「お前の“ない”は信用しづらい」
「心外だな」
「どの口が言う」
二人のやり取りは妙に慣れていた。
友人というには少し乾いていて、ただの顔見知りにしては踏み込みが深い。互いに相手の手間を知っている者同士の距離感だった。
ノクシエルはそれを眺めながら、無意識に腰のヴェルノアへ触れた。
鞘越しなのに、ひやりとした感触がある。
不思議な短剣だった。静かで、存在感を押しつけてこないのに、手を置くと妙に安心する。
ただの借り物にしては、妙だ。
しかもその静けさの奥に、細く折り畳まれた何かが潜んでいるような気配がある。抜けばよく切れる、では済まない類の密度だ。
小さくまとまっているくせに、中身だけは妙に重い。
そんな印象だった。
「ひとつ聞く」
ノクシエルが口を開くと、オルグが視線だけで続きを促した。
「その仲介連中……本当にきな臭いなら、ギルドは動かないのか」
「証拠が薄い段階じゃ動きづらい」
オルグは現実的な声で答える。
「噂だけならなおさらだ。だが、噂を餌に人を動かしてるなら話は変わる」
そこでゼルヴォードが言う。
「なら、噂を追えばいい」
「簡単に言うな」
「簡単じゃないから聞きに来た」
オルグは盛大に息を吐いた。
「……まったく。最初からそれを言え」
「言ってる」
「言い方が雑なんだよ、お前は」
ノクシエルはとうとう片手で額を押さえた。
会話の雑さと進み方の妙な早さに、ついていくのがやっとだった。
だが同時に、ひとつだけはっきりしたことがある。
この噂は、完全な空ではない。
断片の事実に尾ひれがついて膨らみ、そこへ誰かが都合よく手を加えている可能性が高い。
そして、自分はその濁った流れを真に受けて、ゼルヴォードの工房に踏み込んだ。
情けない。
だが、ここで目を逸らすほうがもっと情けない。
「……案内ならする」
気づけば、そう口にしていた。
ゼルヴォードとオルグが同時にこちらを見る。
「私が噂を拾ったあたりの酒場とか、裏通りとか、声の出どころに近そうな場所は覚えてる」
ノクシエルは居心地悪そうに目を逸らしながら続けた。
「最後まで付き合う義理はないけど……少なくとも、変な噂に踊らされたままで終わるのは気に入らない」
オルグが小さく口の端を上げた。
「素直じゃねえな」
「うるさい」
ゼルヴォードは短く頷く。
「それでいい」
それだけだった。
余計な評価も、褒め言葉もない。
けれど、その一言は妙に重みがあった。
冒険者ギルドのざわめきの中、ノクシエルはもう一度だけヴェルノアに触れた。
やはり静かだ。
静かなまま、妙に頼もしい。
ただの短剣にしては、出来がよすぎる。
だが、今は深く考えないことにした。
考えるべきは、噂のほうだ。
誰が流したのか。
どこで歪んだのか。
何のために、ゼルヴォードの名がそこへ混ざったのか。
その答えを追うために、自分は今ここにいる。
昨夜、盗みに入った工房の鍛冶屋と並んで。
つくづく、ひどい朝の続きだとノクシエルは思った。
けれど、たぶん――ここから先は、もう昨夜までと同じではいられなかった。




