表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/186

第113章:運命を打つ者として

──王都鍛冶師ギルド、試練石修復から数日後。


ゼルヴォードは鍛冶場で、いつものように火を起こし、槌を振るっていた。


カンッ──カンッ──カンッ……!!


「……ん、悪くねぇな」


目の前の剣は、完璧だった。

バランス、重量、刃の鋭さ。

長年培ってきた鍛冶技術を結集した一本と言える。


だが──


(……どれも最高の武器だった。だが、本当に作るべきものはまだ作っちゃいねぇ)


ゼルヴォードは剣を鍛冶台に置き、深く息を吐いた。


・戦場で通用する強靭な剣、折れない盾、精密な細工の短剣──数々の名品を生み出してきた。

・しかし、それらは"理想的な武器"ではあっても、"運命を変える武器"ではなかった。


まだ足りない。


修復した試練石の前に立ち尽くし、自分の槌が打つべきものを考えていた。

その答えが見えた気がする──いや、まだぼんやりとした輪郭が見えたにすぎない。


(俺が打つべきものは、まだこの手の中にはねぇ)


それはきっと、もっと先にある。

今はまだ、通過点にすぎないのだ。


その夜、ゼルヴォードは鍛冶場の外で、仲間たちと共に酒を酌み交わしていた。


「ゼルさん、本当にお疲れさまでした!」


フィルミナが笑顔で杯を掲げる。

カリーナも隣で頷いた。


「試練石の修復、無事に終わりましたね。これでギルドも安心ですね」


ゼルヴォードは酒を一口飲み、ニヤリと笑う。


「まぁな。でも、これで終わりってわけじゃねぇ」


アステリアが静かに杯を傾ける。


「……ええ。むしろ、ここからが始まり、というところかしら」


ゼルヴォードは火の灯る鍛冶場を見つめながら言った。


「俺は、まだ打たなきゃならねぇもんがある。それを見つけるまでは、止まる気はねぇよ」


フィルミナが微笑む。


「じゃあ、次はどんな武器を作るんですか?」


ゼルヴォードは焚き火の炎をじっと見つめ、ゆっくりと答えた。


「……"運命"を打つ」


その言葉に、誰もが一瞬、息を呑んだ。


「運命……?」


カリーナが目を輝かせる。


アステリアは意味深に微笑みながら杯を置いた。


「ふふ……また面白いものが見られそうね」


ゼルヴォードは槌を握りしめ、笑う。


「鍛冶師ってのはよ、どこまで行っても"打ち続ける"しかねぇんだよ」


だが、今はまだ通過点にすぎない。


・自分の鍛冶技術は、まだ未完成。

・今まで作ったどんな武器よりも、「本当に打つべきもの」はまだ作れていない。

・この槌は、まだ"運命"を打つ段階には達していない。


(……それでも、俺は進むしかねぇ)


──運命を打つ者として、ゼルヴォードの旅はまだ続く。


物語は、新たなる章へ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ