表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/186

第10話:新たな拠点と、エルフの弓使い

ゼルヴォードは冒険者ギルドの奥へ進み、物件窓口へ向かう前に、ふと足を止めた。


(……せっかくだ。依頼掲示板でも見ておくか)


ギルド中央に設置された巨大な掲示板には、びっしりと依頼が貼られている。

討伐、護衛、採集、探索、護送──あらゆる仕事が並ぶこの場所は、冒険者たちが"戦いの道"を決める分岐点でもある。


ゼルヴォードは、懐かしい気持ちで掲示板を眺めた。


(昔は、あの掲示板に貼られる前の依頼を受けてたな……)


ギルド最高位・レッド級。

それは、掲示板には載らない国の命運を左右するような依頼ばかりだった。


今、目の前にある依頼は、E級からサファイア級まで幅広い。

F級やE級の依頼は、スライム退治や薬草採取、簡単な護衛など。

逆に上位の依頼になればなるほど、対象がドラゴンの眷属や盗賊団の討伐になっていく。


(ブラウン級の連中が受けられる依頼は……まぁ、妥当な内容だな)


ゼルヴォードは軽く眺めながら、ふとサファイア級の依頼に目を止めた。


◆ 依頼内容:『古代遺跡・シルヴァリオンの探索』

・推奨ランク:サファイア級以上

・依頼主:学術協会

・目的:遺跡内部の安全確認、および調査員の護衛

・危険度:中(低級~中級モンスターの出現あり)


(……シルヴァリオン遺跡か)


ゼルヴォードはその名に覚えがあった。

かつてレッド級だった頃、近くの戦場を通ったことがある。

"そこに眠る遺物には、鍛冶技術のヒントになるものがある"という噂もあった。


「……おや? あなた、その依頼に興味があるの?」


澄んだ声が、ゼルヴォードの横から聞こえた。


◆ 弓使いの冒険者(サファイア級)


ゼルヴォードが視線を向けると、弓を背負った冒険者の女性が立っていた。

すらりとした長身に、落ち着いた雰囲気を持つ。


サファイア級のバッジが付いていることから、それなりの実力者なのだろう。


「いや、昔ちょっと近くを通ったことがあってな」


ゼルヴォードが軽く肩をすくめると、女性は少し目を細める。


「この依頼を受けるつもり?」


「いや、俺は冒険者じゃねぇからな」


「……なるほど、鍛冶師さん?」


ゼルヴォードは頷きつつ、彼女の背中にあるロングボウをちらりと見た。


「……お前、その弓、手入れはちゃんとしてるか?」


女性の表情が僅かに驚きに変わる。


「えっ? ええ、もちろん……」


「なら、少し構えてみろ」


女性は少し怪訝そうにしながらも、ロングボウを持ち、軽く構えてみせた。


ゼルヴォードは弓の握り部分に視線を落とすと、ため息をついた。


「お前、その弓、グリップ部分が微妙にずれてる。

撃つ時、ちょっと手首に違和感が出てるだろ?」


女性は驚いたようにゼルヴォードを見た。


「……まさか、そこまで分かるなんて」


「俺は鍛冶師だからな。武器のことはよく見てる」


女性は少し考え込むように弓を見つめた。


「確かに、最近少し違和感があったの。でも、調整しても治らなくて……」


「多分、グリップの木材が湿気を吸って微妙に歪んでる。

このままだと、長時間戦った時にズレが大きくなって、精度が落ちる」


ゼルヴォードの言葉に、女性は真剣な表情で頷いた。


「……ありがとう、助言感謝するわ」


「気にすんな。戦場で武器がズレるのは命に関わるからな」


女性はじっとゼルヴォードを見つめた後、小さく笑った。


「そういえば、名乗ってなかったわね。私はライラ・フェルディナンド。サファイア級の冒険者よ」


「ゼルヴォード・カレグスだ。鍛冶師をやってる」


「ゼルヴォード……覚えておくわ」


ライラは微笑みながら去っていった。


(……まぁ、悪くない出会いだったな)


そんなことを思いながら、ゼルヴォードは物件窓口へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ