緊急事態は突然に
えーっと、人は人生で何回緊急事態に心臓マッサージをする事になるんだろう?
もちろん僕は医者では無い。
覚えてるだけで4回目?
例の少年探偵やじっちゃんの孫程では無いけど死にかけすぎじゃないだろうか?
どなたも救急隊に引き渡して無事らしいからまだ救われてるけど、今回はかなりレベルが違った。
斜向かいの家の高齢者の方。
何日前から倒れていたのか分からないけど飼い猫さんがずっと助けを求めて鳴いてるのに気が付いて、いや、捨て猫の子猫が鳴いてると思って探し回ったけど居ないから気のせいかと帰ろうとしてた。
でも、鳴き声は止まない。
「何処に居るの?」
声をかけると予想外の所から反応があった。
多分僕が思うに猫や犬、他の動物達も人の言葉を理解してるんじゃないだろうか。
決死の覚悟だったのかも知れない。
掃き出し窓のガラスに何回も頭から突進して来る黒猫を見付けた。
そして視線を上げると斜向かいの高齢者の女性が倒れていた。
敢えて詳細は控えようかな。
とりあえず言えるのは部屋に染み付いた死臭。
ただ、昏睡状態なのか息は有る。
すぐに救急に連絡して、指示通り心臓マッサージや脈拍の確認等を行うと、必死に助けを求めて来た黒猫がフラフラしながら擦り寄ってきた。
恐らくガラスに何回も頭をぶつけて軽い脳震盪を起こしているんだろう。
「大丈夫だよ」
と、声を掛けて心臓マッサージを続ける。
幸か不幸か都会のこの街は救急車も来るのが早い。
多分、ピザやデリバリーサービスより早い。
救急隊の方に引き渡し帰ろうと思ったらある事に気付いた。
猫…
飼い主不在
餌無い
餓死…
いやいやいや、それはダメだろ
少しして警察の人が来て事情を話して見えない場所の窓の鍵を開けておく許可を得た。
親族の方が早く見つかって対応してくれるのを願うしかない。
そんな訳で救急隊の方からを言われた消毒とシャワーを済ませ、今日もコインランドリーで乾燥機を眺めてる。