6新パーティ誕生
『如月 伊織の覚醒ファイルのダウンロード完了、これより覚醒シーケンスに移行します』
『姫野 氷華の覚醒ファイルのダウンロード完了、これより覚醒シーケンスに移行します』
精霊の声が頭に響き、目の前がホワイトアウトする。
これは? そうだ。初めてダンジョンに入った時と同じ。
何処か異空間としか言えない処に俺はいた。
『如月 伊織の覚醒シーケンス完了。パラメータの追加設定を行って下さい』
俺のステータスボードには初めてダンジョンに入った時と同じボードが表示されていた。
【ステータスパラメータ設定】
追加ポイント:60
STR(筋力):0
DEF(耐久力):0
SPD(敏捷力):40
INT(知力):0
MAG(魔法攻撃力):0
REG(魔法防御力):0
HP(生命値):0
MP(魔力値):0
俺は迷うことはなかった。
母さんの理論ではパラメータを不利な、つまり極端な極フリにすると高位精霊が宿りやすい。が、覚醒したからと言って精霊が変わってしまう事はない。
俺はパラメータを平均的に振った。
【ステータスパラメータ設定】
追加ポイント:0
STR(筋力):10
DEF(耐久力):10
SPD(敏捷力):40
INT(知力):8
MAG(魔法攻撃力):8
REG(魔法防御力):8
HP(生命値):8
MP(魔力値):8
『如月 伊織の設定を有効にしますか? Yes/No』
俺は『Yes』を選び、声を出した。
「これでいい。これからどうしたらいい?」
『如月 伊織のパラメータ決定の意思確認。覚醒シーケンス。ステータスを再構成します』
俺のステータスボードを見ると。
探索者レベル100:如月伊織
精霊:アディヨーギー・シヴァ
STR(筋力):164(+33)
DEF(耐久力):164(+33)
SPD(敏捷力):491
INT(知力):142
MAG(魔法攻撃力):142
REG(魔法防御力):142
HP(生命値):270
MP(魔力値):270
『スキル最大保有数を十二から二十四に拡張します』
『続いてURスキル選択箱からスキルを選んでください。内容を表示します』
ボードにスキル選択箱の内容が表示される。
【斬撃】筋力、耐久力、敏捷力100倍(効果時間一秒)
【魔力爆発】知力、魔法攻撃力100倍(効果時間一秒)
【爆裂魔法】火魔法範囲攻撃魔法(消費魔力MP1)
俺は悩んだ。【魔力爆発】と【爆裂魔法】が同時に取れるならいいが、一択となると【斬撃】も捨てがたい。
問題は俺の固有スキル。
俺の固有スキルは未だ次元波動爆縮しか発現していない。
前のパーティメンバーは既に五、六個の固有スキルが発現している。
ランクが低いとパーティから嫌われる点がこれ。
固有スキルは強力なモノが多く、これがあるとないとでは大違い。
だがソロで行くと決めた以上、現状で最善の選択をするよりない。
俺の精霊が剣技などの前衛よりのスキル構成になるのか、魔法主体の後衛よりなのかが予めわかっていれば一時の苦労はいとわないが、現状で最善となると。
俺の精霊シヴァは火と破壊、そして時の神。
後衛職って言う感じはしない。
それに俺は次元流古武道の師範なんかもやっている。
ステータスさえ高ければ前衛職にうってつけ。
剣技という便利なスキルはない。
どんなに力が強く、どんなに早く動けても、基本動作は自分で学ばなければならない。
実際、探索者の多くが剣道や柔道に勤しんでいる。
現状、攻撃魔法のスキルを一つも持たない俺に【魔力爆発】の選択はない。
残るは【斬撃】か【爆裂魔法】。
もう、ここは好みの問題だろう。
俺は子供の頃から探索者になるために古武道を極めた。
ならば、【斬撃】の一択だろう。
魔法はおいおいスキル習得すればいい。
爆裂魔法は効果範囲は広いが個への威力はそれ程高くない。
ダンジョンのラスボスを倒す場合、【斬撃】の方が価値が高い。
つくづく実感した。
パーティていうのは本当に理に叶っている。
ソロでやるとなると複数への対処をせざるを得ない。
俺はスキル選択箱から【斬撃】を選んだ。するとさっきの八王子のD級第二ダンジョンの五階層のボス部屋に戻っていた。
「ねえ、あんた。羽生真白先生の息子って本当?」
「ほんとだ。軽蔑するか?」
俺は気持ちがナーバスになった。
これまで母さんの事が学校で知られた事はなかった。
母さんをバカにするヤツは許せない。
だけど、自分から言う程馬鹿でもない。
自らトラブルの種を蒔く気はない。
「ううん。あたしは羽生真白先生の事を信じてる。お母さんの恩人だもの」
「母さんの論文を信じてくれるのか?」
「ええ、信じているからあたしはパラメータを敏捷力と魔法攻撃力に極フリしたの。最悪Eランクでもいいかと思ったけど、無事Fランクになった」
「お前! Fランクなのか?」
俺は驚いた。姫野が低ランクという噂は知っていたが、実際に聞いた者はいない。
彼女は絶えずソロで活動して低ランクのダンジョンで探索者ポイントを根気よく集めるスタイル。
それで低ランクだとか、がり勉地味眼鏡なんて揶揄されていた。
でも、まさか低ランク処かFランクなんて信じられなかった。
「あたしが羽生真白先生の事信じているって、わかった? あの論文は確かに重要な実験データや資料が欠落している。それ自体は先生も認めてるわ。全ては研究機関の都合で時期尚早な研究を発表せざるを得なかった。あの論文の問題点は研究機関のご都合主義とマスコミの理解不能な行動の方よ。ちょっと資料を確認すれば誰でも事態はわかった筈よ」
「・・・姫野」
俺は意外な理解者に思わず涙が出そうになった。
「あなたが皆が言うような唯の馬鹿とは疑問だったけど、ようやく得心がいった。そういう訳だから、あんた、あたしとパーティを組みなさい」
「う、うん。もちろん、ん、だ、んん?」
今、突然パーティに誘われなかったか俺?
「何を鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるの? あたしがパーティに入れてやるって言ってんだから、さっさと大喜びしなさい!」
「いや、お前もソロじゃん。・・・Fランクじゃん!」
「あなた、Fランクに不服があるって言うの? 自分のやってる事や言っている事と矛盾してるじゃないの! あたしとパーティを組めって言うのに何で不服なの!」
「だって、そんな顔赤くして言われたら、デートに誘われているみたいで、自然に断る感じに身体がなるだろ?」
「何よちょっと彼女持ちだったからって! 今日、振られたんでしょ!」
俺がぎょっとすると、姫野の顔が蒼白になって。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃなくて。ただ、お互い、いいパートナーになれそうじゃん、あたし達。さっきの戦いでそう思わなかった?」
「何で知ってんだ? 俺が振られた事」
「ごめん。あなたは知らないんだよね。メッセージアプリのクラスグループにあの動画がアップされてたの。あたしはあのお節介な委員長に無理やり登録させられてて、それで」
「いや、気にするな。事実だし、そんなに気を使ってもらって・・・嬉しいよ」
「別に、あたしはあなたのこと・・・キだから・・・じゃなくて、人間として当然の事」
姫野がなんか一瞬変な事言ったような気がしたけど、こいつ、意外といいヤツだな。
俺はパーティについて、前向きに善処する事にした。
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