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29闇堕ちの幼馴染

幼馴染の女の子、つむぎ視点


私は何て事をしてしまったのだろう?


何度も何度も自問自答する。


答えは出ない。気の迷いじゃない。


私は自分の意志で、伊織を格下の者と見下し、縁を切ろうとした。


でも、伊織が告白してくれた時・・・。


涙が出た。


伊織と交際を始めたのは打算尽くしだった。


私の事を良くわかってくれているし、私も伊織の事は良く知っているから安心できる。


それに自分を一番愛してくれて、私を甘やかせてくれるのは間違いない自信があった。


そんな打算尽くしの伊織の告白へのYESでも、私の涙は本物だったと思う。


だって、気が付いたら出ていたんだもの。


打算尽くしと自分では思っていたけど、本当に嬉しく思う自分がいたのも事実。


伊織の告白に答えたのは打算だけじゃなかった。


人間、打算だけで動く程単純じゃない。


私は本当に伊織の事が好きだった。


それに気が付かない自分がいた。


打算で藤堂君に気持ちを移したけど、藤堂君へのは打算しかなかった。


真実の愛。


それは伊織にしか感じなかった。


伊織が私の内面も見抜いていた上で付き合っていた事は衝撃だった。


みなと同じように見かけと、幼馴染というシチュエーションだけが原因だと思っていた。


でも、違った。伊織は私の汚らしい内面を知っていても、なお付き合っていた。


私は本当になんて事をしてしまったのだろう?


伊織が高校全国大会で大活躍をしたの事を見て、つくづく自分の愚かさ加減を実感する。


そもそも伊織は格下の住む世界が違う人間なんかじゃなかった。


むしろ、私の方が格下。


そんな私でも、伊織は決して切り捨てるような事はしないだろう。


内面最悪の私にさえ無償の愛をささげてくれた伊織。


探索者として将来有望確実な彼。


そんな素敵な彼を私はふってしまった。


後悔はつきない。


「でも・・・。でも」


思わず思ってしまう。


「優しい伊織なら、きっと許してくれる」


そう、伊織は優しい。


誰よりも私が知っている。


それに長い十年にも及ぶ付き合いの私を伊織が切り捨てる筈がない。


私は気を取り直して、伊織がいる道場の稽古場に向かった。


伊織は私のお父さんが経営する次元流武術の師範をしてくれている。


今頃は稽古の最中の筈。


久しぶりに顔を見に行こう。


勇気を出して! 私!


そう言って、稽古場を覗くと。


「!!!!!」


声にならない声が出た。


思わず物陰に身をひそめてしまう。


伊織は最近特待生の稽古に勤しんでいると聞いていた。


なんでも将来有望な子で、特待生として伊織が推薦した。


今の子がおそらくその特待生。


その特待生の正体が・・・。


姫野さんだった。


ダサい筈の姫野さんは眼鏡を外しておしゃれな髪型に、制服も整えると、女優さん並みの美貌だった。


女の私ですら綺麗と感嘆してしまう。


最近、彼女と親しくしている。


もう一度稽古場の方を見ると、試合が終わったのか、二人で談笑している。


「・・・。綺麗。・・・。お似合い」


自分の口から出た言葉にゾッとする。


伊織の隣は私の特等席。


そんな私達に『お似合い』・・・。


何度言われて来たかわからない。


聞きなれて、自分でも意識した事がなかった。


でも、私は伊織とその隣で笑顔を浮かべる姫野さんをお似合いと思ってしまった。


そんな事はあり得ない。


あっちゃいけない。


私以外の女の子が伊織とお似合いなんて・・・。


ましてや、私がそんな風に思うなんて、あっちゃいけない。


伊織にお似合いなのは私だけなのに!


私だけなの!


気が付くと、気持ちが昂り、涙が出て来て止まらなかった。


自分の部屋に逃げ帰るように戻った時、不意にスマホが鳴った。


・・・。こんな時に。


通知には宮本さんとあった。他にも通知が見えた。


メッセージアプリには藤堂君の事で相談したいと言う一言が。


宮本さんは何か秘密を抱えていた。


教室で伊織が冤罪をかけられた時、宮本さんは不可思議な態度をとった。


ダンジョンに潜る時にそれとなく、聞いたが、気にしないでの一言。


宮本さんは何か重大な問題を抱えている。


それもダンジョン内での殺人事件絡み。


そして、今、藤堂君絡みで相談したいと言っている。


もし、藤堂君が殺人事件に関与しているとしたら?


私が藤堂君を振った後、たくさんの男の子から交際の申し込みがあった。


当然、私に釣り合う男の子なんている筈もなく、全部断ったけど、臆病な子はメッセージアプリで告白して来たり、頼んでもいないのに情報をくれた。


藤堂君は宮本さんとも隠れて付き合っているというなんて話も知った。


怒りが湧いたが、それより伊織の方が気になっていたから無視していた。


それ以降も藤堂君が隠れて宮本さんと付き合い、既に身体の関係にあるとか、宮本さんが密かに子供をおろした事があるとか悪い噂も聞いた。


ようは、宮本さんは藤堂君の都合がいい女という訳だ。


そんな彼女が藤堂君絡みで相談をしたい。


もし、それが例の殺人事件と関係してるならば?


「これ、使えるんじゃない?」


思わず、口元が緩む。


伊織の隣は私の指定席。


それを横取りするような女には制裁を加えないと。


分をわきまえさせてやる。


伊織だって、本当は私と復縁したい筈。


姫野さんなんて所詮最近ポッと出の女に過ぎない。


私達の十年以上の歴史の間に入り込む余地などあるはずがない。


感情が高まると、電話に出た。


宮本さんの要件を聞いた時、やはり想像通りだった。


私は宮本さんに良い解決方法を伝えた。


殺人事件の犯人を伊織だと断定させて、あの鬱陶しい姫野さんを懲らしめて、さすがの伊織もあの子に気持ちが移る事なんてないような。


そんなプランを思いついた。


伊織には殺人事件の犯人になってもらおう。


そして、そんな彼を唯一支える私に、きっと伊織も心を戻してくれるに違いない。


宮本さんに助言を送った後、思わず笑みがこぼれて・・・。


部屋中に私の高笑いが鳴り響いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] あれ?これって墓穴掘り行ってない?特に宮本さんの方は。 だって、殺人事件があった事を知っている、伊織がその犯人だ、って決めつけている時点で、ダンジョンに居たって事だよな? それともう一つ…
[気になる点] 8話前で反省したかと思ったらコレか(呆れ) やっぱり東堂とは類友なカスだな、このクソ女…。
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