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23全国高校探索者大会予選2

ダンジョンの一回層に進むと競技場が見えてきた。


ここは一回層にもモンスターが出ない安らぎの間がある珍しいダンジョン。


ダンジョンにフロアボスがいるのは五回層おきだが、次の階層には必ず安らぎの間がある。


自然とはかけ離れた安らぎの間だが、実際、これがなかったから、ダンジョン攻略など不可能。


フロアボスを倒したものの、初見なら確実にパーティーはボロボロの状態。


その疲労やHP、MPを回復するには、安らぎの間は不可欠。


このダンジョンの一回層に安らぎの間があるのは不自然ともいえる。


しかし、初めてダンジョンに潜る場合、このダンジョンは都合がいい。


八王子にも同様のダンジョンがあり、俺も初めて潜ったのはそこ。


まるで初心者の為にあるかの様なダンジョン。


それが各地域に一か所は必ずある。


どこまでもゲームの様なダンジョン世界。


「じゃ、行くか」


「もちろん! 任された!」


「目標は圧倒的一番なのですわ」


「当然だぜ」


俺たちは指定された端末のコクーンに入る。


『羊水を注入致します。無害かつ、心理的ストレス以外安全ですのでご安心ください』


脳内に響くのは精霊の声じゃない。


主催者のナビゲーターの声。


一つのパーティーに一名のナビゲーターが付き、様々なサポートをしてくれる。


シミュレーションバトルは一年生の実習以来だから助かる。


羊水に満たされるのも、無害と知識ではあっても、コクーンの中が液体で満たされていくのはかなり精神的にキツい。


人は水に対して本能的に恐怖を感じるからな。


羊水に満たされるが、呼吸にも、耳や鼻に何も違和感がない。


不思議な液体だが、これもダンジョン産の物質。


この羊水は俺達の思考を読み取り、寸分違わぬ様仮想空間に完璧に投影する。


これもまた、このゲームの様なダンジョンを作った創造者の善意か。


そんなことを考えていると、視界の光が消えて、戦いのフィールドが現れる。


「市街戦を想定したのか」


「割りと定番だからね」


「戦争するみたいで嫌ですわ」


「結菜、ここはあくまでコンピュータが作り出した仮想空間。誰も死なない、が、故にその忌避感は命取りになるから早く捨てていけ」


「そうよ。ゲームって割り切るの」


「分かりましたのですわ」


結菜はおっとりした性格だからか、対人戦には忌避感を持っているようだ。


実の所、俺も人を剣で斬ったり、魔法攻撃することには抵抗がある。


無いやつの方が普通じゃない。


「委員長って、ほんとに真面目ね。あたしなんて、疑似体験って言っても、人をぶった斬ったり、魔法で吹っ飛ばせるかと思うと、ワクワクしちゃうわ」


一人普通じゃないサイコさんがいた。


氷華・・・多分、お前は黙っていた方がモテるタイプだと思うぞ。


「伊織?」


「ん? なんだ?」


「今、すっごく失礼なことを考えてなかった?」


「いや、そんなことはないぞ」


「私もですわ」


鋭いな、氷華。だけど失礼なことじゃないぞ。


客観的な事実。


あと、結菜。お前、俺と同じこと考えていたことバレバレたぜ。


こいつも黙ってた方が・・・。


「伊織。それより始まるみたい」


「ああ、上空の飛空船のカウントダウンが始まったみたいだな」


「作戦はどうするのですの? 定石は各個撃破、一撃離脱戦法ですわ」


「三つのクランがそれぞれ組んでいる。俺たちにその戦法は使えない」


「それではどうするのですの?」


氷華の興味が大会開始の方に向いて助かった。


それに結菜の疑問に、俺は考えがあった。


各個撃破? 一撃離脱戦法? いや、俺たちは分散して、ただ蹂躙する。それだけ。


☆☆☆


上空の飛空船のカウントダウンがゼロになる。


「行くぞ!」


「任された!」


「やってみますわ」


結菜は大き目なビルの一階に潜んで待ち伏せ。


俺と氷華は単独で左右の他のクランを潰す作戦。


一つのクランから十のパーティが選抜されている。


従って、一人あたりの仮想敵の人数は五十人以上。


結菜には俺達のクラン【灼熱の蒼焔】を迎え撃ってもらう。


察知のスキル持ちは当然いるだろうから、俺達が他のクランを殲滅した後、結菜が単騎で潜んでいる事を知れば必ず襲い掛かる。


結菜の広範囲攻撃魔法【煉獄地獄】で一網打尽にできる。


レベル120のステータスと礼装【炎の柱】の炎属性の魔法の威力30%アップはけた違いだぜ。


陰陽師の力を使わなくとも、五十人位、一気に殲滅できる。


ひたすら走る。俺の担当は東京都心のクラン【閃光のエリアル】。


優勝候補のパーティを抱える最大勢力。


彼らの実力は間違いないな。


俺の礼装【智慧ちえの眼】は全てを見通す。


僅かな音、かすかな風音、五感の全てから得られる情報から全てを見通す。


奴ら、鶴翼かくよく陣で待ち構えている。


この陣は名前の通り、鶴が羽根を広げたかのようなⅤ字型の陣で、仮想空間には壁がある事を利用し、壁を背に大将、おそらく優勝候補を置き、左右前方に張り出す戦術。


こいつら、兵法まで勉強しているって訳。


流石、優勝候補にして、優勝回数が最も多いクラン。


だが残念だな。その戦術は誤りだぜ。


俺は普通の速度で走っている。


普通の探索者位を想定している。


本気で走って無いって事。


そこにひっかかる筈。


「行け! 単騎で突っ込んで来るバカがいるぜ!」


「おしッ! 任せとけ!」


「やってやるぜ!」


バカはお前らだよ。


奇襲攻撃をかけるべきだろ?


なんで伏兵が自身の存在を暴露する。


舐めすぎなんだよ。


俺は一気に本来のステータス通りの速度に増速して本陣に迫った。

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