9 猫がいる
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花屋に就職して三日目のこと。
支店用のパックのお花を作っていた時、窓から猫が見えた。
猫がいる。
そこにいる。
なぜにいる?
狩りか?
散歩か?
声をかけてみよう。反応してくれるかな?
「みゃー」
と、わたしは窓の外にいる猫に声をかけた。
「みーちゃんかい!?」
「・・・・・」
七十先輩が反応した。
「いまの鳴き声、青木さん、あんたかい?」
「は、はい。すみません、あそこに猫がいたのでつい」
「いまの声うちで昔飼ってたみーちゃんにそっくりだった。・・・あんた・・・、もしかしてみーちゃんの生まれ変わりかい?」
違う。
「・・、あの、猫だった記憶はございませんが・・・」
わたしは困惑ぎみに答えた。
「そうか、そうだよねぇ。でも・・、そうだよ、あんたはきっとみーちゃんの生まれ変わりだよ。あんた人間に生まれ変わることができたんだねえ。よかったねぇ。こうしてまたあんたに会えるなんて、あたしゃ幸せだよ」
七十先輩は涙ぐみわたしの手を力強く握りしめた。
「・・・」
何かおかしい。
これ以降、七十先輩はわたしをみーちゃんと呼ぶようになった。
・・・、まあ、いいか。
それで彼女の幸せが一個増えたなら。