7 自惚れる女はやがて。(林香苗の場合)
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腹が立つ!
最近社長もあまりかわいがってくれなくなったし。
もしかして支店の小娘、青木の方に心変わりしたんじゃ・・・。
社長も組長も、あんな色気のない小娘のどこがいいっていうの?!
組長がこの店に自分で直接花を取りに来るようになった頃、取り入ろうとしたけどうまくいかなかった。
私より先に青木を気にいってしまったようだった。
青木がいなければ、もう少し時間があれば、私が組長のお気に入りになれてたかもしれないのに。
社長もいいけど、やっぱり組長レベルはもっといい。危険な魅力に溢れている。それだけじゃない。持ってる資産は莫大なのよ。気に入ってもらえたら、どんなに素敵な毎日を送れるかしら。
それにしても昨日は最中に組長が部屋に入ってくるとは思わなかった。
私は組長に言われて、社長と自分の分のお弁当を二階の社長室に持って行った。
だって組長に持っていけと言われたら持って行くしかない。別にいいわ。お昼を社長と食べるのはいつものことだし、そのあと何をしてるのかはみんな知っているし。
組長と一緒にきたあの怖そうな男が誰なのか、私は社長に訊いた。
お弁当を二つ持ってくるとき、近くで顔を見たけどいい男だった。
「組長と一緒に、ものすごい怖い感じの男の人が来たけど、誰なのかしら?」
「背のバカでかい男か?」
「そう、社長と同じか、もう少し高いかも」
「仙道だな」
「仙道?」
「若頭よ。海外に行ってたみてぇだが、そうか、帰って来たんだな」
社長は高級料亭澤山のお弁当をバクバク食べてる。
若頭ってことは組のNo.2か・・・。
「食わねぇのか」
私は魚は苦手。お肉だったらよかったのに。
「魚は苦手。それより・・・」
わたしは社長の太腿に手を這わせた。
そのあと、ちょうど社長のモノを咥えている時だった。
「入るぞ」
組長だ。
声と同時にドアノブがカチャリといって、キィッと開く音がした。
イヤだ。こんな時に。あいつら止めてくれればいいのに!
私は社長から離れようとしたが、社長が頭をぐっと強くおさえたため、動けなかった。
「咥えてろ。離すんじゃねぇ。続けろ」
「ん、ん・・・」
「おいおい、恥ってもんを知らねぇのか?見られて興奮するタイプか?」
からかうように、組長の声がした。
「二人でこいつをヤらねぇか?後ろ譲ってやってもいいぞ」
「俺にも趣味があらぁな」
「用は・・」
「今日はもう店じまいにしろや」
「好きにしてくれ」
「嬢ちゃん達は帰すぞ」
「勝手に・・しろ・・」
「まあ、おまえらもゆっくりヤれや。早食いは体に毒だ」
組長の笑い声がした。そして、ドアの閉まる音と社長の声が同時に耳に聞こえた。
終わったあと、店におりたら注文書やら何やらが山ほどあって、社長から全部片づけていけと言われた。あいつら、いくらやらなくてもいいと言われたからって、少しくらいは片づけていけよ!ほんとに気がきかない!
おかげで帰る時間がいつもより遅くなってしまった。
さあ、お弁当とプリンもらって帰ろう。
パソコンにメモがはってあった。『冷蔵庫にお弁当とプリン三人分あります』と書いてあった。
なのに冷蔵庫を開けると何も入っていなかった。
どういうこと?
「まだいたのか、早く帰れ」
「お弁当とプリン、ないんですけど・・」
「うちのヤツが持っていくって言ってたぞ」
「ええーー!?ひどぉい!」
「うるせえな。早く帰れ」
「もう!!」
私は挨拶もそこそこに店から出て自分の車に乗ると、自分に対する風向きが悪くなってるのを感じていた。
なんとかしなくては。