表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
271/272

番外編 大きな栗の木の下で 2

.






お遊戯会の役が決まった三つ子達。 

朗と美之は完璧に役をこなすために練習を始めていた。


その日は所用で母・みふゆが出かけるため、三つ子達にお留守番の約束を言いきかせていた。


木登りが好きな朗には、

『あっくんも木登りは自分で降りられるとこまでよ?わかった?』

と、注意した。

『うん!わかった!』

朗は元気に返事をした。



母が出かけたあと、栗の木役の練習をするため、(あきら)は立ち並ぶ木々のなか、栗の木を見上げていた。

大きい立派な栗の木だ。青々とした葉が生い茂り、風にゆれている。

果たして自分はこの立派な栗の木に負けない栗の木役を成し遂げられるのか━━━━━

朗は栗の木をさらに見上げて、


よし、登るぞ!


と、栗の木に手をかけた。


栗の木の気持ちを理解しなくては。 


朗の憧れ、『神獣戦隊ジャックマン』の紅一点、ジャックスワンも言ってたではないか。

言葉は通じなくても、心は理解しあえるのだと。


朗はジャックスワンが焼き栗が好きでとても美味しそうにほおばっているのを見て恋をした。


スワンは見た目は妖艶だが性格は清純で可愛らしいのだ。


スワンの好きな栗の木の役は誰にも渡せない。朗は真っ先に立候補して射止めた。


同じように豆腐役を射止めた美之も、豆腐役を完璧にこなすだろう。


━━━━オレは栗の木の心を理解して、美之以上に役を完璧にこなすんだ。美之に負けてなるものか! 

だってお兄ちゃんなんだから!


朗のプライドは、『神獣戦隊ジャックマン』への愛と、美之より早く生まれたという部分に集約されていた。格好をつけて自分のことを『オレ』と言うようになったのも自我の目覚めだ。



朗は登った。


栗の木の、上へ上へと登っていった。


母・みふゆに注意されたことは、朗の頭の中からすっかり消えていた。ついさっきのことなのに。




広大というには広大すぎる惣領家の庭は、徹底した管理がされているが、それでもやはり抜けはある。


特に三つ子が生まれ、這って歩きだした頃、屋敷内は大変だった。三人三様向かう方向が違う。おまけに猪突猛進、早い早い。


そして二足歩行を始め、親の手を離れて庭で遊びだすと、さらに大変となった。

何せ自然がいっぱいの庭は、危険もいっぱいだった。


三つ子達の目には映るもの全てが宝物だ。 


存在全てがキラキラと輝いて生まれたての心をつかんで離さない。


自然のなかで三つ子達はのびのびと育ったが、姿をくらませるという事案も発生した。


幼子の足ではそう遠くへ行くまいという大人の考えを嘲笑うかのように、司は屋敷からずいぶん離れた番犬の飼育エリアの犬小屋で寝てるのがみつかった。惣領家のセキュリティシステムをどうやってかいくぐったのか今もって謎である。


朗はいつの間に木登りを覚えたのか木の上で泣いてるのがみつかり、惣領家所有のはしご車が出動する羽目になった。


美之にいたってはイチゴのリュックを背負ってマグロを釣りに行くと虫取り網と小さな釣り竿を持って鮎の釣れる山のなかの川に向かっているのが発見された。


子供の成長を甘く見てはいけない。決して油断してはならない。

敷地内だからこそ気をつけなくてはならないのだ。


三つ子達の自由すぎる行動に困った三つ子の父・京司朗と祖父・貴之は、三つ子達にGPSタグをつけることにした。新たなフェンスも設置した。

子供達の安全もさることながら、泣きながら我が子を捜す母親・みふゆの姿を見たくなかった。


 





朗は上へ上へと登った。


ザワザワと葉がゆれている。


どうやら風が強くなってきたようだ。


朗はふと足下を見た。


地上からずいぶん離れていると、人間として未熟な脳みそでもわかる。


朗は栗の木にしっかりとつかまった。


つかまって、泣きだした。


「う・・、うわあぁぁんっ!おとーさあぁーんっっ!たすけてえぇぇっっっ!」


もはや栗の木の気持ちを理解するどころではなかった。




その頃、池のそばでは美之も泣いていた。

京司朗は反省して大泣き中の美之を抱きあげようとしてその手を止めた。


━━━━?・・なんだ?美之の泣き声が輪唱で聞こえてる気がする。


京司朗は疑問に思って振り向いて耳をすませた。すると司が、

「あきらが泣いてる」

と、京司朗の服を引っ張った。


「きっと栗の木」

司が木々の立ち並ぶ方向に目を向けた。


「また木に登ったのか・・」


京司朗はGPSで朗の居場所を確認して常駐組の高城と矢口を呼び出した。はしご車を準備するよう言うと、美之を抱きあげて朗の救出に向かった。


残された司は『やれやれ』と言わんばかりにしゃがんで散らばった小石の片づけを始めた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ