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番外編 秘密を持って生まれた子 1
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惣領貴之が現れた。
鬼籍に入り長い年月がたつ現在に。
「・・・じじ様・・」
司は身動ぎもせずみつめていた。
白く染められてゆく惣領家の庭。
池のほとりに立つ惣領貴之の姿はやがて、舞う雪の影に霞んで消えた。
━━━━━迎えに来たのですか
司は消えてしまった貴之の姿に問いかける。
お気に入りの着物だった。
みふゆが誕生日のプレゼントに贈ってくれた最初の着物だと、貴之は嬉しそうに話してくれた。
大切に大切に着ていた。いつも自慢していた。
『俺の娘が俺のためにつくってくれた着物だ』
そして、自分が死んだら死に装束ではなくその着物を着せてくれと言っていた。
━━━━━じじ様・・、もう少し、もう少しだけ待ってください。せめてもう一度・・、花咲く美しい庭を母に見せてあげたい。
貴殿の愛した娘御にもう一度━━━━━━
惣領司には秘密がある。
知っているのは亡くなった惣領貴之だけだ。
『司、お前が何者であっても、お前はみふゆと京司朗の子だ。俺の、かわいい孫にかわりねぇのさ』
あの日の貴之の優しい声が、司の耳に残っている。




