番外編 とわずがたり~思い出を辿れば~2
.
美之は大学では栄養学を学んだ。栄養士の資格は取ったが、就職はしなかった。卒業と同時に松田家の次男、植物学者の松田誠矢と結婚したからだ。十六歳差の結婚だった。
この結婚を最も喜んだのは胡蝶だ。
自分の息子とみふゆの娘、すなわち惣領貴之の孫の美之が結婚するのだから。
ポロポロと涙をこぼして感激する胡蝶の姿は、のちに夫の松田俊也からも“あんな胡蝶は見たことがない”と、みふゆは聞かされた。
松田家に嫁いだ美之は、二十三歳で長女・りらを、三年後に長男の悠人を出産した。そして長女の松田りらは十八歳で結婚し、娘の美祐を生んだのだ。
りらの結婚相手は二つ年上で、上原圭亮という青年だ。しかし、この結婚には大きな問題があった。
上原圭亮が二条家当主・二条宗定の血筋だったからだ。
かつて惣領貴之に背き、京司朗を殺して堀内健次を惣領家の当主に据えようと画策したため、惣領家一族から追放された、あの二条家だ。
二条宗定は追放後、子孫に災いが出ぬようにと妻と離婚し、家族の改名を行い亡くなっていた。
事故なのか自らの命を絶ったのか、北海道の寒村の浜辺で遺体となり見つかっている。
『二条家には復帰再興も関わることも、俺と京司朗の目の黒いうちは許さん。だが、司が当主となる時代は、司の裁量に任せる』
惣領貴之は京司朗の後継の当主に司を指名した時にそう言い残している。
当事者である京司朗は、
『惣領家の当主は司だ。司の判断に従おう』
とだけ言った。
惣領家では、早い段階で京司朗が当主の座を司に譲っており、松田りらと上原圭亮の結婚問題は惣領司と松田隆聖に委ねられた。
松田家当主の隆聖は、りらが二条家の男に嫁ぐことは許されないと見解を示したが、みふゆの取りなしがあり、上原圭亮が松田家に婿入りし、惣領家・松田家に忠誠を尽くすならば結婚を認めてもよいとした。
惣領司も松田隆聖の判断を支持した。
上原圭亮は、二条家はすでに存在しておらず、惣領家一族への復帰も再興も考えていなかったと、これまでの経緯を説明した。自分も二条の名前に特に未練は無く、惣領家松田家に忠誠を誓うことを明言し、松田家に婿入りする形となった。




