17 幕引き(14と15の間の話)
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お昼、社長は一人で外に食べに行ってしまった。
機嫌を損ねたみたいだから、お昼になんとかしようと思ったのに。
このままだと本当に・・・。
バッグの支払いもまだ残ってるのに。
夜の仕事でもする?でも・・。
色々考えあぐねているうちに閉店時間になってしまった。
二人ともさっさと帰ってしまい、店には私一人残された。
社長は二階にいる。閉店時間少し前にやっと帰ってきて・・・。
二階に行ってご機嫌をとってみようか。
泣いて、謝って、なんでもするからと、弱くて従順なところを見せたら許してくれるかも。
「鍵をして上に来い」
いつのまにか社長が降りてきていて、私を誘ってくれた。
よかった。機嫌、直ったんだ。
わたしは「はい」と答え、鍵をして店の灯りを落としてから社長の後ろについて行った。
二階の部屋のドアを閉めると、わたしは社長に後ろから抱きついた。
甘えた声で、今日はごめんなさい、と謝った。
「私、社長が好きです。最初は体だけだったけど、今は違います。社長が喜んでくれるならなんだってします。社長の側に居させてください・・!」
と、気持ちを打ち明けた。
社長は、私が抱き締めている腕を解いて「座れ」と言った。
私は安堵した。
いつも通りだ。
私は立っている社長の前に膝立ちし、ズボンのベルトを外そうとしたが、社長はそれを遮るかのように、サイドボードへと向かった。
そして、サイドボードの上の封筒を掴むとテーブルに無造作に放り投げた。
「今月分に上乗せしてある」
「え・・?」
「うちの退職金は五年勤務が条件だからな。退職金がわりだ」
「退職・・?あ、私、辞めません!イヤです!私は社長の側にいたいんです!お願いします!」
「今月末での退職だ。末締めだから切りがいい。まだ日数があるが、仕事は明日から来なくていい」
「社長・・・!お願いします!私、ほんとに・・!あ・・・、私、社長が複数でしたいならそれだってできます!何人だって・・!社長がしたいことを私の体にしてください!だから・・!」
「面白れぇこと言うな、お前。複数プレイか。経験あんのか?」
「あ、あります」
私は必死だった。
「何歳の時だ」
社長は腕を組んで私に質問を続ける。
「二十歳くらいの時です・・」
社長が真剣な眼で私を見る。
「最高何人だ?」
「は・・・、八人・・です」
「八人か、ワインの輸入会社の輪姦事件と同じだな」
「・・・な、・・なんの・・・話し・・・・」
何?なんで、今さらそんなこと・・・
そんな終わったことを・・・
「なーに、隣県の、あるワインの輸入会社がバイトの女を八人で輪姦してたって話が・・・、五年前か?あったんだよ。その八人の中に俺の知り合いの男の弟がいてな。この前ここに兄貴の方が来てたんだよ。あの時の女をまだ探してるってよ。名前も顔も変えたかもしれねぇが体に特徴があるって、知らねぇかってな」
「・・・・え?」
「合意で楽しんでたのをある日突然強姦だって言われて訴えられたらたまったもんじゃねぇ。結局多額の和解金でカタをつけたみたいだが、八人中三人が自殺、一人が精神病院行き、あとはどうしたんだろうな。どっちにしろ社会的には抹殺状態だろうな。家庭もバラバラ。残された家族だってどうなったんだか。まあ、腹は立つわな」
「そ、それが・・、私となんの関係が・・・」
あの時の女を探してる・・?
「八人って数字で思い出しただけだ」
「社長・・・!私・・!」
体に特徴が・・・?
「俺はめんどくせえことは嫌いだ。使い捨ての女をカラダ張って守る気なんてさらさら無え。最初に言ったはずだ。俺が飽きたら終わりだってな」
「しゃ、社長・・・」
私は、切り捨てられたのだ。