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166 短命の一族・水無瀬

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「みふゆの命も短いのか」


礼夏は一瞬黙った。


「礼夏」


貴之は礼夏に答を求めた。


───当主に限らず、水無瀬の能力(ちから)を使ってきた者はほとんどが三十を待たずに死んでいる。


「三十・・・」


貴之は愕然とする。

みふゆは二十三歳だ。三十歳まであと七年━━━━


「待ってくれ、“ほとんど”ってのは例外もいたんだな?礼夏、お前が三十を越えて生きたように」


───水無瀬は二系統に別れている。水無瀬玄州の祖・水無瀬梨州と、梨州の異母弟・水無瀬清州。わたしが三十を越えて生きられたのは、清州の血筋である可能性が高い。しかし水無瀬の血筋と言われたわたしの母も、母方の祖父母と曾祖父母も四十代で死んでいる。皆、水無瀬の能力は持っていなかった。それを考えると水無瀬自体がやはり短命の一族なのだろう。水無瀬の恐ろしいところは配偶者も短命に巻き込む。私の父も四十八で死んだ。みふゆは水無瀬の能力を使ってきた子だ。三十までは生きられるだろうがその先はわからない。


貴之は俯いた。正座している(もも)の上の手を強く握りしめた。


「俺の・・、俺の命をみふゆに与えることはできねえか・・・」


───できたとしても、それをすればあなたはすぐに命を落とすことになる。みふゆはあなたのために道を変え生きようとしているのに。今あなたを失えば、みふゆはまた悲しみのどん底に落とされる。あの子が希望を持って選んだ新しい人生は失意に終わり、どんな想いも捨てて、あの子は再び死者を弔うためだけの人生を選ぶだろう


「俺は・・・、俺はどうすれば・・・!みふゆのために俺は何をすれば・・・・!」


───だから貴之、わたしはあなたに償いがしたい。青木の、・・・


礼夏は言いかけて口を閉じた。


───順が目覚める。貴之、一週間だ。わたしは順を抑える。そしてみふゆが本来の自分に戻ったときにもう一つの頼みを聞いてほしい。せめてものあなたへの償いに


「償い・・?」


───貴之・・一週間だ・・・、必ず・・・


礼夏の姿が揺らめき消え、声だけが貴之の耳に残った。














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