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100 狙われた支店 (3)
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男は疑われないよう言われた通りにドアを少し開けながら考えていた。
誰も歩いていない商店街通り。
あの女達じゃなかった。
いつもいた二人の。
今日に限って休みなのか?二人そろって?
あいつらならチョロいと思っていたのに。
いつも開けっ放しにしていた、旧式のレジ。
金が入ってるのが見えていた。
隙だらけの、頭の軽そうな女達だったから狙いをつけていたのに。
どうする?
予定通り続けるか?
計画を変えるか?
いや、こんな大雨だ。
人なんか誰も来やしないだろう。
脅して店の鍵を閉めさせても今日なら怪しまれない。
一人ずつヤるのもいいか。
そのあとで金をもらうとするか。
男は少しばかりドアの外を眺めて気持ちを昂らせた。
後ろから、「コーヒーどうぞ」と声が聞こえた。