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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私が死んだ時

作者: 根手羽 花鈴

私が死んだ時は朝だった。

目が覚めて、ぼんやりとしたまま枕を整えていたら背後から何かが首に巻き付いた。そして引っ張っぱられた。

足が浮き、息ができない、めちゃくちゃ暴れたが足は床をすべるだけ、苦しい苦しい痛い苦しい、永遠と思えるほど長く苦しい時間のあと意識がなくなった。

次に目が覚めたとき、クローゼットの服の間で首を吊っている人が見えた。口を開け、舌をたらし、泡を吹いている。目玉が飛び出しているようで、寝巻きから床に失禁している。なにこれ、どうなってるの、どうしちゃたの

と思っていたら、お父さんが部屋に入ってきて

「亜紀」と私の名前を叫んで首吊りしている人を抱き上げる。続けて母親が部屋に入ってくると腰をぬかしている。

「早くロープをはずして」お父さんが叫ぶ。母親が這いずりながら近寄ってくるとヨロヨロと立ち上がり首のロープを不器用に外そうとするが食い込んでなかなかはずれない。身体を抱き上げているお父さんの顔は真っ赤になって、手足が重さに耐えられないようで震えている。やっと母親が首からロープを外すとお父さんが倒れる。でもすぐに起き上がって心臓マッサージを始めると大声でどなる。

「救急車、早く救急車」

それを聞いて母親が部屋から飛び出していく。お父さんは心臓マッサージを続けながら

「亜紀、亜紀」と私の名前を叫び続ける。

お父さん私はここだよ。後ろからお父さんの肩に手をかけようとしたら、手が肩をすり抜けてしまった。

?・?・?なんで、そこで初めて私は変におもった。おとうさんは私の名を呼びながら何に心臓マッサージしてる?

アレが私、じゃあここにいる私は何?その時、救急車のサイレンが聞こえると救急隊員が部屋に入ってくる。心臓マッサージをしているお父さんとかわると私を担架に乗せて救急車に運ぶ。

お父さん私はここだよ、と言ってもお父さんには聞こえない。救急車に乗り込むお父さんと一緒に私も乗り込んだ。

救急隊員はもう心臓マッサージはしていない

酸素マスクをつけられたそれを見ながら自分は死んだのだと唐突にわかった。ここにいる私は幽霊?試しにお父さんを触ってみるが手は全てお父さんの身体を素通りする。大声で叫んでも救急隊員もおとうさんも誰にも聞こえない。それからは全てが夢の中で起こっているようだった。

医師が来て死亡宣告を受けると大声で泣くお父さん、警察が来て司法解剖すると言われて、自殺と断定されてお葬式。

お葬式にやってくるクラスメイト。お別れをしてやってという母親。

やめて、あんな顔見られたくない、髪を綺麗にカールして校則の中で一番可愛く見えるように毎朝苦労してたのに、あんな死顔みせないでよ。

クラスメイトが恐る恐る棺を覗き込む、私は必死で皆を止めようとするけど、手が素通りするだけ。あんまり必死で止めようとしてたら身体が宙を浮いて棺の中を覗き込むことになった。遺体は死化粧されて舌もでてないし目も飛び出てなかった。それでもいつもよりブスな私。あー見られたくない。一番かわいい私だけをみてほしいのに。

クラスメイトの女子はほとんど泣いてた。仲の悪かった子、話したこともない子、私の死がショックというより泣いている自分に酔っていた。お葬式なんてやめてほしかった。お父さんは目が真っ赤だったけど泣くのは堪えてた。担任とクラスメイトに参列のお礼をしていた。母親は号泣してた。私と仲悪かったのにそんなに泣く?って少し引いた。

親友の真弓だけは泣くのを必死で我慢して、男子の目を気にしたりしてなかった。真弓だったら、もしかしたら声が届くかもと思ったけど、やっぱり駄目だった。なんとなくクラスメイトと一緒に学校に行った。死んでからずっと家にいたから学校に行くのは変な気分になる。担任がスクールカウンセラーとクラスメイトは1人づつ面接すると言って、必ず悲しむ人がいるから、自分で死を選ぶことは絶対によくないと言っていた。

そこで初めて私は思った。私、自殺だと思われてる。違うよ、殺されたんだよ。殺されたのに自殺で片付けられるの?なんで違うのに、どうしたらいいの、私の声は誰にも届かないし、物も人もすりぬけちゃうし、誰にも伝えられない。幽霊って不便、死んだらなんでも解って犯人を呪ったりできるんだと思ってた。呪うどころか私は誰に殺されたかもわからない。後ろから襲われたから顔は見てないし、死んで記憶が飛んで犯人もみてない。今流行りの転生ってやつは嘘だと思ってたけど、もっと人を超えた力が幽霊になったら、あると思ってたよ。そこから夜になるまで教室にいた。クラスメイト一人一人に話しかけて誰か反応しないか試してみたけどみんな無視した。クラスメイトも全員がカウンセラーと話して帰宅して1人になると仕方ない家にかえることにした。これからどうなるのかわからなくて親友の真弓を追いかけて泣いてしまった。

真弓は家に帰りながら、悔しくて悲しくて大泣きしたかった。でもクラスメイトの前で泣くのはわざとらしい気がして嫌だった。カウンセラーにそれとなく理由を聞かれた時もわからないと答えた。いじめがあったんじゃないかとも聞かれたけど、ないと思う。と答えた。真弓にもさっぱり自殺の理由はわからなかった。お母さんと仲が悪くてうざいと言ってたけど悩みは誰だってあるし、でも首を吊って死ぬなんて亜紀らしくないと思った。もし自分が死ぬとしたら手首を切る。痛いだろうけど苦しくなさそうだし死に顔も綺麗だと思う。亜紀なんで首なんかつったの?亜紀はいつもハッキリしてて、うじうじ悩む子じゃないと思ってた。死ぬほどの悩みがあるならなんで打ち明けてくれなかったの?お母さんと仲が悪くて家にいたくないって、いつも私の家で夜になるまで喋って一緒に笑ったり、怒ったりしてたよね。亜紀のお母さんは私も嫌いだったけど、今日、亜紀のお母さんが棺の中の亜紀の顔を見てくれと言った時、亜紀のお母さんが大嫌いになった。死んだ顔なんて見られたくないに決まってる。亜紀は絶対嫌がってると思ったから私は見なかった。ついでに泣いてる女子達も嫌いになった。クラスメイトのお葬式で泣いてる自分に絶対酔ってる。悔しいから私は絶対泣かなかったよ。亜紀なんで死んじゃったの?真弓は一人で帰りながら涙をボロボロながしていた。

そんな真弓を見て私は真弓の後ろをフワフワ浮きながら同じくらい涙を流していた。どうすればいいかわからなくて真弓の部屋までついて行ってしまったけど真弓と話せる訳ではないし、なんとか部屋のぬいぐるみを押したりして、いる事をアピールしたけど物は全部素通りした。スマホなら画面に字が打てるかもと思ったけどやっぱりダメだった。真弓の周りをグルグル回ったりして、この頃には自由に浮いたり飛んだり移動ができるようになっていた。なんとか気配を感じてもらおうとしたが親友でもだめだった。そのうち真弓が気分悪そうになったので、もしかして自分がいるせいと怖くなって部屋からでた。仕方ないのでふわふわ浮いて家にかえった。

家に帰ったらお父さんが泣いていた。

「なんで亜紀は死んだんだ、何を悩んでたんだ」と私が死んでから100回は言っている言葉を母親になげかけていた。

二人とも、もう喪服は脱いで普段着だったけど、母親は喪服をたたみながら

「しらないわよ」

と冷たく答えていた。あんなに号泣していた人とは思えない口ぶりだった。やっぱりお芝居だったんだ。もしかして、すこしは悲しいのかと期待したのに。

お父さんは骨壷を抱いて、あの中に私の骨がはいっている、真っ赤な目をして

「まだ暖かい、なんで俺より先に死んだんだ。順番が違うだろ。なんで、なんで」

と言っている。それを見たら悲しくなってそっとお父さんを抱きしめた。強く抱くと身体を通り過ぎてしまうからそっと包み込むように抱いた。するとお父さんが

「亜紀いるのか?いるんだろう?」

と言った。通じた?と一瞬思ったけどおとうさんは私がいるところとは全然別のところに話しかけていた。

「何バカなこと言ってるの」

母親が怒ったように言った。お父さんは

「バカじゃない、人は49日まで成仏しないで家にいるって言うだろう、亜紀はここにいる。俺に話しかけている。死にたくなかった。自殺して後悔してるって」

やっぱり自殺と思ってる。目の前が真っ暗になった。私殺されたんだよお父さん、自殺じゃないよ、なんで自殺ってことになってるの?

夜になりお父さんがいつまでも骨壷を離さないので母親は呆れて先に眠った。夢の中に入り込めないか?夢枕に立つとよくいうではないか、そう思って母親の枕元に立ってみたり、夢に入ろうとしたりしたけどダメだった。娘が死んだばかりの人とは思えないほど母親は熟睡していた。一方お父さんはリビングの床で骨壷を抱いたまま、うつらうつらしていた。必死にお父さんに呼びかけた。

「殺されたの、犯人を見つけて。」

お父さんはカッと目を開くと、殺された、と呻いた。

ヤッター通じた。諦めなければ通じるんだ。

お父さんは寝ている母親を叩き起こすと言った。

「今、亜紀が殺された、と言った」

母親はギョとした顔で父を見つめると、

「嫌だ、夢でもみたんでしょ、着替えてきちんと寝なさい」

と珍しく優しい声で言い、お父さんから骨壷を取り上げると祭壇に置き、お父さんを着替えさせた。お父さんは

「殺されたとはっきり言ったんだよ」

と訴えるが

「あの時、家に誰かいた?亜紀の部屋に誰かが外から侵入した形跡はないって警察もいってたでしょ。警察が解剖までして自殺と決定したのよ。娘に死なれて辛いのは私も同じ。しかも事故や病気じゃなくて自殺なんてつらすぎるわよね。何かできることはあったんじゃないか?あの朝に戻りたいと私も考えるわ。でも、もどれない。私たちの人生は続くのよ。しっかりして。事実を受け入れて頂戴。」

と言ってお父さんを布団に寝かせると部屋をでていった。1人になったお父さんにもう一度話しかけるが通じない。はっきり目が覚めてしまうと通じないようだ。そのままお父さんは眠り、夢の中に入り込むことは出来なかった。仕方ない、諦めて死んでから初めて自分の部屋に行くと息をのんだ。部屋がぐちゃぐちゃに荒れていた。私が吊るされたクローゼットの床は掃除されていたが机の引き出しや小物入れ、タンスの中が出されてそのままになっていた。下着が散乱し、ベッドのマットレスもあげられて立てかけてある。

なんでこんな風に荒れてるの、これじゃ寝られないよ。泣きながら家から出ると近所の商店街をフワフワと歩いた。深夜なのに商店街には人がそれなりにいた。残業帰りの人や飲み会帰りの人、その中に小学校に上がったばかりのような子供がいた。こんな時間に子供が?よくみるとその子もまたフワフワと浮いている。幽霊?私と同じ、でもその子は私よりももっと心細そうで、寂しそうだった。私はその子に近づくと思わず声をかけた。

「どうしたの?どこか痛いの?」

「ううん、痛くない、お姉ちゃん誰?僕が見えるの?」

その子が答える。私はその子の手を握っていった。

「ちゃんと見えるよ。どうしてこんなところに座ってるの?お名前は?」

「僕、ナオト、ここで車に轢かれて死んじゃったの、それからずっとここにいる。人はいっぱい通ったけど話しかけてきたのはお姉ちゃんが初めて」

ナオトの足元に花束が置いてある。事故現場によくある花束だ。

「お姉ちゃんは亜紀、お姉ちゃんも死んじゃったの。幽霊仲間だね。でもお姉ちゃんはあっちこっち移動できるよ、人に触ろうとすると触れないし自分の声は誰にも聞こえないみたいだけど。ナオトとは話せるし手もつなげる。私と一緒に行こう。」

幽霊同士なら、話もできるし触ることもできるんだ。

2人で手を繋いで歩き始めた。私は中学生だけど初めて死んで、ビックリすることばかりだったし心細かった。この子はこんなに小さくてどんなに辛かっただろう。途方にくれてあの場所から動けなかったのもよくわかる。

「お姉ちゃんの家にいく?ナオトの家に送って行こうか?」

私が聞くとナオトは

「帰り道がわからないんだ。亜紀の家に行きたい」

と言った。歩きながら私はナオトにいろいろ教えてもらった。幽霊は眠らない、お腹も減らない、最初は変な感じだけど疲れない。私もナオトに飛べることや乗り物に乗れることなどを教えた。私の家に着くと2人でドアをすり抜けて、本当は壁からでもいいんだけどやっぱりドアを通って家に入った。私の部屋は散らかり過ぎているのでリビングで過ごした。久しぶりに話ができて嬉しかった。ナオトは小学1年生だった。まだ自分の名前も漢字で書けないのに車に轢かれて死んでしまった。ナオトを轢いたのは若い女の人で真っ青になって、気絶しそうだったこと、それを見てナオトはその人を恨んでいないことなどを話した。私も自分は中学3年生で殺されたのに自殺したことになっているのが悔しいと素直に話した。

それを聞くとナオトは亜紀の部屋が見たいと言った。私が部屋は散らかり放題で見せるのが恥ずかしいというとナオトは探偵漫画が大好きで推理マニアだと言う。現場をみて何か殺人のヒントが見つかるかもしれないと言う。

私は自分の部屋にナオトを連れて行った。

「ね、すごい散らかってるよね。これ私が散らかしてたんじゃないよ。さっき見てビックリした」

私は言い訳するように話した。するとナオトは

「これは警察が多分、遺書を探したんだね。それか日記。亜紀の遺書らしきものはあったの?」

「そんなのないに決まってる。自殺じゃないよ」私は言った。

「じゃあ日記はつけてた?そこに死にたいとか書いた?」

私はそれを聞いてゾッとした。

「日記にはお母さんと喧嘩してもう死んじゃいたいとか何度も書いた」

ナオトは言った。

「自殺ってこんなに早く断定されたのはそのせいかも、それに亜紀は中3だから進路の悩みとも書いてた?」

「書いてた。ウチはなぜか公立だけしか許されなくて、落ちたら定時制に行けとお母さんに言われてた。みんなは滑り止め何校も受けるのに金がないとか言われて、公立の希望校をランク1つ落として受ける事にして、悔しくて日記にお母さんの悪口と、不満と、落ちたら不安と書いてた」

「多分、警察はそれで自殺と断定したのかもね。亜紀はお母さんと仲が悪かったんだ」

「悪かった。小さい頃はいつも殴られてた。私の身長が伸びてあの人、お母さんだけど、を抜いた頃から殴られることはなくなったけど、臭いとかバカだとか、進路の嫌がらせとかはされてた。」

「亜紀はクローゼットの中に吊るされたんだよね。犯人は亜紀が寝ている間にクローゼットに入って起きるまで息を潜めてた。誰ならそんなことできる」

「外から人が入った形跡はなくて自殺になったって、母親が言ってた」

まさか、そこまで憎まれてた?と私は思った。

「お母さんならできるとおもう?」

ナオトは言った

「まだ断定は出来ないけど可能性はある、お父さんは亜紀とお母さんが喧嘩してる時どうしてたの?」

「お父さんがいる時は小さい頃から殴ってきたり、嫌がらせしたり絶対しないから、気が合わないぐらいにしか思ってなかったのかも。私もお父さんに言いつけるとかしなかったから」

「そっか、亜紀のお母さんって何かスポーツとかしてる人?人を吊るって結構体力いると思うけど」

「若い頃はバレーボール、今はジムに通って鍛えてるけど」

私が答えるとナオトは

「なんか最近、大喧嘩したとか、変わったことあった?なぜ今なのか気になるんだよね」

「わからない、いつも通りほとんど口もきかなかったし、変わったことなんてなかったとおもうよ。私の誕生日があったくらいかな」

話し合っていたら夜が明けていた。階下では母親が朝食の準備を始め、お父さんが起きてきた気配がする。ナオトと2人で階下に降りていく。

テーブルにはハムエッグと味噌汁、ご飯が並べられていた。

お父さんが少し手をつけて

「もう食べられない、食欲がない」と箸をおく。その途端、罵声が降ってきた。

「私がせっかく作ったのに食べられないってなんだ。嫌がらせか」

お父さんがビックリしていると目の前から乱暴に食事を取り上げてゴミ箱に捨てて母親が言った。

「自分だけが悲しい、私は悲しんでない冷たい女だと言いたいんだね、もう何もかも嫌になった。私も死んだら、あんたのせいだからね」

かわいそうなお父さん、私がいなくなったせいでイライラをぶつけられてる。これからは私の代わりにずっと嫌味を言われ、怒鳴られるようになるよ。お父さんは妻のイラつきと罵声で呆然としている。ナオトが言う。

「亜紀のお母さんっていつもあんななの?」

「いつもあんなだよ、私のする事にいちいち文句言って、怒鳴ったり嫌味いったりしてた。最近はなるべく会わないようにしてたぐらいだけど部屋まで入ってきて、うるさく言ってた」

そうだ、母なら学校に行ってる間に部屋に入って、いくらでも細工できただろう。でもやっぱりそれほど憎まれてたとは考えたくなかった。ナオトが言う

「これからずっとお母さんに張り付いてたら、なんかわかるかもしれないよ」

なるべく一緒にいたくない相手にずっと張り付いてる?無理だよ。でもそうしないと犯人かわからない?私は迷った。それに母親に殺されたなんて恥ずかしかった。それほど悪い娘だったと言われてしまう気がしたのだった。私は吹っ切るように明るく言った。

「そんなことするより遊びに行こうよ、私もナオトも気晴らしが必要だよ、電車に乗ることもできるんだしテーマパークで遊ぼう」

ナオトは殺人事件の真相解明の方が必要ではと思ったが、殺された亜紀が遊びたいと言っているのだし、敢えて反対しなかった。それで2人で大人気のテーマパークに行く事にした。私は友達と何回か行っているので電車での行き方を覚えていた。スマホが使えない今となっては私の記憶力だけが頼りだ。

「霊になったら行きたいところにビューンと飛んで行けたらいいのにね」

2人で駅まで歩き、電車に乗ってテーマパークまで行った。私は電車の中では知らない人の膝に座ったり、天井に張りついたり、窓から顔だけ出したりはしゃぎながら移動した。ナオトは最初はこわごわだったが亜紀のマネをしているうちにリラックスして率先して、手を電車から出したりして遊んだ。そのうちテーマパークの駅に着くと後は人波にくっついて入り口まできた。

「ここで本当はチケットを出さないといけないんだけどね。私たちには必要ないんだ」

と私達は言って入場した。アトラクションも50分待ち、2時間待ちと言うのだって人をすり抜けて搭乗した。と言っても乗ってる人の膝の上に座ったのだけど。今までは混んでて入れなかったアトラクションを制覇し、途中で乗り物から降りて生きている人は入れないアトラクションの人形と踊ったりした。閉園時間になって人がゾロゾロと出口に向かう。でも私とナオトはベンチに座って人工の海や山を見つめていた。海や山は作り物なのに2人には本物に見えた。綺麗だった。なんだか自分達みたい。人じゃなくなったけど生きている人と同じように楽しめる。本物じゃないけど本物みたい。誰もいなくなったテーマパークで2人はじっと景色を見つめ続けた。朝になって新たに人が入場してきた頃2人はテーマパークから出て行った。次は動物園に行ってライオンに乗ったり、象の鼻にぶら下がってみたりして楽しんだ。次の日は水族館で水槽に入って魚と泳いで楽しんだ。水槽の中から水槽を見つめている人たちを見るのはなんだか爽快だった。東京スカイツリーに行った時は展望台から体を出してみようとしたが2人とも怖くて出来なかった。

「落ちないし、死なないって解ってても怖いね」と2人でわらいあった。展望台から外を眺めていると子供の泣き声が聞こえた。

「お母さんー」と言いながら泣いている。すぐに母親らしき人が走ってきてその子を抱きしめた。

「お母さんの手を離しちゃダメと言ったでしょう。1人で行きたいところに走って行ったらお母さんから見えなくなっちゃって迷子になるからね、わかった?手を離さない事、約束だよ」

子供はグズグズ泣いていたが、うなづいて手をつないでいた。それを見てナオトがお母さんと言って泣き出した。私はその時、初めて気づいた。ナオトはまだ6才、お母さんが恋しい年頃だ。自分が母親とうまく行ってなかったから私は親が恋しいとか思わず、遊びに付き合わせてしまった。ナオトはずっと我慢していたのだ。可哀想なことをしてしまった。そこでナオトを抱き締めると

「帰ろう」と言った。

「ナオトの家を探そう」と続けて言うと泣きじゃくるナオトを連れて、ナオトの事故現場に戻ってきた。そのころにはナオトも泣き止んで私を見上げていた。私は聞いた。

「私が小学生の時は集団登校だったけどナオトもそう?」

「うん、集合して6年生が先頭で並んで学校まで歩いた」

ナオトが答える。

「そしたらその班の子を探そう。通学路は決まっているから班の誰かがここを通るはず。その子について行けばナオトの家のそばまで帰る。そしたら家を思い出すよ。思いださなくても一軒一軒入ってナオトの家を探そう」

2人は待った。私は見つかるまで何日でも待とうと思っていたが、その日の下校時間になって子供たちが帰り始めるとすぐ、ナオトが

「あの子知ってる、班の子」

と言う。その子の後ろを歩いて行くと

「ここ知ってる、こっち行くと僕の家があるはず」

とナオトが言って駆け出し、1軒の民家に走り込んだ。私も慌ててついていく。玄関を入ると廊下があって、その先にリビングキッチンがあった。リビングに亜紀の家にあるのと同じような祭壇があって、ナオトの写真が飾られていた。その前にナオトの母親は座り込んでいた。ナオトが抱きつく。勢いあまって母親の身体をすり抜けてしまう。ナオトが呆然としているので私が

「そっと抱きしめるといいよ」

と教えた。ナオトが泣きながら抱きしめる。

ナオトの母親は憔悴していた。しばらく寝ていないようで、顔色は悪く、今にも倒れそうである。起きていられるのが不思議なくらい生気がなく、ナオトの写真をじっと見つめている。

「お母さん、僕だよ、ここにいるよ」と言うナオトの呼びかけには当然、反応しない。ナオトが何回も繰り返すので私はたまらなくなって、ナオトの手を取ると言った。

「幽霊同士は触れるし、話もできるけど、ナオトのお母さんにはナオトの声は聞こえないし、強く抱きしめるとすり抜けちゃうんだよ」

ナオトはそれを聞いて悲しかった。お母さんから少し離れて正面に座って、お母さんの顔をじっとみつめた。お母さんの目線はナオトを通り越して写真をみている。私は2人きりになりたいだろうとそっと家のそとにでた。夜になってナオトが家の外に飛び出してきた。亜紀を見つけるとホッとしたように微笑む。

「亜紀がいなくなったのかと思って焦ったよ」

「ナオトを置いてどっかには行かないよ。2人きりになりたいかと思って席をはずしてた」

「お母さん僕のことわからなかった」

「仕方ないよ、私たち幽霊だもん、でも家がわかって良かった。お父さんはまだ帰って来ないの?」

「前から遅かったし、仕事が忙しいのかもね。お母さんずっと座ったままだった。ご飯も食べないし、すごく痩せちゃって、僕、心配だよ。お母さん、前はずっと笑ってたし、ご飯の支度もしてたのに、僕が死んだから悪いんだ」

ナオトはポロポロ泣いている。

「ナオトは悪くないよ。ただ運が悪かっただけ」

私は強く言った。ナオトはまだ泣き止まないので私は抱きしめて言った。

「お母さんにそれだけ愛されてたんだよ。今の私たちは何も出来ないけど見守ることはできる。ナオトが嫌じゃなかったら私も一緒に見守るよ。もしかしたらお母さんに通じることがあるかもしれない。ナオトはこんなとこで私と話してるよりお母さんのそばにいてあげな。嫌じゃなかったら私も家の中に入る。辛くなったら私と話せばいいよ」

そうして2人で家の中に入った。ナオトのお母さんは初めに見た時と同じ場所でナオトの写真を見つめていた。痛々しかった。普通のお母さんは、みんな子供が死んだらこんなに悲しむものなのかな?私は自分の母親のことを思い胸が痛くなった。あの人は人前では悲しいフリをしてたけど、いつもと同じだった。ナオトはお母さんと並んで座って、話しかけている。

そのうちナオトのお父さんが帰ってきた。座り込んでいる妻を見ると悲しそうな顔したが黙ってナオトの祭壇に線香をあげて言った。

「また飯も食ってないんだろう。弁当買ってきたから、少しでも食え。そんなんじゃお前倒れるぞ」

話しかけられてお母さんは、はじめてお父さんが帰ってきたことに気付いて

「お帰りなさい、ごめん気づかなかった。ごめんね。ご飯作れなかった」

と言った。お父さんは

「そんなのは気にしないでいいから、俺は食ってきたから弁当食べろ。」

と優しく言う。

「明日は納骨だろう。すこしでも食って、ナオトをしっかり供養してやろう。」

お母さんはそれを聞くとうなずいてテーブルにつくとお弁当をたべ始めた。

お父さんはそれを見ると安心したのか着替えに行った。

お母さんはお弁当を半分くらい食べると後片付けをして、線香をあげると着替えてベッドに入った。

ナオトはお母さんのベッドに入った。

「お母さんのベッドに入るのは久しぶり、お母さんの匂いがする。いい匂い、すごく落ち着く」

と独り言のように話す。それを見て私は自分は母親と寝たことなんてない。お母さんの匂いなんて感じたこともない。普通の家の子はこんな風にお母さんと寝るのかなと不思議におもった。

「ナオト、私はリビングにいるからお母さんとゆっくりして」

と声をかけてリビングに行った。リビングではお風呂上がりのお父さんが1人でビールを飲んでいた。妻の前では気丈なふりをしていたが、沈痛な面持ちで座っている。ナオトの写真を眺めながら涙を流している。しばらくしてお父さんも寝室に入った。今夜は親子3人で過ごせるね。良かったね。と私は思った。

夜が明けてお父さん、お母さんが起きてきた。お母さんはシャワーを浴びて喪服に着替える。同じく喪服に着替えたお父さんがナオトのお骨を持つとお寺に向かった。私とナオトも2人の後をついて行った。お寺では親戚が集まり、それぞれに雑談をしていたがお坊さんがやってくると、席に着いた。お坊さんが

「本日49日を迎えまして、これから読経と皆様にはお焼香をして頂き、納骨となります」

と挨拶して読経を始める。お坊さんなら私とナオトの気配を感じるかと、目の前に立って手を振ったり、話しかけてみたが、やはりなんの反応もなかった。ナオトは知っている親戚の膝に座ったり、実際には膝の上でフワフワ浮いているのだが、周りをぐるぐる回ったりしてふざけていた。私は最後にお焼香をさせてもらった。実際にはできないのでしたつもりだが。お経を聞いていると、なんとなく厳かな気持ちになった。納骨が終わり、お墓の蓋が閉じられるとナオトのお母さんが立ちくらみをしたのか、しゃがみ込んでしまった。周りの親戚がざわつく中、お父さんが立ち上がらせるとお母さんはお父さんに支えられながらお墓を後にした。食事会など一連のことが終わると解散になった。家に帰ると葬儀屋さんがきて祭壇を片付ける。リビングはやけに広くなった気がした。お父さんもお母さんも喪服を脱いで着替えるとしばらくぼんやりと座っていた。ナオトも椅子に腰掛けていたが、なんだか輪郭がぼやけて薄くなっているような気がする。私は不安になってナオトの手を取ると言った。

「ナオト、大丈夫?」

ナオトは私を見上げて言った。

「大丈夫だよ、なんだかすごく温かくて気持ちいい、眠くなりそう」

言ってる間にもナオトの輪郭はぼやけていって、身体全体が薄くなっていく。私はナオトの手を握りしめ、抱きしめた。

「ナオト、ナオト」

「亜紀、僕今すごくいい気持ち、死んでから亜紀に会うまですごく寂しかったけど亜紀と一緒に遊べて楽しかった。亜紀ありがとう」

ナオトはどんどん薄くなっていき、透けていく。

「ナオト、ナオト嫌、どうしたの、なんでお別れみたいなこと言うの!」

その時、私は思い出した。父が言っていたじゃないか49日は家にいると。今日はナオトの49日だったのだ。ナオトは薄くなって、抱きしめている感覚がなくなってきた。

「亜紀、僕の家を見つけてくれてありがとう。お母さんとお父さんと過ごせて良かった。僕、怖くないよ、今、すごく安心してるから」

と言うとナオトの姿は砂が崩れるように見えなくなってしまった。

「ナオト、ナオト、嫌だ、ナオト、置いていかないで、ナオト、ナオト」

私は叫んで家の中をナオトを探しまくった。でもナオトはどこにもいなくてリビングで大声で泣いた。もちろんナオトのお母さんとお父さんには私の鳴き声は聞こえない。ナオトがいなくなったのもわからない。ナオトの家でひとしきり泣くと私は家からでていった。もうナオトは戻らない。ここにいても仕方ない。死んだ時よりもずっとずっと心細かった。泣きながら町をさまよった。ずっと泣いて、思った。ナオトは成仏したんだって。そう思うことで少しは落ち着いた。自分はこれからどうしようと思った。そして急に気づいた。自分も49日でこの世から消えるの?このまま誰に殺されたかもわからずにあの世に行くの?それでいいの?それは嫌だ。今まで見ないフリしてたけど母親に殺されたのかハッキリさせたい。

私は家に帰ることにした。

家に入ると母親は楽しそうに誰かと話していた。その声を聞くと決心が揺らいだ。でも勇気を出してリビングに行った。リビングでは反物が何本も広げられ、呉服屋と母親が話していた。

「さすがは鈴木様こちらは良いお品なんですよ。職人が一筆一筆手描きしまして、その分お値段も張りますが」

母親がきく

「おいくらなのかしら?」

「こんなところで」

呉服屋が紙に数字を書いてみせる。

「あら思ったよりお安い、これ頂く、それに合わせた帯も欲しいわね」

呉服屋が待ってましたとばかりに帯の反物を床に広げていく。それをキラキラした目で吟味する母親。わかっていたけどナオトの母とのあまりの違いに私はゲンナリしてしまい、リビングを出て母親の部屋へ行った。何か怪しいものがないか探すためだ。母親の部屋はいつも通りキッチリすぎるほど片付いていた。服は全てクローゼットのなかで長さ別にきちんとかけられ、ノートは机の上で曲がることなく置かれている。ペンはノートの横に真っ直ぐに置かれている。いつも通りだ。普段は覗けないクローゼットの引き出しに顔を入れておかしなものはないか探したりタンスの中を見たりしたが何もない。日記を探したが日記らしきものは見つからなかった。がっかりしてリビングに戻ると呉服屋が帰るところだった。

「それでは来月、帯も揃えてお持ちしますので、いつも通り現金支払いでお願いします。ありがとうございました」

「はい、お世話様でした。楽しみに待っています」

と言って玄関から呉服屋2人を送り出した。なんとなく呉服屋についていくと2人は車に乗って

「この家、娘が自殺したばかりだろう、よく着物なんか買う気になるな」

「それも大層な金額だよなぁ。金大丈夫なのかね。香典が思ったより集まったとか?」

「そんな額じゃないだろう。保険金でも入ったんじゃないか?まあこちらは商売だから、鈴木様様だけどな」

「それでも人目とか気にならないのかね?」

と2人で話し車を発進させ、去って行った。

保険金?そういえば私の誕生日に何かの保険が満期になって保険金がおりると母親が言っていた。高校の進学に金がかかるから保険をかけておいたとか言っていた。金、金、あの人はなんでもすぐ金がかかる、そんな金どこにあると言っていた。私を育てるのにいくらかかったとおもっているんだ。義務教育が終わったら働いて返せ、家に金を入れろ、一人暮らしなんて絶対許さない。と怒鳴っていた。私はゾッとした。誕生日が過ぎたから殺されたの?あんな着物のために?でもあの人ならやりかねない。と思うと気分が悪くなってきた。家の前で呆然としていると学校帰りだろうか、制服姿の真弓がやってきた。真弓がインターホンを押して言う。

「亜紀にお焼香をしたくてきました」

ドアが開くと母親が顔を出して真弓が家に入る。他に誰かいないか母親が道路を見渡して、誰もいないことを確かめてドアを閉める。私も慌てて家に入る。

真弓はお焼香をしていた。そして私の写真をじっと見つめていた。母親は立ったままで真弓を見つめて

「わざわざお焼香をありがとう、お葬式の後も先生やお友達が何人かお焼香に見えたのよ」

と言う。真弓は帰るそぶりがなくリビングの椅子に座ると、そこはさっきまで呉服屋がいたところだった、話し始めた。

「今日はおばさんに確かめたいことがあってきたんです。亜紀って本当に自殺だったんですか」

といきなり言った。

「何を言ってるの、そうに決まっているでしょ。警察がそう言ったのよ」

母親が焦ったように答える。

「警察がどうとかじゃなくて、おばさんがどう思っているか知りたいんです。亜紀はなんで死んだか?自分のせいだとは思わないんですか?」

母親があまりのストレートな物言いに目をむいている。

「私、知ってるんですよ。おばさんが亜紀を虐待してたこと、小さい頃は殴ったり、最近はずっとブスとか臭いとかいっていじめてましたよね。かわいそうな亜紀。それでもおばさんに好かれようと必死で家の手伝いとかしてた。自分が殺したとは思わないんですか?」

「私が殺した?」

と母親が言う。

「何を言ってるの、なんの証拠があって、自分の娘をブスとか言うはずないでしょう。あの子は被害妄想なのよ」

2人きりの時しか言ってないので誰も聞いてないと母親は自信があるのだ。

真弓が言う。

「今はスマホってものがあって録音できるんですよ」

「亜紀はスマホは持ってないわ」

そう私はそんな金ないと言ってスマホは持たせてもらえなかった。真弓は言う。

「ええ、だから私のスマホ貸したんです。録音しとけって」

そしてスマホを出すと操作した。母親の声が流れる。

「ブスなくせに色気づいて気持ち悪い。髪の毛なんかいくらセットしても顔は直せないのに。まームダ、ムダ」

「臭いのよ、あんたは」

「お父さんだって私の方が可愛いって言ってるわよ」

「チビなくせに胸だけ大きくて不恰好だね」

「あんたのことは産む気なかったのにお父さんがどうしても産んでくれってうるさいから」

「あんたを育てるのにいくらかかったと思ってるの」

真弓が一時停止すると言った。

「かわいそうな亜紀、胸を小さくしたくてダイエットしたり、何度も体を拭いたりしてた。ちっとも不恰好じゃないし、臭くもなかったのに、まだありますよ」

「もうやめなさい、そんなの証拠になんてならないわ。亜紀は勝手に自殺したのよ。ご近所に噂されたりしてこっちだって迷惑なのよ」

と母親が言う。

真弓、危ないその人を追い詰めないで、何するかわからない。真弓が口を開く

「迷惑?そんな風に考えているんだ。悲しくないんですか?私、これからこれをもって警察に行きます。警察の人に聞いてもらいます。」

真弓がスマホをカバンにしまうと玄関に向かった。母親がキッチンに向かうと包丁を持って、後ろから襲いかかる。

「真弓、危ない」

真弓が気配を察して振り返る。首元を狙った包丁がそれて真弓の腕を切り裂く。真弓は傷を負いながらも包丁を奪い取ろうと揉み合いになった。真弓は母親よりずっと背も高いし、バスケット部で鍛えている。母親も私と同じくらいの身長とはいえジムで鍛えている。包丁を奪い取ることはなかなかできない。真弓はカバンで母親を突き飛ばすと思い切り腹を蹴飛ばした。母親がよろけている間に玄関に向かう。でも足を掴まれて転んでしまう。真弓が危ない。私はなんとか母親を止めようと手を抑えようとしたり、体当たりしたがすり抜けてしまって効果はない。包丁をふりかざし真弓に馬乗りになる母親、その手を真弓がなんとか下から押さえている。母親が吠える。

「私が産んだ子なんだ。どうしようと私の勝手だ」

その時、お父さんが母親の包丁を取り上げて、真弓から引き剥がした。ちょうど会社から帰宅したのだった。真弓は家から飛び出していくと110番した。

それからは家に警察と救急車が来て、母親とお父さんが警察に連れて行かれた。真弓が心配だった私は真弓が病院で手当されるのを見てホッとした。そして真弓は事情を警察に話し、スマホを提出した。そこには最後に母親が吠えた「どうしようと私の勝手だ」と言う言葉も録音されていた。真弓はスマホをカバンにしまう時、録音していたのだ。

その後、事件はネットで大きく報道されて母親が自白したことを私は知った。ホッとした。母親に殺されるなんて恥ずかしいと思っていたけれど、ネットの報道を見て私が恥ずかしいのではなく、恥ずかしいのは母親の方なのだ初めてわかった。私は虐待されていたんだと初めてわかった。幼児虐待のこととかは知ってたけれど、日常過ぎて自分が虐待されているってわからなかったのだ。虐待され続けて殺された私。それでも真実がわかって良かったと思う。

もうすぐ49日が来る。私もナオトのように成仏できるのだろうか。その時が来るまでわからない。それまで私はやり残したこと、海外旅行とか宇宙船に乗り込むとか、一つずつ片付けていきたい。






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― 新着の感想 ―
[一言] うーん、胸が痛い。 私の母親もこういう人だった。 お前なんて産みたくなかった。どうにかしておろそうとしたけどおりなくて、仕方なく生んだのに、感謝しろ。お前は私への感謝が足りん。だからバカなん…
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