怒りのメデユーサ
プツン
! 糸が…切れ…た ?
居ない居ない居ない!私のあの人が居ない!
何故だ何故だ何故だ?何故消えた?
何処?あの人は何処?何処にいる?誰が隠した??
誰だ?誰だ?誰だ?私からあの人を奪った奴は、誰だ???
「お前か?あの人を隠したのは、お前だろ?
許さぬ、許さぬ!許さぬ!
返せ!返せ!返せ!返せぇえええーーーー!!!!」
浄化師は、男の願いを叶えるべく神社を訪れていた。
神社に願う。男を巫女から隠して上げられるように。
神社からの帰り道、道に迷った。 おかしい。
嫌な気配を感じ、冷静に帰路を探しながら運転していた時、
道のど真ん中、大きな黒蛇が戸愚呂を巻いて自分を見ている。
黒蛇の横走り去ろうとした時、蛇が鎌首をもたげて突っ込んできた。
「がっ」
車にぶつかった筈の蛇は、消えている。
実物の蛇が、道路の真ん中に戸愚呂を巻いているなんて、あり得ない。
アレは、何だった?
浄化師は、日課の犬の散歩に出ていた。
いつもは、生きてるハスキー犬と守護霊となったハスキー犬の気配を感じる程度。
ふと気づくと、前後左右、犬の気配に囲まれている。
しかも犬界のトップオブトップ!ボルゾイ率いる犬界最強戦闘部隊に囲まれている。
何故私は、犬界の戦闘部隊に護衛されているんだろうか??
考えつつ歩いていたら、
ブツっ
お散歩用バッグの3センチ幅の紐が、スパっと切れた。
カッターで切った如く、スパーっと切れている。
バッグの紐で良かった。私の腕は切れていない。無事。
守ってくれてありがとう!犬達。流石、精鋭部隊のボルゾイ班!
私を攻撃して来たのは、怒れる巫女か??
まあ、三百年恋焦がれた相手を奪われたら、怒り狂うわな。
怒り過ぎて現実的に攻撃出来るって、どんだけ強いのよ??
あ。元、月の巫女だから霊力強いのか。しかも300年分の修羅パワー割り増ししてるし。
その上に、怒りパワーMAX上乗せしちゃったし?
やばいなぁ。でも、黒いまんまじゃ上がれないしな。
僧侶で会った時、次は上げてやるって約束しちゃったしな。
他の人じゃ無理だから、今世目の前にいるんだろうしなぁ。
うわぁ…怒りの目がこっち睨んでるのが、視えるんですけどぉおおお。
呪い殺しそうな勢いだな、老婆。コワイ、コワイ。
ふぅ〜。
女の情念を叩き切って下さる愛染明王様、お力添えをお願い致します。
さあ、真っ黒の老婆を浄化しようか。
月の光降り注ぐ青龍の泉の上、真っ黒な老婆が浮かぶ。
全力で浄化の光をぶつける。
ぼとり ぼとり
コールタールが落ちるように、真っ黒な老婆の身体から、黒い邪気が落ちていく。
身体から泥が落ちるように、邪気が剥がれていく。
だが、老婆の眼は、怒りに満ちている。
まだだ。まだ黒い。 滅!滅!滅!…
身体の外の黒い邪気は消えた。が、顔はまだ暗い。
取り敢えず、老婆を泉に沈める。動けはしない。
浄化の泉に浄化されながらも、泉から出ている顔はグレー。眼は怒り燃えている。
この後、浄化師は霊力尽きて三日寝込んだ。
再戦
老婆と眼が合う。
ニヤリと嗤ったその時、ガッと口から蛇が飛んできた。
滅!!
あー、そういう事か。
お前、執着強過ぎて、メデユーサ呼び寄せたな。
その身の内に執念の蛇を、メデユーサを飼い続けていたか。
ならばその蛇ごと、消してくれるわ!!
口から次々と襲ってくる黒蛇を、真っ向から浄化の光で消していく。
滅!滅!滅!滅!!
遂に目の前に老婆の顔が来た。
その口の中に、全力で光叩き込む!!
滅!!!
泉全体が、白い光に包まれる。
ふっ。
光が消え、元の静寂な静けさが戻る。
「ご ごめんなさぁーーーい 」
そこには、平身低頭する巫女がいた。
この後、5日程寝込んだ浄化師。
霊力枯渇すると、起きあがれないんだよ。