邪気の侵蝕
「さて、どうしたもんかな??」
浄化師からすれば、悪霊狐を祓えば、老婆は白くなる筈だった。
が、老婆は狐がいなくとも、黒く重い邪気をその身に纏わせている。
ここで〈邪気〉の話をしよう。
「〈邪気〉って何ですかー?」と問われた時は、「簡単に言えば〈その人の悪意〉」と答える事にしている。
ならば「邪気を持った人は性格悪いんですね!」で済むと思ったら大間違い。
〈邪気〉は、攻撃の矢となり、善意を吸い上げ、人の身体を侵蝕していく。
つまり、邪気を持つ人が側に居たら、周りの人がやられてしまう。
よく、同居したら体調が悪くなったお嫁さんの話を聞く。
ストレス掛かるから、そうなるよね〜と言う単純な話では無い。
姑舅が、邪気溢れる人だったとしよう。
まず、気に入らない相手に邪気を飛ばす。これは、黒い矢が飛んでくるのと同じ。
お嫁さんは毎日、黒い矢で刺されるのだ。魂に傷が入り、身体が壊れいく。
姑舅の居る部屋に、黒い邪気が溜まっていく。どんどんどんどん溜まっていく。
その内に部屋から溢れ、邪気は家の中を侵蝕していく。
たとえ2階で離れていようとも、邪気は火事の煙の様に家中に充満して行く。
黒い邪気に包まれた家に居て、健康でいられる筈がない。
じわりじわりと同居する家族の精神と肉体が、黒く染まっていく。
穏やかだった人が、怒りっぽくなり自分勝手な言動が増えていく。
身体は痛めつけられ、胃潰瘍や癌を形成していく。
可愛い孫の性格が、少しづつ黒さを帯びていく。
若しくは、清浄な気を持つ人は、その気を吸い取られてしまう。
「憎まれっ子世に憚る」と言う諺があるが、そのまんまの意味である。
邪気溢れる人は、周りの心地よい気を吸い取り、益々元気になり、我儘放題ストレスフリー。
逆に、善意の人は生体エネルギーを吸われ、病気になり命までも奪われていく。
同居していて、姑舅に恐怖を感じるのであれば、それはもう正常な人でなく邪気の塊。
全力で逃げる事=別居や離婚をオススメする。
親を見捨てるのではない。邪気から逃げるのである。
そこで戸惑うアナタ、自分の心と身体を守る為に逃げる事は、当たり前なんです。
後ろめたさを感じる必要は、皆無ですよ。
話を元に戻そう。
浄化師は、老婆の家族の為にも、黒く染まった魂を元の白さに戻したかった。
が、簡単に浄化出来ない事を理解し、これ以上の被害阻止の為に結界を張る事にした。
この老婆、怒りと言う形で周りに邪気を放っていた。
黒い矢なんてものじゃない、黒いナタがガンガン飛んでくるのだ。命が縮む!
なので、老婆の周りに結界を張る事にした。
結界を張れば、自分が放った黒い悪意は自分に跳ね返る。
これ以上周りに邪気を放たない様、老婆を強固な強固な全力の結界で囲った。
数週間後、事態は動く。
老婆が自宅で骨折し、2ヶ月入院したのである。
浄化師は、自分が予想もしない方法で、老婆を家から出す事に成功したのだった。
命大事だよね