青龍の泉に、神獣は集う
泣きやんだ子狐を見ながら、浄化師はカクリヨ界に問い掛ける。
「この子を預かってくれる神獣、いる?」
「私が立派に育てて、稲荷狐の元に送りましょう」
応えてくれたのは、神獣白虎。
住んでる所は<青龍の泉>
神獣を育てるのは神獣で。
虎と狐・・・ちょっと違うけど同じもふもふだし、イケル イケル‼︎
浄化師は、子狐を青龍の泉へ飛ばした。
カクリヨに存在する〈青龍の泉〉とは
静謐な森の中、こんこんと湧き出る泉がある。
泉には、青白き空に浮かび上がる真白き月が浮かんでいる。
月の力即ち、万物の穢れを祓い傷を癒す力。
月の力は月光となり、青龍の守る泉へと降り注ぐ。
青龍の泉とは、穢れを祓い、あらゆる神獣達の傷を癒す、聖なる泉であった。
聖なる泉は、深遠なる静寂に包まれているが、日中はそうでもない。
ここは、聖なる泉の形をした、神獣達のパワースポットである。
もっと突っ込んで言えば、泉=神獣達の健康スパランドとも言う。
日々神社に座していれば、人の欲を浴び、穢れがその身に纏わりついてしまう。
神獣達は、穢れで身体が染まらないように、泉に身を沈めては穢れを落とし、
清らかな月の光を浴びて神気を養い、再び神社へと戻って行く。
又、神獣達にも子供時代はあるわけで。
遊んでケガをしても、厳しい修行中にケガをしても、泉で泳げば全回復。
必然的に神獣の子供達が常にいる。
静かでありつつも、神獣が出入りするそこそこ賑やかな場所になっていた。
更に、カクリヨの獣達の中でも、青龍の泉は知られていて。
泉の管理神獣の許可を得た一部の獣種族は、出入りを許されたいた。
なので、出入りOKの犬界の上位者の中には、出勤前のシャワーのごとく、
毎朝、泉で一浴びしてから飼い主の護衛に出かける強者までいた。
そこまで規制が緩くて良いんですか?と問えば、
「頑張っている神獣達の力となれば、良し」と、
小さき者のお好きな月の女神様は、静かに微笑み、子供らを見守ってくださるのであった。
話を戻そう。
清き泉のほとりには、長い尻尾をゆらゆらと揺らす白虎神。
邪気から解放されたばかりの、まだ幼い子狐が近づけば、
優しく手繰り寄せ、傷んだ身体を温める様に胸元に抱いた。
「子狐が捕まって20年余り。痛みつけられた傷は深い。
身体の傷が癒え、稲荷狐達の元へ行く力が付くまで、私がここで育てよう。」
浄化師は、子狐を白虎神に託し「宜しくお願い致します」と頭を下げた。
「子狐、頑張れ」