悪霊狐を滅す
〈浄化師〉とは、カクリヨ、現世関係なく、穢れ、邪気、悪霊を、霊気で浄化します。
結界も張ります。豊富な霊気を、神獣達に注いだりもします。
人を浄化する時に、その人の前世や遠い魂の記憶が見える事もあります。
〈浄化師〉は裏稼業で、表では〈アニマルコミュニケーター〉だったりします。
神獣達とは対等の関係であり、犬猫達は配下と思ってます。
ミッション「老婆に憑りついた悪霊狐を祓え」
「滅!」
目の前には、老婆の肩に乗る真っ黒な狐の姿。
浄化師は、老婆に長い間憑りついている悪霊=黒い狐を祓おうと、全力の霊気を叩きつけていた。
「消えろ、消えろ、消えろ!
この老婆から離れろ!滅っ!!」
悪霊狐からの反撃は無い。
逆らう事なく光を浴び、声を発する事なく浄化の激流にさらされている。
しかし、悪霊狐の上半身は浄化の渦に揉みくちゃにされようと、脚が老婆の肩深く埋まり、
狐の身体が老婆から離れる事は無かった。
しつこい・・・。更に全力で霊気を叩き込む。
「滅!滅!!滅!!!」
浄化の光が、狐から黒い邪気を剝ぎ取っていく。
黒い邪気が消える毎に、狐の元々の白い毛が露わになっていく。
残るは、老婆の肩にのめり込んだ黒く染まった足先のみ。
「滅っ」
狐の足を吹き消す勢いで、浄化の光を老婆の肩に叩き込む。
ポン!
「やったぁああーーー!離れたーーー!!!!」
目の前にいたのは、小さな小さな白い子狐だった。
アナタ、大きな狐でしたよね???
「うわぁあああああーーーーん!辛かったよぉーーー!!」
大泣きの白い子狐(カワイイんですけどぉおお♪)
「そもそも君はどうして、悪霊狐になってたのかな?」
えぐえぐと小さな手で涙をふきつつ、子ぎつねは懸命に自分に起こった事を説明する。
「ボクは、稲荷神社の見習い狐だったんだ。
そうそう、大人になったら稲荷狐になるの。
でね、小さいうちは境内のお掃除をしたり、大人狐のお手伝いをしたりして過ごすんだ。
あの日、すっごく怖い女の人が僕のいる神社にお参りに来たんだ。
でね、帰り際にヒョイっと。
ホントにヒョイっと! 僕を捕まえて、肩に乗せたんだ。
え?と思った時には、僕の足は女の人の肩にくっついてた。
女の人のオーラは黒くて、目の前が真っ暗になった。
怖くて怖くて・・・。逃げようと思っても足がくっついてて逃げられなくて・・・。
そのうちに、女の人がどんどんどんどん、嘘を重ねていったんだ。
人の言葉では<虚栄心>って言うのかな?
最初は小さな嘘だよ。
お金が無いのに、あるフリをする。
そのうちに、お金が無いのに高い買い物をする。自分を綺麗に見せたいからね。
そしたら、借金するでしょ?返せるうちは良かったんだ。
借金がどんどんどんどん大きくなって・・ついに人のお金に手を出してしまった。
そしたら僕を包むオーラが黒くて重い邪気となり、身体の中まで侵食していった。
女の人が嘘を吐く、人を妬み嘲笑う度に、僕の身体は黒く大きく育っていった。
あの人が人の心を、感謝する気持ちを失くした頃には、僕は立派な悪霊になっていたよ。」
そっかぁ、辛かったね。
君が悪霊だったんじゃない。悪霊にさせられたんだね。
大丈夫。君の中の黒い邪気は全部消えた。
君は、白い小さな稲荷狐に戻ったよ。
初めての投稿になります。よろしくお願いいたします。
7話で完結予定です。