命の価値は
【注釈】
人物の心理描写のために描いた作品です
少し重い描写のため
もしも生死を扱った題材が苦手な方は
お戻りください
君は死を知っているか
血を流し至る死でもいい
毒に苦しむ死でもいい
命潰えるその瞬間を
死の瞬間を知っているか
それは淹れたての紅茶に落とした
角砂糖のようなもの
銀のスプーンで撹拌させれば
ほろほろと崩れ溶けて消えてく
紅茶の中には何も残らない
時が過ぎて冷めやらぬ内は
君は血を知っているか
自身に流れるものでもいい
繋がりを示すものでもいい
外気に触れたら固まり黒ずむ
真っ赤に流れる血を知っているか
それは皆が飲む水が流れる
上水道のようなもの
愚かか悪意で詰めてしまえば
ぼろぼろと零れ落ちて地に消える
水道の中には何も残らない
その先にある人の命も
それに貴賤の差などはない
皆が同じ
誰もが同じ
そこに価値の差などはない
皆が同じ
誰もが同じ
生まれたときは皆同じ
無力で
無欲で
終わりのときも皆同じ
無力で
無心で
生きる源も皆同じ
選ぶことなく
ただ与えられる
違いがあるとするならば
自らを取り巻く環境と
己に課された命題と
積み重ねてきた経験と
そこに貴賤の差などない
機会が違う
それだけが違う
与えられれば為さねばならぬ
権利は常に義務と共にある
そこに貴賤の差などはない
己に課された命題と
積み重ねられた実績だ
ところで
君は死を知ってるか
そこに貴賤の差などはない
命の始まりも
命の終わりも
誰も皆等しく
唐突に訪れる
その可能性が
誰にでもある
命の終わりを
選べるならば
それはむしろ
幸福だろうか