2人の天使を拾った話
此話は空想に過ぎないファンタジーの1つです。
天使と神、孤児の天使と人間のハーフによる出会いの話です。
疲弊しきった身体を引き摺るように外へ出た或る日の宵、まだ赤が残っている空から彼らは流れ星のように輝く光を帯びながら私の前に降り立った。
月の光に照らされ光る白銀の髪睫毛、それに負けじと劣らない純白の衣服の隙間からは手入れの施された白い猫の毛のような肌、私を見つめる瞳はまるでダイヤのようで、到底この世の物では喩えようのない容姿でまさに神話で言う天使の子供らが私の元へ神からの便りを渡す為に来たのかと思ってしまう程だった。だが、あながち私の妄想は間違っておらず子供らは躊躇いながら「イオス様からの御手紙です」と言い下を向いてしまった。「もう秋も暮れかけている、此時間はもう外が冷え始める、身体も冷えてしまう前に中へお入り」
子供らは1度互いを見つめ合うが動こうとしない。
「蜂蜜の入った暖かい紅茶と焼きたてのカップケーキもある、ここに立ったままではそなたたちが心配だ此方へおいで」
茶か菓子かわからないが子供らはようやく中へ入ってくれた。目の前に出してやると瞳をきらきらさせ食べていいのかという眼差しを私にぶつけてくる。一度頷いたら顔を明るくさせ夢中になりながら幸せそうに頬張っていた。
子供らが夢中になっている間渡された手紙を読むことにした。
『愛しのメシアへ』
『私の天使たちを頼んだよ』
アストライオス、名前の通り神である。何故此奴は突然としてこのようなものを手紙で済ませるのか。「全く…どうでもいい用事はわざわざ此方迄出向くのに」そう呟くと手紙に字が書き足されていった。
『どうでもいいとは酷いじゃないか』
『両親に愛されていない君と同じだろう』
『そして私に愛されている彼らは良い子だよ』
私には到底理解ができなかったが仕方あるまい。同じ境遇の子供を放って置けないのを見透かされてるのは私の落ち度だ。
食べ終わった子供らは此方を見ていた。私は子供らのそばへ行き話を聞いた。子供らは涙を堪えながら私に今までの全てを話してくれた。兄がいること、両親は兄だけを愛していること、自分たちは暴力や罵倒を毎日受けていたこと、そんな時アストライオスが下界に私がいることを教えてくれたこと。「メシア様を初めて見た時はただの興味だけでした」「けれどお会いしたこともないのにこの人は救ってくれると直感で思ったんです」私は泣いていたのだろう子供らは慌てながら謝ってきた。「ごめんなさいじゃなくてありがとうを聞きたい君たちからのありがとうが」子供らは目をぱちくりさせ呆気に取られていた。
「曖昧だったね、よければ私の気が済むまで君たちの世話をさせてくれないか?」
私は涙を堪えながら一生懸命微笑んだ。子供らはぽたぽたと涙を流していた。「ほら涙を拭きなさい、君たちは何もしなくていい」
「ただ苦痛の色が少しでも薄れてほしい…その役を私が買って出てもいいかい?」
子供らは涙でぐちゃぐちゃになりながら深々と頭を下げてきた。咄嗟に私は2人まとめて抱きしめていた。
これからはきっと思うように何かを進めることは難しい。
けれどきっと後悔はしないだろう。
お読み頂きありがとうございました。