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第3話 酒池肉林(魚肉)

「…………」


 俺は、泉の前で立ちつくしていた。スキル『物質変換魔法』と言われても、どうやって使えばいいか分からない。そもそも魔法なんて使ったことないし。


「うーん。どうすればいいんだ? スキル? 魔法?」


 俺は、何となく泉に向かって手のひらをかざしてみる。すると。


『対象を確認。スキル発動します』


 唐突に、頭の中にメッセージが流れる。そして、俺の手のひらがぼうっと青白く光った。蛍光灯みたいに!


「おお! な、何だ!?」


 突然の出来事にびっくりしたが。すぐに光は消えた。特に何事も変わった様子はない。目の前には、泉があるだけだ。


「うーむ。何だったんだ? 今の光は…… そうだ!」


 俺は、ハッと気づいた。しゃがんで泉の水を手ですくった。見た感じ透明なただの水だが。そっと口につける。そして、飲んでみた。


「ん! や、やっぱり…… これは、酒だ! 水が酒に変わっている!」


 口の中に広がる芳醇な香り。日本酒に近い味だ。喉がアルコールで少し熱くなる。


 俺は、さらに泉の水をすくって飲む。


「うん。美味い。良い酒だ! しかし……」


 いったい、それが何になるというのだろう。水を酒に変えたことによって、俺がスキル『物質変換魔法』を使える事は証明された。


 しかし、状況は決して良くなった訳では無い。相変わらず俺は知らない森の中にいる。泉の水を酒に変えただけだ。


 他に役立つスキルは無いのか? 俺は、もう一度ネックレスの先についた銀のプレートに触れる。頭の中に俺のステータスの情報が流れた。



〇 ステータス

 名前:ジョージ

 種族:人神族

 性別:男

 レベル:1

 HP:50

 MP:18/20

 腕力:15

 敏捷:12

 魔力:10

 スキル:物質変換魔法 レベル1


「あッ! MPが減っている!」


 ステータスを見て気がついた。MPの表示が、18/20になっているのだ。つまり、2ポイントMPを消費したみたいだ。


「……MPって何だ? マジックポイントかな?」


 そうつぶやくと、頭の中に新しい情報が流れ込んで来た。


『MPは、メンタルポイントの略。魔法や特定のスキルを使用すると消費される。また、精神的な強度を示しており、MPが低くなると精神的な抵抗力が落ちる。また、MPが0になると意識を失い気絶する。睡眠などをとり休むと徐々に回復する』


 なるほど。俺は『水を酒に変える』魔法を使ったから、MPを2消費したってことか。そして、使いすぎると気絶するのね。気をつけよう。


 そんなことを考えていると泉の水面にプカァと何かが浮かんできた。魚だ。よく見ると魚が白い腹の部分を上にしてプカプカ浮かんでいる。


「あー………… あれか。水を酒に変えちゃったから、お魚さん死んじゃったのか……」


 悪い事をしたなと思いつつ。目の前に浮いている魚を掴んでみた。まだ生きているようだが。弱々しく抵抗する力も無い。ピクピクと微かに動いている。


「これは、何ていう魚だ? ニジマスに似ている気がするが。模様が違うような……」


 手に持った40センチくらいの魚をまじまじと見ていると。頭の中に新たな情報が流れる。


『名前:フォークライトマス。フォークライト大陸全域の川や湖に生息する淡水魚。白身の魚で、塩焼きやムニエルにして食べるのがおすすめ』


 それは、嬉しい情報だ。


「そうか。食べれるのか! それに……」


 もうひとつ有意義な情報があった。『フォークライト大陸』という地名。そんな大陸は聞いたことが無い。やはり、俺が今いるこの世界は異世界なのだ。


「よし! とりあえず。この魚を焼いて食べようか!」


 まずは、腹ごしらえだ。火を起こして…… どうやって? 今の俺は、ライターなんて持ってない。もちろんマッチもだ。


 そういえば、昔の人が木の棒をクルクル回して摩擦で火を起こしてたっけ。いや、そんな面倒な事をしている場合ではない!


「刺身はどうかな……?」


 やはり包丁もナイフも持ってないから無理だ。そのままかぶりつくか? いや、川魚は寄生虫がいるかもしれないので恐い。生はやめておこう。食べるなら焼かないと。


 俺は、その辺をキョロキョロ見渡すと、丁度良い大きな葉っぱの草が生えているのを見つけた。その葉っぱで魚を包む。これで、持ち運べる。とりあえず、非常食としてキープしておこう。


「とにかく。この森を早く出よう!」


 このまま森にいるのは危険だ。もはやピクニック気分ではいられない。俺は、葉っぱで包んだ魚を持って移動を始めた。


 できれば、泉の水も持って行きたいところだが。水筒に代わる物は持っていないのであきらめた。


 こうして、俺は再び森の中をさまよい歩く。何とか日が暮れるまでに人里にたどり着きたい。



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