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第1話 森の中

 見渡す限り、木々が生えている。空を見上げると緑の葉の間から見える青い空。晴れているようだが、葉に遮られて周囲はやや薄暗い。


「ここは…… どこだ? 森か……?」


 どうやら、俺は今知らない森の中にいるようだ。何故、森の中にいるのか分からない。記憶が混乱しているようだ。俺は、必死に自分の記憶を辿たどろうとした。


 そうだ、俺の名前は天野あまの譲二じょうじ。年齢は23歳。中堅企業に勤めるごく普通のサラリーマンだ。入社2年目で仕事もだいぶ覚えて、後輩もできた。それなりに仕事も任せられるようになった。


 そんなある日、朝のいつもの通勤の時だ。俺は、まだ少し眠い目をこすりながら会社に向かっていた。いつもの通勤経路。突然、目の前に人影が現れた。


 それは、ヨーロッパの修道僧のような茶色のローブを着ていた。フードを深くかぶっていて顔は見えない。周りに行き交うサラリーマンとは明らかに異なる服装だった。そして、手には銀色の短剣を持っていた。


 あまりにもいつもの日常とは違う光景に、俺は理解することも動くこともできなかった。


「〇■×△!!」


 ローブを着た人物は、知らない言葉を叫びながら俺に向かって突進してくる。突然の出来事に俺は、動く事もできない。


 ドンッ!


 ぶつかった衝撃で、ローブを着ていた人物のフードから顔が見えた。その顔は、美しい銀髪の女性で涙を流している。


 熱い! 腹部に強烈な熱を感じる。見ると銀色の短剣が俺の腹に突き刺さっている。シャツが血で赤くにじんでいる。


「な、なんで……!?」


 体に力が入らない。俺は、膝から崩れ落ちて倒れる。徐々に視界が暗くなっていく。そして、意識を失った。


 そこまでの全ての記憶は思い出せた。しかし、今は全く知らない森の中にいる。そして、気がつくと服装も変わっていた。いつものスーツじゃない。血の着いたシャツでもない。ボロい布製の服を着ている。中世ヨーロッパの農民みたいな格好だ。


「ん? これは何だ?」


 首に銀色のプレートがついたネックレスがしてある。アメリカ軍の兵士が着けているドッグタグと呼ばれるやつに似ている。俺は、ネックレスの先に付いている銀色のプレートを何気なく触った。


 その瞬間、頭の中に直接。情報のようなものが流れてきた。それは、生まれて初めての感覚だった。



 〇 ステータス


 名前:ジョージ

 種族:人神族

 性別:男

 レベル:1

 HP:50

 MP:20

 腕力:15

 敏捷:12

 魔力:10

 スキル:物質変換魔法 レベル1


「な、何だこりや!? ステータス……?」


 まるでRPGゲームのような情報だが。誰のステータスだ? 名前が、ジョージって…… まさか、俺のことか?


「何だ? このスキル『物質変換魔法』っていうのは……?」


 そう、思った瞬間。新たな情報が頭の中に流れる。


『物質変換魔法とは、人神族にしか使えない特殊な魔法。奇跡とも呼ばれる。レベル1は、水を酒に変えることができる。また、逆に酒を水に変えることもできる』


 人神族? いや、俺は普通の人間のはずなんだが…… それに、水を酒に変えることができると言われても。周囲に水は無い。試すこともできないし。今は、それどころじゃない。


「そういえば、腹も減ってきたな……」


 俺は、いつも朝食は会社に着いてからコンビニで買ったパンなどを食べる。今日は、通勤途中に殺されたから朝から何も食べていない。ん? 殺された?


「そうだッ! 俺は、あの時死んだはずじゃ!? 何でこんな森の中に居るんだ? まさか……」


 これは、あれだ。漫画やライトノベルでよく見る異世界転生。いや、俺の場合は異世界転移というやつでは?


「…………」


 しかし、仮に異世界転移だったとしても。全然、喜ばしい状況ではない。チートどころか持っているのは『水を酒に変える』という微妙な魔法だけだ。


「とりあえず、移動しよう!」


 このまま森の中にいるのはよくない。もし、ここが異世界ならば森の中には危険なモンスターがいるかもしれない。異世界でなかったとしてもここにいてはどうする事もできない。


 とりあえず、俺は適当に森の中を歩いてみることにした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう小説、大好きです。 題名にスキル名が乗っているのも個人的に好印象です。変えることが出来ないですからね…… 素敵な作品に出会えて嬉しい限りです! [一言] また読ませていただきま…
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