第四十四話 愛しいあの子からの告白! あなたに残してあげたい! アタシが生きていた『証』を!
Chugga! Chugga! Chugga! Chugga!
Choo! Choo! Choo! Choo!
「うーん! 風がキモチイイ!」
「そうだね!」
背伸びする!
GOKI! BOKI!
あ、さっきゴキゴキいった。
こわいなぁ~。
二等客室っていっても、イスはかたいし。
やっぱりあっちこっちかたまるよねぇ。
「フィルありがと」
「え? なんだよ。いきなり」
「【プテ・サン・ウィン】様のところで、なにがなんでも救ってやるって言ってくれたでしょ? うれしかった」
そういえばそんなハズカシイセリフ口走っていたような気がする。
うぅ……。
穴が入ったら入りたい……。
「それでアタシ決められた。ううん、これは自分で決めなきゃいけないことなんだって気づけたんだ。だからありがとう」
「……そっか」
結局、自分はウィンの背中を押してしまったんだなぁ。
ほんとうにこれでよかったのか。
バカか! 僕は!
何が何でも救うって自分で決めたじゃないか!
「でもね。後悔がないわけじゃないんだ。今でも、アタシの心はふるえてる」
「ウィン……」
同じだ。
きっと僕たちは同じ後悔を背負ってしまったんだ。
「ウィン、それは僕も同じだ。けど、だからぜったい君を『救』ってみせる」
「フィル……」
やっちまった。
また、こっぱずかしいセリフを!
で、でも!
もう後悔しないし、立ち止まらない!
今決めた!
「アタシね。やっと気づいたんだ……」
「気づいた?」
「うん、前にジェニーが言っていた。お母さんがなんでレヴィン兄ぃとアタシを産んだのかって」
ああ、そういえばそんなことを問いただしていたようなぁ。
「今、ようやくわかった。きっとお母さんは、お父さんに残してあげたかったんだって……」
「残してあげたかった……?」
「うん、レヴィン兄ぃとアタシという存在を……」
フィンに強く手をにぎしめられる。
それにいつになく真剣なまなざし。
なんだかすごくドキドキする。
そして――。
「アタシ――フィルのことが好き! だからアタシと子供つくって!」
………………。
…………。
……。
はぁ?
え? え? え?
ちょっとまって。
うーん。
いま、ウィンなんていった?
子供つくる?
子供ってベイビーのことだよね?
話の流れからは――わからない話じゃない。
先が短いから、残してあげたい。
わかる。
筋が通っている。
うん。
でも……でも……。
「……………………はぁぁぁ!?」
「イヤ?」
「イヤじゃない! イヤじゃない! むしろ――ご、ごめん、少し落ち着かせてくれる。急すぎて頭の整理がつかないんだ!」
「ということはイヤじゃないんだね! うれしい!」
MUUUUUUUUUUUUUSH――!!
はっ!
僕はいったいどうしたんだ?
気を失った?
いきなり抱き着かれて?
それで今も――。
「……フィル、アタシ、あなたに残してあげたい。アタシが生きていた証を」
「ウィン……」
顔が自然と近づいていた。
なぜ?
いや、そんなことはどうでもいい。
今は目の前にいる一人の女の子が愛しくてたまらない。
くちびるがふれ合っ――。
KWIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEH―――GONK!!!
「きゃ!」
「わっ!」
突然列車が急停車!
なんなんだ! いったい!?
とっさにウィンを支えていなかったら、投げ出されていたところだったよ!
「ウィン! 平気!? ケガはない!?」
「……うん、平気、フィルがまた助けてくれたから」
まださっきの余熱が少し残っている。
ぐっ!
名残りおしいいけど、今は!
「と、とりあえず今は何が起こったのか、状況を確認しよう!」
「……そ、そうだよね。うん、ごめん」
はじらいながら起き上がるウィン。
くそぉぉっ!
カワイイなぁ! もう!
と、とにかく僕らは急いでアニキたちのところへ向かったんだ。
客室へもどると……。
「アニキ!」
「リリー姉ぇ!」
「ウィン! フィルくん!」
「お前たち無事か!」
「クーン! クーン!」
客室から飛び出してくるアニキたち――だったんだけど?
「なんか、二人とも服がすこしはだけてない? まさか……」
「こ、これはちがうのよ! ウィン!」
「そ、そうだぞ! オレたちは、ま、まだ何もしてないうちに――」
「バ、バカ! レヴィンのバカ! 何でそういうこといっちゃうのよ! もうバカバカバカァっ!」
「だってほんとのこと――」
BONK!
「ぐはっ!」
あ~そういうことね。
「と、とにかく、今は前方車両に行ってみよう!」
「あ、ああ!」
「クーン!」
アニキたちと合流し、再び走り出そうとした矢先。
―――BAN!!!
「え!? 今の銃声!?」
「まさか列車強盗!?」
「だとしたら、乗客があぶねぇ!」
「うん! 急ごう!」
多分乗り合わせている賞金稼ぎは僕たちだけ。
つまり対処できるのは自分たちだけだってことだ。
それになんだかイヤな予感がする。
――そして僕らは先頭車両に到着したんだ。
だけどそこで待っていたのが……。
「よう、久しぶりじゃねぇか。フィル?」
「な……」
息をのんだよ。
だってそこにいたのは――。
「エリオット、どうしてあんたがここに!?」
「ククク……どうしてだろうなぁ?」
再会したエリオット。
生きていた。
いや、そのなんことよりも。
目の前にいるのは本当にエリオットなのか?
目が正気じゃない。
肌もどこか浅黒い。
むしろエリオットに似た別人のだれかように感じる。
「エリオット? エリオットって確か、フィルが前いた……」
「そうみたいね。強盗を働いてにげて、今度は列車強盗っていうことね」
「テメェか! オレの弟をさんざんコキ使ってボロキレのように捨てたヤローはっ!?」
「んだこいつらは、ああ……そうか、新しいお前の仲間か……ククク」
エリオットからただよってくる気配、昔とはまるで異質。
なんなんだ。いったい。
この寒気は?
『む、この気配は【魔族】!』
「キキ、いや――【プテ・サン・ウィン】様!?」
キキの首輪の白い宝石が光っている。
『どういうことですか? これは……普通の人間が【魔族化】している? そんな技術をあの者らが!?』
「ククク……テメェらのことは、アルカージィのやつから聞いたぜ、ククク」
『アルカージィ!? まさかあなた、あの者とつながりが!?』
アルカージィ?
だれだ? いったい?
「ああ、まあぁな……ククク、にしてもさっきおもしろいこと言っていたな。列車強盗……そいつはいい」
「何が面白いんだ! みんなに恐怖をあたえて! それが賞金稼ぎのすることかよ!?」
「残念だったな。オレはもう賞金稼ぎなんかじゃねぇ。テメェらゴミクズを管理する【看守】になったんだよ」
「なんだって……」
【看守】……。
まさか、エリオットが?
「どういうことですか!? 【プテ・サン・ウィン】様!?」
『私にもわかりません。いったいどうなっているのか……』
「リリー、とにかく【魔族】だろうが何だろうが、今はこいつを何とかするんだ!」
「そうだよ! レヴィン兄ぃの言う通り! みんなでこいつを――」
「おっと、そんなこと言っていいのか? こっちは乗客を人質に取ってるんだぜ?」
TCHAK――ッ!!
「ヒィ!」
一人の女性にショットガンの銃口が向けられる!
なんてやつだ!
「ほらよ」
「な!」
SWIFF!!
なんだ?
エリオットが麻袋を投げつけてきた。
いったいどういうつもりだ?
「フィル。それで乗客の金品を集めろ。断ればどうなるかわかるよな?」
「ぐっ……」
女性のおびえきって涙をながす姿が見える。
「フィル……」
「フィルくん」
「……フィル」
「おいっ! 早くしろ! この女がどうなってもいいのかぁ? あぁん?」
エリオットの指が引き金にかかった。
まずい!
ここは――。
「わかった! やる! だからその前に乗客を全部下ろさせてくれ!」
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