第三十九話 精霊の導きの終着点! 伝説の『星獣』の下へ!
――サンストーンキャニオン アベンチュリントレイル――
水浴びを終えて、ほぼ黒髪にもどったリリーさんの案内で、僕らは精霊のほこらへ。
「うげ! リリー姉ぇ……ほんとにここ降りていくの?」
「そうよ。だいじょうぶ、ゆるやかなところを選んだから」
「ゆるやかって、ほとんど『ガケ』じゃねぇか」
「ホロロ……」
「はは、曲がりくねってはいるけど、降りられるような道があるからなんとかなるんじゃない?」
キキもなんだかこわがっている。
そんなにこわいかなぁ。
「フィル? お前……強くなったなぁ」
「そ、そうかな? それにしてもすごくいい景色だね!」
「うん、たしかに景色いいけど、でもフィル? これから谷底に降りなきゃならないんだよ?」
「そうだね。それも少し楽しみだ」
「やっぱり、強くなったよ。フィル……」
ウィンにまでそんなこと言われた。
そうなのかなぁ~。
とにかく僕らは谷底へと降りていく。
DAP DAP DAP――。
「レヴィン兄、エハウィー叔母さん、いい人だったね」
「ああ、そうだな。オレたちを実のおい、めいみたいに接してくれていたな」
「あたりまえでしょ? もうはじめっから『おい』、『めい』なんだから。もちろんフィルくんも」
「あ、ありがとう、リリー姉さん。それにしてもよかったですね、髪もどって」
「ありがとう、でもまだちょっと灰色っぽいかな」
たしかにちょっと灰色がかっている。
いうならかなり黒に近い灰色?
「うーん、アタシは前の方がよかったなぁ~」
「オレはどんな髪色でも似あっていると思うぜ」
「クンクーン!」
「はいはい、ありがと、そんなことより早くいきましょ。日が暮れちゃうわ」
こうして降りること30分。
「みんなちょっと止まってくれる?」
なぜかリリー姉さんはせまい谷の前まで来たところで急に立ち止まったんだ。
「どうしたの? リリー姉ぇ」
「うん、このきれいな砂岩のさけ目の先は、ほんとうに聖地なの」
と言うことはつまり。
「こんなせまいところを入っていくんですか?」
「そう、だから入る前に儀式をしなきゃいけないからちょっと待っていて」
人ひとり、やっと通れるぐらいのさけ目だけど、でも――。
「そうなんだぁ。なんかきれいなところだね。フィル!」
「うん、一筋の光だけが照らしていて、なんとも……」
KLICK! KLICK!
景色に見とれていたらなんか、後ろからカチカチと音が。
なにやらリリーさんが火打ち石をたたいている。
「リリー……それ、もしかしてタバコか?」
「ちがうわよ。レヴィン、これはフィジカルハーブっていう薬草を乾燥させたもの、害はない」
「吸うのか?」
「吸わないわよ! 火をいれて、舞いをささげるの!」
アニキ……なにをそんなに不安がっているんだ?
「よし、できた。ちょっとみんなはなれていてくれる」
リリー姉さんは火を入れた【聖なるパイプ】を円を描くようにふりまわしておどる。
「なんか不思議な感じだね……神聖っていうか」
「うん、同じこと思った」
そしてケムリがあたりに立ちこめていったところで。
今度はひざまずいて、いのりをささげたんだ。
「はい、これでOK。いくわよ」
「もう終わり?」
「意外とあっさりしているんだね」
「失礼ね。ちゃんとした儀式よ。ほらさっさと行く」
とりあえずリリー姉さんに背中をおされるようにして、岩のさけ目の中へ。
「リリー、タバコだけはやめろよ」
なんだろう? 急に。
まだ中ほどっていうところで、アニキが変なこと言い出してる。
「ど、どうしたのよ? レヴィン、いきなり」
「だってよ……お腹の、その、子供によくないんだろ?」
「……は?」
「ク~ン?」
おいおい。
いつの間に?
そんな様子なかったけど。
「う、うそ、まさか! リリー姉ぇっ! 赤ちゃんが!?」
「んなわけないでしょ!! バカレヴィン! あんたねぇ!!」
顔を真っ赤にしたリリー姉さんが【聖なるパイプ】をふりあげた!
そのパイプ、そんな風に使っていいのかな……。
「誤解のまねくような言い方すんじゃないわよ!」
「悪りぃ! 悪かったって!」
まったくアニキは……。
さっき不安がっていたのはコレか。
「なぁんだ。赤ちゃんできたわけじゃなかったのかぁ~」
「まぁ、さすがに僕は早すぎるとは思ったけど」
「当たり前でしょ! まったくレヴィンは……」
「けどよ~」
「心配しなくてもタバコなんて吸わないわよ。もう……」
ん?
「ということは、リリー姉さん、アニキと赤ちゃんつくるのはイヤなわけじゃないんですね?」
…………あれ?
また変なこといっちゃったかな……?
それになんだか急に寒気が……。
リリー姉さんがものすんごい笑顔をふりまいてくるんだけど?
「フィ~ル~く~ん?」
や、やばい。
だめだ、逃げ場がない。
――GONK!!
――イテテ。
ゲンコツだけで済んだのはよかった。
「でも、ちょっと残念」
「何がよ」
「リリー姉ぇたちに赤ちゃんできら、ものすごくかわいかったろうなぁって」
「ちょ、ちょっとウィン!?」
「ご、ごめん。でもさ、見て見たいなぁって」
「……ウィン、あなた」
ウィンがまたナーバスになっているって、僕もわかったよ。
これだけ付き合いが長くなればさすがにね。
「ウィン――」
「ホロロ……」
「そんな心配するなって! そのうち見せてやるからよ!」
「ちょ……ハァ……まぁ、そうね。そのうちね」
「うん、ありがと」
少し立ち直ったみたい。
家族のなせるワザか。
ちょっとやける。
一筋の光をたよりに進むこと、10分――。
『来ましたね。運命にあらがいし子供たち』
息をのんだ。
【星獣】と聞いてはいたけど、こんなにも大きい存在だったんなんて――。
『私の名は〈プテ・サン・ウィン〉。この星で【陪審員】といわれる者の一人です』
自分ら待っていたのは、巨大な白いバッファローだったんだ。
ここまで読んで頂いた読者の皆様、読んでくださって誠にありがとうございます(人''▽`)
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