第三十五話 『消』えかける烙印はやがて訪れるハッピーエンドの暗示!? × 『小者』のあるあるバッドエンド!?
――カルサイトリコ スパー高原 街道――
「近くに水場があってほんとよかったぜ!」
「これもキキのおかげですね!」
「ありがとう! キキ! 君が水のにおいがするって、言ってくれなかったらどうなっていたことか!」
「クーン! クーン!」
キキが水場を見つけてくれたおかげで、〈グラトニー・プリン〉の【粘液】を洗い流せたんだ。
で、今は回収した【粘液】をもって、町へ帰っている。
「ところで……いつまでこれを下げていればいんでしょう?」
「そりゃあ、決まってるぜ。あいつらの気が治るまでさ!」
うん、空が青い!
本来なら、依頼を達成してスカっとした気分なんだろうけど。
『僕らは戦闘中にもかかわらず、不健全行為を働きました』
と書かれたプレートさえなければね。
僕、アニキ、リュシアンくんの三人は女性たちから、これを首にさげるという『オシオキ』を受けているんだ。
たぶん、このまま町に入ってさらし者にする気なんだろうね。
「これで済んだのはむしろいい方だよ」
「そうなんですか?」
「うん、僕ら二人、『バンデットウルフ』の森に一晩中つるされたことがあるんだから」
「何をしたらそんなことになるんですか!?」
「うっさい! 静かにしてなさい! バカ!」
ウィンにたしなめられた。
さっきまであんなに泣きじゃくっていたのに。
「別に、私は気にしておりませんが?」
「アリサ、あまり殿方をあまやかしてはいけません。時にはきびしくいってやるべきなのです」
「ウチにはきびしくいってもこりない。スケベ大王が二匹もいますけどね」
二匹!?
リリー姉さんも僕のことそんな風に見ていたの!?
そんなぁ……。
「ところでリリーさん、〈グラトニー・プリン〉の中から出てきたこの【銃剣】はなんなんでしょう?」
アリサさんの手元には、霜色の【銃剣】。
「ええ、おそらく星霊銃ですね」
「そいえば、あなた方が持っている銃、そんな名前でしたわね。集めていらっしゃるの?」
「いえ、たまたま手に入っているだけで……」
「そうでしたか。ところで……ウィンさん?」
「なに?」
「アナタの【烙印】なんだかうすくなっていません?」
うん、自分も気づいていた。
〈グラトニー・プリン〉をたおした後から、少しうすくなっているんだ。
「やっぱりそう思う?」
「ええ、ちょっと見せてくんなまし」
「見せるって?」
ジェニファーさんの左目がまた白く輝いて。
「……〈仮釈放〉と出ていますわ」
「〈仮釈放〉? どういう意味?」
「さぁ……でも今日から三ケ月、〈完治〉の【才花】が使えるようになったみたいですわ」
「……ということは、ケガを治したときに痛みがないってこと?」
「ウィン! よかった! やったわね!」
「……う、うん、ありがとうリリー姉ぇ。でも、喜んでいいのかな?」
「当たり前でしょ! 帰ったらお祝いしましょう!」
「う、うん!」
まだ、死の運命からはのがれられていないけど。
でもこれは、きっと喜んでいいことなんだろうね。
「それはそれとして、オシオキといえばもう一人忘れてましたわね」
感動にひたっていたウィンの肩がはねあがるのが見えた。
どうしたんだ?
「だ、だれのこと……カナ?」
「いえ、わたくしはただ、ミスターフィルの心をふりまわしたおきながら、さっき素知らぬ顔でオシオキに加わっていた方がいたなぁ~と」
すんごい速さでウィンの目が泳いでる。
う~ん、正直ぜんぜん気にしてない。
ほとんど身に覚えがないし。
結局、はっきり伝えていなかった自分が悪いんだし。
でも――。
『私は、男の子の心をふりまわした悪い女です』
と書かれたプレートをかけて、沈んでいる。
「ちょっと、ジェニファーさんこれは流石にやりすぎじゃ――」
「いいの、フィル。ほんとのことだから」
「ウィン……」
「ごめんね、アタシね。本当は〈グリードウォーム〉の中から助けだしてくれた時から――」
「は~い! イチャイチャはそこまでですわ! 町に着きましてよ」
――ユークレースタウン 近郊の集落 ベリリ――
――フィルたちがカルサイトリコへ着いたころ、暴走したエリオットからにげてきたエディとヴィニーは今後の身のふり方を考えていた――
「エディにいちゃん。これからどうすんの?」
「そうだなぁ。故郷にかえるかぁ……」
オレ、エディ=モンテロスはエリオットと別れ、ヴィニーと地面にねそべっていた。
「そうだね……でもよかったの? リーダーだけに全部罪を着せて?」
「おいおい、だったらあのままでよかっていうのかよ!?」
「そうは言っていないけど……」
「あそこでにげていなきゃ、オレたちもお縄になっていたんだぞ!」
いつもそうだ。
ヴィニーのやつは必ずおじけづく。
図体ばかりでかくなりやがって。
結局、兄であるオレがしっかりしなくちゃならねぇ。
「おい! ジジイ! 金が払えねぇってどういうことだ!?」
なんだっ!?
路地裏の方からでけぇ声がしやがった。
「うるせぇな。なんだってんだ」
「なんかもめているみたいだよ。金のトラブルみたいだ」
「どこでも同じようなことやって――おい、ちょっと待てヴェニー、あいつ見て見ろ」
「――あっ! あれはあの時のじいさん!」
オレらにドロボーの片棒を担がせたじいさんは、どうやら他でもトラブルを起こしてるみてぇだ。
「ちょっと見に行くぞ」
「えぇ! やめようよ! 兄ちゃん!」
物カゲから現場をのぞいてみる。
するとじいさん、胸ぐらをつかまれていて。
「オレらに盗人みてぇなこととやらせやがって! それで金がねぇってどういうこった!」
テメぇらもかよ。
あいつらは確か、B級のジェイク=ナヴァロのチームだったな。
「あなた方にお渡しするはずだった5万ノルは、すでに別の方にお渡ししましてね」
別の方って、たぶん、リーダーのことだろうな。
「その方が私の依頼をすべて達成してくれました。ですからあなた方は――」
「ふざけんなっ!」
BONK!
うわ……あいつら手加減なくなぐりやった。
じいさん、死んじまったんじゃねぇか?
ククク……。
なんだ?
じいさんの体が――はずんだ!?
「……やれやれ、せっかく私が、キサマら無能なゴロツキの利用価値を見出してやったのに」
「な、なんだと!?」
むくりと起き上がるじいさん。
様子が明らかにおかしい。
「もう、メンドウだ」
BOKM! BAKI! MEKI!
な、なんだ! ありゃ!
急に、じいさんの体が大きくなって!
「にいちゃん! あれ!」
「なんじゃありゃ……」
もうじいさんじゃなくなっていた。
あれはモンスター!!
「ば、ばけもの!」
「うわぁあああああああああああああああ!」
ZUSH!! ZOSCH! ZSS!
「ぐあっ!」
「ぎゃ!!」
「や、やめ――」
「――…………」
ZAK! ZAM!!
PFSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSH……。
ウソだろ!?
おい、B級のやつらをあっという間になぶり殺して!
「や、やばいよ! 兄ちゃん! すぐにずらかろうっ!」
「お、おう。そうだな――」
KRLANG――。
ゲッ!? なんでこんなところに石が!?
『ン? ソコニイルノハダレデスカナ?』
ここまで読んで頂いた読者の皆様、読んでくださって誠にありがとうございます(人''▽`)
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「暗殺少女を『護』るたった一つの方法」
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「あのヒマワリの境界で、君と交わした『契約』はまだ有効ですか?
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