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ぼくは保護という大義名分を掲げ、道端に落ちていた女の子を拾うことにした  作者: ジェロニモ


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英語で書かれたチャットを翻訳にかけたら煽りで顔を真っ赤にすることはよくあること


 バイトから帰ってきたら、幸福はコタツに寝っ転がってペラペラと本をめくっていた。なんの漫画を読んでいるのかとタイトルを確認する、信じ難いことにそれは英語の辞書だった。


 2度見3度見しても彼女の手の中にあるのは僕が中学から使い込んだ年季ものの英和辞典である。表紙を偽造したエロ本でもなさそうだ。

 

 それに、見るだけでポツポツと鳥肌が立って拒否反応を起こ始めたのでアレは本物の英和辞典に違いない。


「おまえ気でも触れたのか…?」

「あのさ、急に失礼すぎない?」

「いや、英語の辞書なんて読んでるからどうしたのかと思って」


 それ、読むと発熱、頭痛、吐き気に襲われる禁書みたいなもんだぞ。


「英語ができるとゲームで煽りとか、バカにされてるかとかわかるようになるでしょ。自分の煽りのバリエーションが増えて、より多くの人たちを煽れるようになるし。なにより言葉がわからないからってチャットファイトで負けたくないしね」


 なぜわざわざ理解できない煽り言葉を自分から理解できるようになってイライラしにいくのかは甚だ疑問である。どうやらしょうもない理由のために英語を勉強しようとしていることはわかった。


 しかし目的があると、学習スピードも違うのだろうか。ネットを使うようになってから、幸福は水を得た魚のようにゲームやらなにやらの知識を蓄え始めた。知識が一部のジャンルに偏りすぎな気はするけども、もうすでに僕には何を言っているかわからないレベルに達している。


 煽り合いで勝つためとかいうしょうもない理由のために、英語もするすると習得してしまうかもしれない。そう思ってしまった。

 

 目的はしょうもないが、より高みを目指すという面では、向上心があると言えなくもない。


 ……どっちかっていうか高みというか、アンダーグラウンドらへんに向かってそうではあるけども。


「良さげな英語を覚えられる本とかあったら買っといてよ」

「適当に買ってくるよ」

「簡単そうなやつからで頼みやす」

「はいよ」


 まあ、たとえしょうもなくとも、悪いことではないだろう。


 少なくとも、それらをなにに使うかもわからないままなんとなく惰性で勉強している僕より、こいつの方が確実に、本当の意味で役に立つ勉強をしてる。……やっぱり目的はちょっとアレだけど。



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