36話① ジンゲル家
今回から漢字の多くにルビを振ることにしました。読みやすくなったかな? 過去作品もルビを振る事にします。
…とある教団本部にて
教団幹部①「日本と戦って一方的に負けて帰ってきたとはいったい何事であるか!?」
教団幹部②「負けただけではなくあの『エトロ・ハガール』が作った甲冑を無くし、我々の団員に救われるとは…情けない」
教団幹部③「きさまは我々の足を引っ張ってばかりだな!」
教団幹部④「この役立たずが!!」
教団幹部達に膝まづいている英雄ビスカル
英雄ビスカル「…」(黙り込んでいる)
そして英雄ビスカルを高い位置から見ている最高教団幹部が
最高教団幹部「…ラジュー・ヤラマーンド・ビスカル、次の命をやろう」
英雄ビスカル「…」
最高教団幹部「剣が果てでもニホンの者を捉えてこい」
英雄ビスカル「ッ!? は、果てても…?!」
ビスカルに与えられた命令、それはその名の通り自分の剣が無くなってでも日本人(自衛隊)を捕まえる命令であるが、これは騎士や剣士などのような剣に命をかけている者にとっては「死んでこい」の意味にもなるからだ
最高教団幹部「そうだ、果ててもだ。これは絶対な命だ。失敗は許されない」
ビスカルは体が震え絶望した顔になり、震えた声で
英雄ビスカル「…ハ……ハッ………」
最高教団幹部「分かったのなら今すぐ行け」
そしてビスカルは教団本部から零地達のいる場所へと飛んで向かった
最高教団幹部「…奴の代わりになる者を探せ」
教団幹部①「ハッ!」
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前回零地達は米軍から送られてきた海兵隊のマイルズを部隊へ編入し、次の補給ができるダナトの村『アデュル村』へと向かい村の前へと到着して、小隊は住民を怖がらせてしまうかもしれない事を考え森の中で待機する事に。今回零地はダナトの村ということでダナトの言うことを聞くことにし、零地.龍馬.ダナトの3人でアデュル村へと入っていた…
(零地達は拳銃以外は武装無し)
龍馬「…本当に俺とお前だけで大丈夫か?」
零地「心配し過ぎだ。 多分………大丈夫だ」
龍馬「おい! 今の間は何だ!?」
ダナト「大丈夫だよ。何かあったら俺がどうにかするし」
零地「…だとよ。お前より頼もしいな!」(笑)
龍馬「分かったよ…」
村に入り歩きでダナトの家へと向かう
ダナト「再確認だけどまずは俺の家に行ってから村長に会ったうから」
龍馬「おkおk」
零地「大丈夫だ」
もう一度再確認をし、ダナトの家の敷地に入ると牧場が広がっており、零地達はビックリした様子で
零地「おいダナト!! お前の家は『魔獣』を飼育しているのか!?」
龍馬「鳥、狼、ハチ、サソリ、スライム、ドラゴン…それ以外にもたくさんいるな。どれも巨体だ…」(唖然)
ダナト「うちは牛とか鶏とかも飼育してるけど、魔獣から取れる物は高く売れるからね。奥に行けばもっといる」
零地「…スゲェとしか言えないな」
龍馬「だよな…」
そしてダナトの家の前に到着すると家の角からクワを持った40前半の男性(種族 人間)が出てきて、こちらを見るなり驚いた様子でダナトの前まで来て
??「ダナト! 帰って来てたのか!!」
ダナト「ただいま父さん。丁度ここを通りかかったんだ」
??「そうだったか! いつまで家にいるんだ?」
ダナト「えーっと…2日、3日かな?」
??「それしか居ないのか?! もっと長くだな…」
零地「…あの〜」
??「ん? こっちの人達は?」
ダナト「ニホンの人達だよ。今色々あって一緒にいるんだ。仲間だよ」
零地「零地です」
龍馬「龍馬です」
フェレード「ダナトの父のフェレードだ」
握手をすると丁度家の中からダナトの母親(種族 人間)らしき金髪で若干肌焼けしたパリ美人のような人がダナトに走ってきて抱きつき
ダナト母?「ダナト、帰って来てたのね…!」
ダナト「ああ〜…母さんただいま」
ダナト母?「何も言わずに突然家を出たから心配してたのよ〜?」
ダナト「ごめんよ母さん…」
フェレード「『サレン』、こっちの軍人はダナトの仲間だそうだ」
サレン「サレンです〜! ダナトがお世話に…!」
零地「い、いえ…こちらも色々お世話に…」(汗)
サレン「そうだ! 『レーゼスト』も呼ばないと…!」
ダナト「母さん…」(汗)
ダナトのお母さんが大声でレーゼストと言う人を呼びながら牧場へ走っていく
ダナト「はぁ…母さん…」
ヒソヒソ話
龍馬「…なぁ、ダナトの母親、凄く美人じゃないか?」
零地「意外ではあるな」
フェレード「心配かけたんだぞ〜? ダナト」
ダナト「ごめんって」
零地「あのすみません。村の外で別の仲間が待っているのですが、呼んでも良いですか?」
フェレード「村の外に? じゃあすぐ連れて来た方が良い。この村の外は凶暴な野生の魔獣が多くてな」
零地「ならすぐ呼んだ方が良いな」
ダナト「そうそう父さん、村長にも顔合わせしなくちゃいけないんだけど…」
フェレード「別にしなくていい。 俺から言っとく」
ダナト「あっ、う、うん…」(汗)
零地はすぐに浜津陸曹長達に無線で伝えるとダナトのお母さんが若い男性を連れて来て、その男性がダナトに詰め寄り
??「ダナトー!! 突然家を出ていくんじゃねぇーーー!!!」
ダナト「ごめんって…」(汗)
零地「…ダナト、この人がレーゼスト…?」
ダナト「そう、俺の兄。名前はレーゼスト」
レーゼスト「あっ? 客人か?」
フェレード「ニホンの軍人らしい。レイジとリョウマと言うみたいだ」
レーゼスト「遠路遥々ご苦労なこった」
フェレード「じゃあ村長に説明してこよう」
すると龍馬がダナトの父に
龍馬「すみませんが、自分も一緒に行って良いですか?」
フェレード「何故だ?」
龍馬「村長に直接話さなくてはいけないのがありまして」
フェレード「なら着いてこい」
そしてダナトの父親は村長へ報告しに行き、村の外で待機していた浜津陸曹長達がダナトの家の前まで来て、自己紹介をすると龍馬達が村長の所から戻ってくる
龍馬「おっ? 皆来てたか。村長にはヘリが来ることを伝えておいたぞ」
零地「了承してくれたんだろ?」
龍馬「もちろん」
零地「なら浜津、ひゅうがに連絡しとけ」
浜津陸曹長「了解」
零地「他に暇がある奴は周囲警戒か行き先方向を調べてこい」
五十嵐一曹「了解」
高畠 澪二曹「了解」
エレー「へ〜、ここがダナトのお家なんだ〜」
ランデス「魔獣牧場なんて初めて見た!」
大魔術師レミア「魔獣の肉や卵は高級品だと聞く」
マティナ「…兄がいるんだな」
ダナト「兄さんだけじゃないよ。街の方に姉さんともう1人の兄さんが住んでいるんだ」
エレー「ダナトって4人兄弟…?」
ダナト「うん。俺は4番目」
マティナ「…」(なんか寂しそう)
マティナの様子を見てエレーが
エレー「い、いいな〜ダナトは。私は上も下もいないしな〜。私はずっとマティナの面倒見てただけだしな〜」
マティナ「ちょっ!? それは逆ですよ!! 迷子になった時や勉強の時、分からないところを教えてたのは私じゃないですか!!?」
エレー「うっ…! マ、マティナだって泣き虫で私が慰めてるでしょ!!」
マティナ「ナッ…!?」
ダナト「どちらもどっこいどっこいでしょ」
大魔術師レミア「思ったより子供だよね」
ランデス「喧嘩は良くないですよー!」
ヴァルダ「…」
エレー達の様子を、ダナトの父.母.兄は零地達を見て
サレン「選り取りみどりね〜」
レーゼスト「レミアもいるぞ? あんな人を味方につけれるなんて凄いなニホンは」
フェレード《(ダナト父)》「…あの羽人、ダーガ族か?」(ボソッ)
そして浜津陸曹長が車両についている強力な無線機で護衛艦ひゅうがに連絡をする。そうするとダナトの父親がこんな事を聞いてきた
フェレード「ニホン隊がこの村まで来たって事は、ついに本格的に戦争が始まったんだな?」
零地「…そう思うのも無理はないか」
龍馬「始まってません。私達は調査隊で、敵地での調査を主にやってるんですよ」
フェレード「…軍人ってのはこき使われて大変だな」
龍馬「仕事ですからね」(苦笑い)
零地「けれどよく他国の軍人を向かい入れましたね」
フェレード「ダナトと一緒にいたからな」
サレン「あの子と一緒にいたのなら信用できるのよ」
零地「は、はあ…(そんなんで良いのか…?)」
龍馬「(母親の勘って奴か)」
するとダナトが帰ってきたとの噂を聞きつけた村の人達が段々と集まってきて
男性村人「帰ってきたのかダナト!」
男性村人「いくら成人になったからってまだまだガキだろ!」
女性村人「皆で心配してたのよ?」
女性村人「帰ってきて良かったわ〜!」
零地「家族だけじゃなくて村の全員からも心配されてたんだな」(笑)
龍馬「人気者だな〜」
ダナト「こんなに人気あったけっかな〜?」
そして零地達は途中でやってきた村長に使われていない土地まで誘導されそこでテントなどをはり、龍馬は村の人達にこの先のルートなどを聞いて周り、気付けば夜になる
平塚 栗落花二等陸曹「…それにしてもここの村の人達は皆心優しいんですね」
浜津陸曹長「フェールゲルグの田舎は全体的に心優しいとは聞きますが…」
博間多三曹「ダナトのおかげでもあるとは思いますが」
零地「まっ、村の人達には感謝しないとな」
モバンダ陸曹「ダナトって有名人なんだな」
そうすると情報収集をしていた龍馬が着いてきたダナト家族と一緒に戻って来て
龍馬「今戻ったぞ」
零地「おつかれさん。…ダナトのお父さん方、どうしました?」
サレン「本当に申し訳ございませ〜ん。泊まれる所を用意出来なくて〜」(ペコペコ)
零地「あっ、いえ…そこまでしなくても…」(汗)
サレン「ダナトがお世話になっていると言うのに〜」
零地「大丈夫ですよ…」(汗)
フェレード「所でダナトは?」
零地「ダナトはあっちに」
龍馬「ダナト! 来い!」
新米新二士にテーブルゲームを教えてもらっているエレー達から抜けてダナトがこっちに来て
ダナト「なに?」
フェレード「聞きたい事がある」
レーゼスト「どうしていきなり出て行った?」
ダナト「えっ?!」
零地「あ〜気になるな」
モバンダ陸曹「教えてくれよ」
龍馬「確かに、剣の腕はいまいちなのにな」
ダナト「サラッと酷い事言わないで?」
フェレード「そうだぞダナト? お前の得意分野じゃない」
レーゼスト「あの時突然「俺行ってくる!」って言って倉庫にあった安い剣をもって出ていきやがって」
ダナト「え、えぇ…」
サレン「荷物も殆ど何も持って行かなかったし〜」
ダナト「えっと…」
博間多三曹「ほぼ何も持っていかず…男だな」
平塚 栗落花二等陸曹「(駆け落ちみたいな事したんだな〜)」
レーゼスト「何で仕事をほったらかしてまで出て行ったんだ…?」
ダナト「い、言わなきゃダメ?」
レーゼスト「ダメだ」
ダナト「そ、それは…」
皆に詰め寄られ黙り込んでしまう。するとダナトはとある方向に視線を通す
ダナト「…」
レーゼスト「黙ってないで言え!」
零地「?」
零地がダナトの見ている視線の先を見るとそこにいるのはマティナであった。
零地は察した。ダナトが家族を置いて出て行った理由はそういう理由であると…
零地「………男だなぁ〜」(驚愕)
そして零地に続いて皆もダナトの視線の先を見て全員が察する
龍馬「 ・ ・ ・ えっ? 嘘だろ? 俺より男じゃねぇかよ」
モバンダ陸曹「やるなぁ…」
博間多三曹「本当に男だ」
平塚 栗落花二等陸曹「(いや駆け落ちに近かった…!)」
レーゼスト「…おいおいおいおい!! お前なぁ〜!」(笑)
フェレード「息子がいつの間に立派な大人に…」(感動)
サレン「こんなに立派な子になって…」(感動)
ダナト「/////…」(恥ずかしい)
零地「ダナト…お前マティナの事好きだったんだな…?」ヨソウシテナカッタ
モバンダ陸曹「好きな人と一緒になる為に家を出たのか…」オトコマエダ
龍馬「ダナトと同じ歳だった頃はゲームばかりで度胸なんてなかったな…」マケタヨ…
零地「ダナトと同じ歳の頃は消極的だったな〜」
龍馬「俺はゲーム三昧だったな〜」
博間多三曹「私もその頃の歳はヤンチャしてました」
平塚 栗落花二等陸曹「引きこもり不登校(家の家事はやってた)だったな〜」ツラ亻カコヤ…
サレン「応援するわよダナト…!」
フェレード「相手がエルフだろうが獣人だろうが魔人だろうが応援するぞ!」
レーゼスト「弟に抜かされるとは思ってもいなかったな〜」
ダナト「ここまで言われるとは…」
零地「まぁけど応援するよ」
ダナト「ありがと…」
そして夜遅くになり、皆が寝付いている間、零地.龍馬.モバンダ陸曹の3人は集まって
龍馬「しかしまぁ〜ダナトは度胸があるな」
モバンダ陸曹「好きになった人と一緒に居たいがために家を出たんだからな。見た目以上に大した奴だ」
零地「ダナトには見習はなきゃダメだな。なっ? 龍馬??。ドラゴンなんかにビビんな」(笑)
龍馬「うるせぇ」(ピキッ)
モバンダ陸曹「…しかし15でか〜。中学2.3年生頃か。俺と零地は高校の頃に会ったが、中学の頃はどうだったんだ?」
龍馬「中学時代か。俺は零地と会った頃だな。さっき零地が言ってたが、消極的だったんだよ」(笑)
零地「中1の時に会ったんだよな」
龍馬「『環奈』のおかげでな」
零地「…懐かしいな」
龍馬「…」
一瞬で重たくなったが、モバンダが慣れた様子で
モバンダ陸曹「…なぁ覚えてるか? 環奈が俺らの教官を投げ飛ばしたのを」(笑)
龍馬「あったな〜そんなこと〜」
零地「高等工科学校1の鬼教官って言われた人が民間人の環奈に1発で投げ飛ばされたアレは衝撃的だったな〜。あの時「逆らわない様にしないと」って思ったからな俺?」(笑)
モバンダ陸曹「教官が「お前の彼女は何者だ…?!」って思わず言ってたからな〜」(笑)
龍馬「年齢差も体格差もあったのにどうやって勝ったんだろうな…? 」
零地「しかも1回だけじゃなくて何回も負けてたな」(笑)
モバンダ陸曹「そりゃあ環奈の2つ名は『赤目の狩人』だからな」(笑)
龍馬「えっ? 環奈の2つ名って『白髪の通り魔』じゃないのか?」
零地「おい龍馬、お前自衛隊の情報屋って言われてる癖に知らねぇのか? 環奈の異名はたくさんあるんだぞ?」
龍馬「えっ? そうだったのか??」
モバンダ陸曹「情報屋の名な泣くな」
龍馬「不覚」
零地「…話を戻すが、ダナトは大人だ。協力してやんねぇとな」
モバンダ陸曹「けどマティナは難しそうだが」
龍馬「ダナトってマティナみたいな気が強い女性がタイプなのかな?」
零地「さぁな?」
すると零地達の後ろからコップを持ったエレー立っていて
エレー「なんの話をしているんですか?」
零地「おおおお!!?」
龍馬「ギャッハ!!?」
モバンダ陸曹「ウェーー!!?」(驚き方が独特)
零地「エレー! 驚かせるんじゃない!」
エレー「えっ!?あの…驚かせるつもりはなかったんですけど…」(汗)
零地「そ、そうか…(汗)。…と、所でこんな夜中に起きていたのか?」
エレー「えぇ、喉が渇いたので水を飲みに行っていたんです」
零地「そうだったか…いやぁ〜ビックリした」
龍馬「幽霊かと思ったぞ?」
モバンダ陸曹「気配とかを消せるなんてな…きさまやるな」
エレー「アハハ…」(苦笑い)
地面に座り…(エレーが)
エレー「所でさっきはなんの話をしてたんですか?」
零地「えっと…勝手に言っちゃダメだよな?」
龍馬「エレーになら…いいんじゃないか?」
モバンダ陸曹「エレーの側近だしな」
零地「まぁ…エレーは約束を守るタイプだし、大丈夫か」
エレー「側近? マティナの事ですか?」
零地「あぁそうが…さっきダナトがなんで剣の使いたかがいまいちなのに家を出たか家族と一緒に聞いたんだが…」
エレー「えっ!? 気になります! 続きを早く…!」
零地「マティナを…好きになったかららしい…」
これを聞いたエレーはその場で飛び跳ね
エレー「えええ!!? ダナトはマティナの事好きだったんですか!?」
零地「らしいんだ」
モバンダ陸曹「意外だよな〜」
龍馬「エレーはどう思う?」
エレー「もちろん応援します! マティナになにしても許しちゃいます!」
零地「いやダメだろ!!」
龍馬「色んな意味でダメだ!」
モバンダ陸曹「分かって言ってんのかそれ?」
エレー「もう子供作ってもらっても構いません!」
龍馬「それはもう完全にアウトだ」
零地「エレー、少しは抵抗感を感じろ」
エレー「それぐらい嬉しいんです!」
零地「えぇ…?」(困惑)
龍馬「自分の側近を売るスタイルか〜」
モバンダ陸曹「大丈夫か? 若干感覚がズレてないか?」
エレー「とにかく! 私からも全力で協力します!」
零地「まぁ、皆で助けてやるか」
龍馬「目立たない様にな」
モバンダ陸曹「面白くなりそうだな」(笑)
その後も4人で楽しく盛り上がりながら話し合い、できるだけ干渉干渉せず、ダナトを見守ることにし、なにかあった時だけ手を貸すことに決めた。
そんな零地達はダナトの話で盛り上がっている間、刻一刻とアデュル村に近付く1万を越す軍勢が迫っており、そしてもう1人、別の方からも前に攻撃してきた英雄ビスカルが羽を生やして猛スピードで零地達の所へ向かっていた…