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花嫁候補たち

久しぶりー!

「こちらが、ジョセフ領のマリアンヌ様でございます」

「うっふ〜ん、よろしくお願い致しまぁす」

「で、こちらが東風領のチェン様で……」

「よ、よろしくお願い申し上げます」

「で、こちらがグリプス領のハ・マーン様で……」

「……俗物は嫌いだ」

「で、こちらが帝都の娼館から推薦された、エミー様でございます」

「あら、案外いい男じゃない?」


 バイゼルに紹介された嫁候補たち。

 ひーふーみー……


 四人か……


 マリアンヌはいかにも貴族らしい佇まい。

 体型はもちのろんで、抜群のタップンタップンさ。

 この人を嫁にすりゃ、間違いなく貴族としての株は上がりそう。

 名前だけね。

 多分、日頃の生活水準は崩したくないだろうから、浪費は激しそうだ。

 そして、この領は食いつぶされる……

 て言うか、香水の匂いがキツイ!


 チェンは、小柄だな。

 すばしっこそう。

 そのくせ、出るとこは出てて、引っ込むとこは引っ込んでる。

 顔は童顔、豊かな黒髪とくれば。

 その趣味の方面からは引く手数多じゃないの?

 気になるのは……


「その背中に背負ってるの、なに?」

「あ、はい! これは父上からの教えで。東風領の生まれであれば、いついかなる時であっても万一に備えよと言うことで……」

「あら嫌だ。貴族というもの、しかも女人が武具を背負うなんて。そんなことは使用人共に任せておけばよろしいのに」


 と、マリアンヌは扇子で口元を隠しながら苦笑い。

 いや、馬鹿にした目付きでチェンを見ている。

 いかにもって感じで、嫌だなぁ、この人。


「我が領地では、男女問わず武芸を嗜むのが習わしなのです」


 チェンは眉をひそめながら、マリアンヌにボソッとした口調で言った。

 だけど彼女は、チェンの言葉に明らかに嫌悪感を滲ませている。

 いやいや、そんな顔は見たくなかったなぁ。


「ふん、俗物如きが。自分の身を守れぬ者が偉そうに講釈をたれるな」


 そこに追撃してくる者が約一名!

 すげー口悪いぞ、この女!

 なんつったっけ?

 ハ・マーンだったっけ?

 場の空気が一瞬にして凍っちまった!


「ぞ、俗物ですって!?」

「俗物に俗物と言って何が悪い? さっきから聞いていれば、自分の身分を自慢したいようだが、ここは最果ての領地。貴様程度の器量でこの過酷な地を生きていけるとでも思っているのか?」

「な、何をぉぉぉ……!」


 すげぇ……!

 マリアンヌがハンカチを咥えた!


「このアルブラム領は、ただでさえ僻地。そこへしゃあしゃあと出世のためだけにやってきたのだしたら大間違いだ。出世どころか、一代限りでこの繁栄は終えるかもしれん。繁栄と衰退。その両方を見届ける覚悟が、貴様にあるのか?」


 ハ・マーンさん、それ言い過ぎ。

 第一、まだ繁栄すらしてねぇし。

 ていうか、マリアンヌに殺気撒き散らしながら詰め寄るのはやめてくんないかな?

 嫌だよ? 俺の花嫁候補同士が喧嘩して、それこそ領地巻き込むような争いごとに発展するキッカケになっちゃうのは。


 なんて考えてる間に仲裁だ。

 一応、身体強化(ステータスアップ)をかけとこう……

 ハ・マーンさんとチェンはちょっと腕が立ちそうだからな。

 準備に越したことはない。

 それにしてもこのバチバチ感……

 女は怖いねぇ……


「はいはいはいはい、そこまでー」


 俺は仕方なしに手を叩きながら、二人の間に入っていった。





 のだが……






「何よ、コノスットコドッコイ! 私だって好き好んでこんな僻地に来たんじゃありませんわよ! ペッペッ!!」


 うわっとと!

 な、なになに!?

 間に入った瞬間に唾かけんの、マジやめて!


「父上が勝手に決めたことなんですのよ! 私、こんなところで一生を無駄にしたくはありません! 帰ります!」


 ハ・マーンさんの口撃に憤慨したのか、マリアンヌは真っ赤な顔で、足をドスドスさせながら去って行った……

 なんだか、嵐のような女性だったな……

 出来れば二度と来て欲しくない気がする。

 あとで塩、撒いておこう。



「クスクス、なぁにぃあの子ブタちゃん。顔真っ赤にして帰ってったわぁ」


 おぉ、傍でひたすら傍観決め込んでた君はエミーだな。

 紫のショートボブに、しなやかな体つき。

 やや目尻の下がった目元にプランとした唇はとてもエロチックだ。

 見た目からして艶やかなのは、唯一の年長者だからか?

 と言っても俺とそう大差ない年齢……

 うん、いい。


 いや、よくない。

 この場の空気を変えないと。

 俺は咳払いを一つしてから、皆に話しかけることにした。


「それでは皆さん。時間も限りがあるので、これより……」

「お待ちください!」


 おいおい!

 なんで俺が先に進めようとしたらいつも止めるんだよ、バイゼルさん!


「バイゼル! なんなんだよ! まだ何かあるのか?」

「えぇ、ぜひ彼女も加えて頂きたいのです」


 とバイゼルがそっと手招きすると、彼の背後から……


「嘘だろ……」


 メイド服のままで佇むユノが現れたではないか。


「ユノ、まさかお前も……」

「乗りかかった玉の輿、最後まで乗っかって、あ、げ、る♡」


 て、口元に指を添えての決めポーズ……


 何故だ。

 この花嫁候補たちからは前途多難の未来しか見えてこない!

ありがとうございました!

また書くと思います。

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