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一時撤退でござる!

休みが終わるので更新ペース落ちたらすいません…

 俺はバイゼルに見送られながら駆け出した!


 目指すは領地の境界線。

 小早川殿たちが帝国軍と戦っているところだ!

 身体強化の効果はまだ続いてる。

 時間にして三〇分はもつからな。

 現状を鑑みると、残りは一〇分程度か?

 トム君が止めなければまだ余裕があったが仕方ない。


 俺は足を早めた!

 周りの景色があっという間に横をすり抜けていく!

 また、帝国軍の後方がボッと光る。

 同時に行く筋もの赤い光が空に広がっていった。

 また攻撃魔法を放ちやがったな!

 でもさっきのヤツとは違う!

 上位系の魔法か?


 狙いは小早川殿たちなんだろうが、あれじゃ範囲が広すぎる!

 前線の兵士もかなり巻き込まれるぞ!

 全く、帝国軍ってのは血も涙もない連中の集まりかよ。

 俺がいた頃は、もちっと優しかったと思うがな。


 ーーと、そこで俺はザーッと足を止めた。


 ちょうど目の前で小早川殿が、それこそ敵の攻撃を受け止めているところだった。

 見れば小早川殿の服からは、ところどころブスブスと煙が上がっている。

 帝国軍に至っては、こんがり焦げて倒れている兵士もいた。

 俺の魔法から漏れてた奴か?

 それとも、圏外にいた奴か?

 どちらにせよ、ダメージは全て防げなかったようだ。

 それにしても酷いもんだね、仲間も巻き込むなんざ。


「ぬ!? 領主殿ではござらんか!?」

「小早川殿、助太刀いたす。おら! 邪魔だ、どけ!」

「は? え? ーーブフォオォォォォォォォ!?」


 俺はそう言って、小早川殿を剣で抑え込んでる兵士の顔面をぶん殴った。

 どっかに転がっていったけど、知ったこっちゃねぇ!

 で、俺はすぐに指先で五芒星の印を切る!


絶対障壁光(アブソリュートレイ)!」


 そして、俺は指先を頭上に上げた。

 印を切って瞬時に練られた魔力が金色の帯となって指先から四方へ放たれる。

 それは俺を中心に星屑の七星と、彼らと戦っていた帝国軍の兵士も包み込むように広がっていった。

 その場にいた者たちは突然のことに手を止め、頭上を見上げている。


 ーー瞬間!


 頭上ではまた、大規模な爆発が起こった!

 衝撃が俺たちを襲い、大地が揺れる!

 絶対障壁光(アブソリュートレイ)が破られることはないと思うが、その衝撃が凄まじ過ぎる!


「くっ……! あいつら! なかなか…….」


 何とか持ち堪えてくれてるな!

 このまま相殺してくれ!


「領主殿!」

「小早川殿! 今の内だ、ここから脱出してくれ!」

「しかし、後続が!」

「小早川殿たちが時間を稼いでくれたおかげで、みんな撤退した! 後は俺たちだけだ!」

「なんと! 分かったでござる! 皆、敵は捨て置け! 退くでござるよ!」


 小早川殿は手際よく他のメンバーに声を掛けて、後方へ下がっていく。

 後は、この攻撃が止んでからだな。

 次撃を放つには時間が掛かるはずだ!

 現に、初撃から五分以上掛かってからこいつが来たからな!

 宮廷魔導師長(マイルズ)は、集団魔法はあまり重要視してなかった。

 そのおかげで練度に甘さが出たのが幸いしたぜ。

 それにしても何て威力だよ!

 こんなもん、まともに食らったら境界線ごと俺たちも消し飛ばされるぞ!

 あ、もしかしてそれが狙いだったり……


 うぉ? あ、足が地面にめり込んだ?


「クソッタレーー!」


 彼らがこの場から離れるだけの時間は確保しないと!

 ここは時間を稼げれば充分なんだからな。

 俺は絶対障壁光(アブソリュートレイ)に注ぐ魔力の量を増やした。

 少しだが、体に掛かる負担が減った。


 よし! これならしばらくは大丈夫だ!


 そうして続いた衝撃は時間にして数十秒程度なんだろうが、思いのほか長く感じたぞ。

 辺りは舞い上がった土煙で視界が悪い。

 だがチャンスだ。

 体良く、小早川殿たちが煙に乗じて離れていくのが見える。

 さすがだな、判断が早い!


 そうこうしてる間に、連携魔法の効果は消え、俺に掛かる衝撃も消えた。

 下がるなら今だな。

 俺も小早川殿たちにならってその場から下がった。



 ……



 ーーやがて土煙が晴れ始めた。


 俺たちと帝国軍はお互いに少し離れた場所で、対峙するように向かい合っている。

 横一列に整列してる星屑の七星たちの前で、俺は帝国軍に向かって口を開いた。


「帝国軍てのは、やたら無理をするんだな? 仲間も巻き込むなんて、あんまりじゃないか?」


 俺がそう言うと、前にいた兵士たちを横に弾き飛ばして、例の隊長が現れた。

 おいおい、満身創痍の兵士もいるんだ。

 気を遣ってやれよな……


「貴様がアルブラム領領主、ジェド・アルブラムか?」


 おぉ、さすが隊長格。

 エラく太くてしゃがれた声だこと。

 多分あれだな、女にはモテないタイプだな。あいつ。


「そうだが?」

「ふ、素行が悪くて我が帝国の宮廷魔導師をクビになったんだってなぁ!」


 と隊長は鼻で笑いやがった。

 ていうか、今そのネタ必要?

 いつの話だよ。


「……ったく、それが何だよ?」

「攻撃魔法も回復魔法も使えねぇくせに女の尻ばっか追いかけ回してた無能だって聞いたぜ、お前!!」


 隊長はそう言って、ゲラゲラ笑い出した。

 何故か、その笑いが帝国軍に伝染していく。

 なんだこれ?

 団体様御一行で俺をけなしに来たのか?

 だとしたら、何て税金の無駄遣い!

 皇帝陛下が怒るぞ。

 あ、今は寝込んでるのか。


「くっ、あの者共め!」


 と小早川殿は腰に下げた剣に手を掛けるが、俺がそれを止めた。


「小早川殿、気にするな。剣から手を離してくれ」

「……これは刀でござる」

「……か、刀から手を離してくれ」


 そう言うと、小早川殿は渋々、刀に伸ばした手を離した。

 そうか、それは剣じゃなくて刀か。

 次は間違えないよ、次はね!


「おい、どうした!? 悔しかったらなんか言い返してみろよ、この腰抜けがーー!!」


 あーもぅ、うるせぇなー、あいつー。

 相手するのも面倒だから、さっさと終わらせよう。

 腹減ったし。


「うるせーぞ、そこのヒゲヅラメタボデブ!」


 俺がそう呼ぶと、隊長は驚いたような顔で周りをキョロキョロしている。

 ていうか、お前しかいねぇだろ。

 そんなリアクション取って、ほら周りが困ってるから!

 見事なまでにデップリしてるくせに。

 鎧の継ぎ目から肉はみ出てんじゃねぇのか?


「ーーぷっ」

「ぶふ……」

「プププ…….」


 見れば、星屑の七星の方々も肩を震わせている。

 なんだ、そんなに面白かったか?


「り、領主、殿! ま、的を射すぎでござ、プププ!」


 はいはい、もういいから。

 締まりが無さすぎじゃん、これじゃ。

 でもまぁ、目的は伝えておかないとね。

 アイツに言うのはかなり不安だけど……

 俺は隊長に向かって、声を張った。


「アルベルト皇子に伝えとけ。俺たちは戦争なんか望んじゃいない! 話し合いを希望するとな!」

「は、話? 何言って…….」

「俺と面と向かって話し合いをする気があるなら、いつでも歓迎するぜ。それまでは…….」


 俺は地面に跪いて両手を置いた。

 そこから魔力を流し込む!


「引きこもらせてもらう」


 キィィィィィンーーと甲高い音が周りに響き……


「グランドウォール!」


 俺が叫ぶと同時に、地面に置いた両手の横から土が盛り上がり、ズドーンと壁が突き出して来た。

 それも十階建ての建物くらいの高さはあるだろう土壁が、境界線に沿ってどんどん連なっていく。


 程なくして、境界線沿いにそびえ立った土壁が領地を取り囲んだ。

 唯一、俺が手を突いている場所を除いては。


「な、な、な、なーー」

「どうだ? 無能な魔導師でも……」


 俺は地面から手を離して立ち上がった。


「これくらいは出来るぜ」


 ビシッと腕組んでドヤ顔してやった!

 ーー決まったな!


「っざけんなー! 弓隊、構えぇぇぇぇぇ!」


 隊長が吠えると、そそくさと弓隊が出てきて弓を構えた。


「どうせ張りぼてだ! こんなふざけた壁、全部ぶち壊してやるぁぁぁぁ! 弓を引け! 放てぇぇぇぇ!」


 隊長の号令で矢が放たれる!

 が、飛距離が伸びず、土壁の頂きに届く前に失速して地面に突き刺さっていく。

 それを目の当たりにして、隊長は歯ぎしりした。


「ぐぬぬぬ…….! だったら、あの野郎だ! 弓隊、領主を狙え!」

「おぉ、怖い怖い。じゃ、この辺でお暇させてもらうぜー」

「うるせぇ! 逃げんな! 弓隊、放てぇぇぇぇぇ!!」


 そして俺に向けて矢が放たれるが、俺はその場から一歩引いて土壁で間をサッサと塞いだ。

 同じように土壁が盛り上がり、俺がいた場所を塞ぐ。

 壁の向こうでカンカンと矢が弾かれる音が聞こえた。


「ふぅ、これで時間を稼げるな」


 俺は体から力が抜けて行くのを感じると、その場に尻餅をつきへたり込んでしまった。


「領主殿!?」


 俺の様子に、慌てて小早川殿が声を掛けてきた。


「あー、あははー。大丈夫大丈夫。思ってた以上に魔力を使っただけだよ」


 まさか、特大の防御魔法を二つも使うとは思ってなかったからなぁ。

 トドメのグランドウォールは、正直効いたなぁ。

 小早川殿は、体に力の入らない俺を引っ張り上げ、自分の肩に俺の腕を回して支えてくれた。

 そこで、俺は初めて彼らの顔をじっくり見ることができた。

 彼らがいなかったら、今頃は追いかけ回されながらの撤退だっただろうなぁ。

 きっと犠牲者も出たに違いない。

 彼ら失くして、今回の作戦は成功しなかった。

 俺は七人に頭を下げた。


「『星屑の七星』のみんな、ありがとう。お陰でみんなを逃がすことが出来たよ」

「領主殿!」

「顔を上げてください!」


 俺は下を向いたまま、口を開いた。


「本当は俺一人で時間を稼ぐつもりだったんだ。でも、みんなが来てくれた。すげー助かったよ。感謝してる!」


 そう言うと、どよめきが走った。


「ひ、一人で?」

「んな無茶な!」

「死ぬつもりかよ、バカな領主だ」


 そうだなー、そうだよなー。

 バカだったよ、俺は。

 でも、でもな。


「でも、みんなが来てくれたから助かったよ。正直、俺一人じゃどうなってたことか。本当に感謝してる!」


 俺はもう一度、七人に頭を下げた。


「領主殿……」

「さぁ、帰ろう。ここも崩されるのは時間の問題だ。それまでに街の方の護りを強化しないと」


 そして、俺たちはその場から撤退した。


ここまでお読み下さり、ありがとうございます!

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