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その皇子様は三番目

皇子様の名前は「ロマサガ」のキャラから引用。

カッコよくないですか?ロマサガのキャラ!

「さて、では気を取り直して。もう一度じっくりと話しましょうか」


 そう言って、第三皇子ユリシーズ・フォン・ナザールは俺たちと対面するように腰を下ろした。

 あぁ、初めに断っておくが。

 場所は変えた。執務室だ。

 応接室だと、例の取り巻き共(うるさい貴族たち)が口を挟んできそうだったし、ゆっくり話も出来ない。

 こっちは俺とバイゼル。

 向こうは皇子とその側近一名。


 執務室に入ると、例のごとくトム君とアネッサがイチャイチャベタベタしていた。

 と言ってもアネッサが一方的なんだが。

 トム君もまんざらでもなさそうだったな。

 この一大事に女とうつつを抜かすとかは、見損なったよトム君。

 お二人には丁重に移動して頂き、俺たちは執務室のソファに腰を下ろした。

 この部屋には現在、アルブラム領と帝国の正式な交渉人のみが存在する。


「こう、皇族の方を目の前にすると、緊張しますな」

「バイゼル翁、お気になさらず。我らはこの領地の未来を考えるためにこの場にいるのです。遠慮は無用ですよ」


 おいおい、マジかよ皇子様。

 その発言、聞こえによってはイーブンと捉えるぜ。


「バイゼル、ここは腹をくくれ。それにチャンスだ。さっきの連中じゃ全くお話にならないからな」

「……そうですな。では、ユリシーズ様。アルブラム領の条件を一通り揃えております。こちらへお目通しを」


 バイゼルは一枚の紙をテーブルの上に置いた。

 それを静かに手に取り、皇子は目を走らせた。


「ほう、これは……」


 そして片眉を釣り上げる……


「これは面白い」


 ユリシーズ皇子はそう言って、紙に走らせた視線を、一度こちらへ向けた。

 その迫力に圧倒され、俺の全身を悪寒が突き抜けた!

 何だよ、この迫力は……

 いやいや、目だけでこの圧力とは……

 皇族ってのは、どいつもこうなのか?


「迷宮の借用料は、確かに相場よりも高いですね。いや、高すぎる。しかし、それ以外の費用が掛からないというのは、はっきり申し上げて魅力的です」


 と微笑みながら、皇子は紙を机の上に静かに置いた。


「ご納得……頂けるでしょうか?」


 バイゼルはゴクリと唾を飲み込んだ。


「他の者たちが口走っていましたが、曲がりなりにも皇帝陛下の命を受けてこの場にいます。納得するかどうかは、あなた方の言い分がそれなりの理由であると判断した時です。ですので聞かせて下さい。あなた方の話を」


 バイゼルは皇子の言葉を聞いて、俺に目配せをしてきた。

 俺は小さく頷いた。


「全ては民のためです」


 俺がそう口を開くと、皇子の目が少しだけ大きくなった。


「そちらの掲示する条件は、確かに以前からのものでしょう。しかし、それは帝都に程近く、それでいて肥沃な土地がある領地に限って言えること。そんなところは、迷宮の一つや二つ、帝国に譲渡したところで、収入が減るわけでもないでしょう。ですが、ここは辺境です。それも最果てだ。言うなれば貧乏なんです。領民に仕事を斡旋したくても、仕事そのものがない。仕事がなければ、民は領地の外へ仕事を求めるでしょう。そしてこの地を去る。若ければ若いほど。それが繰り返された結果、この地から若者は消え、残されたのは老人や行く宛のないならず者に罪人たちだ」


 皇子は俺から視線を晒さず、黙って聞いている。

 俺はその雰囲気に飲まれまいと、唾をゴクリと飲み込んだ。


「領地に仕事があれば、民の生活は潤い、豊かになります。そうすれば領地に税金が入り、領地そのものが豊かになっていく。もちろん、帝国も安定した収入が得られる。もし、迷宮が帝国の管理下になってしまったら、領地は負担が増すだけで収入は安定しなくなる。領民の不満も増え、潤うはずが荒む一方。それが分かっているからこそ、迷宮の管理は我々に一任させて欲しいのです」

「ふむ……」


 皇子は顎に指を沿わせると、じっと考え込んだ。

 俺たちの提案は確かに前代未聞だ。

 前例がないからな。

 けど、だからこそ新しい視点が必要なんだ。

 辺境の領地なんて、明日どころか、今日の生活がやっとって言うのが正直なところ。

 特にうちみたいな最果ての地なんて、払う金どころか、今から食う飯だって危うかったんだ。

 迷宮の管理を勝ち取れば、間違いなくアルブラム領は潤う!


 俺はそう信じている!


「成る程……」


 しばらくして、皇子は顎から指を離し、膝の上で両手を組んだ。


「面白い、非常に面白い!」


 面白い?

 その一言に俺とバイゼルは目をパチクリ瞬させた。


「「!?」」

「未だかつて、そんな大胆なことを言い出した領主がいただろうか! なぁ、カーチス!」


 皇子はキラキラした笑顔で、一歩後ろで立っている仏頂面の男にそう言った。

 いや、本当にキラキラしてるんだよ。笑顔が。

 話し掛けられたカーチスって奴は、仏頂面は変わらず、小さく頷いている。


「いや、いいね! その案、乗った!」

「ほら見ろ、バイゼル。やっぱダメじゃん。いくら皇子様でも乗ったって!」

「い、いや、ご当主!」

「乗った、って、ねぇ、え、え?」


 あれ?

 皇子様、今なんておっしゃった?


「ご当主。お聞き間違いなさるな! 皇子様は乗ったとおっしゃっていますぞ!」

「乗った、乗った? のったはったのった? え? ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」


「ジェド。君からの提案は私が責任を持って陛下に通すようにしよう。安心したまえ、必ず吉報を知らせると約束する!」


 皇子は立ち上がり、俺の前に手を差し出して来た。

 俺も思わず立ち上がってその手を握り返す。

 強く、力を込めて……!


 な、なんだか怖いくらいにトントン拍子で行ってるけど……


 これは夢か現実か?

 だ、だけど取り敢えずこれで……

 これで、みんなが食いっぱぐれなくて良くなるぞ!


ここまでお読みくださり、ありがとうございます!


これからもどうぞ、よろしくお願い致します!


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