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辺境だからって舐めんじゃねぇ!

すいません、運営方法は適当なんです。

「で、具体的にどうするんだ?」


 屋敷の執務室では、俺とバイゼル、トム君が丸机を囲んで顔を向かい合わせている。

 トム君の傍には例の女神様がいるんだが……


「ダーリン、早く私とイイコトしましょ?」


 とアネッサが身体をクネクネさせながらトム君に纏わり付いている。

 ていうか、大事な話なんだからどっか別なとこでやってくんねぇかな……

 なんならこの屋敷の片隅で。

 わざわざ、ど真ん中の執務室でイチャイチャされても目障りなんだよ。


 因みに、背中の羽根はちゃんと仕舞えるらしい。


 どこに仕舞うのかは敢えて聞かなかったけどね。

 でも、これで彼女が天神族だとは分からない。

 見た感じ、ただのフシダラな女になった。


「トム君、悪いがその淫欲フシダラゴスロリ天神族を部屋から放り出してくれるかな? ついでにトム君もゲッダウトだ」

「兄貴、彼女はゴスロリじゃねぇだろ?」

「話の論点が違います、ご当主。彼女は天神族でも強大な力を持った……」

「余計な御託はいい! 今は迷宮のことを先に決めないといけないだろ!」


 額に青筋浮かべて俺が叫ぶと、トム君はアネッサに目配せして、執務室のソファに座らせた。

 ほんと、トム君には従順なんだから全く……


 言い忘れていたが、彼女の格好は余りにも目立ちすぎるため、屋敷のメイドさんが私服を借してくれていた。

 まぁ、あんなド派手なビキニアーマーなんて着てれば、嫌でも目を引くわな。

 ところが、借りたまでは良かったんだが……

 借りたその服がたまたま黒いワンピースに白いエプロンだったんだが、それがいけなかった。

 アネッサは女神らしく、出るとこは出て凹むとこは凹んでる、ボンキュッボンなのだ。

 町ですれ違えば確実に路地裏に連れ込まれて揉みくちゃにされること、この上ない。

 そんな歩く色欲の象徴みたいなのがメイド服なんて着てみろ。


 完全にプレイと間違われるんじゃねぇのか……?


 つーか、そうとしか見えん!


「アネッサ……、頼むから大人しくしとけよ……」

「ダーリン♡ ちゃんと待てるから大丈夫! チュッ!」


 とトム君に投げキッス…….

 トム君はおデコに指を当ててため息を吐いている。

 まぁ、あれだな。

 心労は察するよ。

 だが、今はその時ではない。

 我々の使命を果たさなければ!


「ていうかトム君。君は部外者だ。アネッサを連れて出て行きたまえよ」

「は? 何言ってんだよ兄貴。俺と兄貴の仲じゃねぇか。それとも何か? 俺は兄貴の良き友ではねぇってのか?」


 トム君はしっかりとバイゼルの横でふんぞり返ってしまった。

 て居座るんかーい。


「それに、俺は爺さんの話に興味があるんだ」

「ホッホ、トム様。こんな耄碌ジジイの何にご興味が?」

「爺さんの生きてきた人生全てに、だな!」


 う、何か変な構図が頭の中に……

 裸のトム君に変なメガネ掛けたバイゼルとムチを振るうアネッサだと!?

 そういや、トム君は迷宮から出たらバイゼルに弟子入りするとか言ってたな?

 あれは本気だったのか?


「兄貴、何かへんな想像してるだろ?」

「え、あ、あぁ? いやいや、何も!」


 何気に鋭い……


「まぁまぁ、ご当主。トム様も迷宮のことに絡まれてしまったのです。まして、アネッサがあの状態ですから、ここはトム様にも聞いて頂きましょう」

「そ、そうか……、で、バイゼル。お前が考えた具体的提案てのは、どんなのだ?」

「ご説明しましょう!」


 バイゼルの具体的提案てのは、こういうことだった。


 まず、帝国にアルブラム領で迷宮が発見されたらしいって噂をそれとなーく伝える。

 迷宮があると聞けば、帝国はこぞって調査に乗り出すはずというのがバイゼルの考えだ。

 なんせ、金になるからな。

 そして、迷宮があることを確認したら、領主との話し合いになる。

 話し合いの中身ってのは、そのほとんどが迷宮の管理についてだ。

 大抵は帝国が財政を潤すための、帝国目線な話し合いになる。

 どんだけ利潤を満たすか、しか考えてないってことか。

 帝国は、税金をふんだくりたいだけだからな。

 自分たちの懐事情を温めるために、民衆に重い税金を課すような連中だ。

 多分、アルバロン領(うち)の取り分なんて大した額じゃないだろう。

 トム君は目を瞬いた。


「その迷宮の管理てのはよ、帝国が全部仕切るのか?」

「いえ、おそらく仲介が入ると思われます」

「冒険者ギルドだな」


 俺の答えにバイゼルが頷く。


 帝国が全ての迷宮を管理していることには変わりないだろうが、入ってくる金はとにかく膨らましたいはず。

 直接帝国が管理するよりも、ギルドに管理させた方がリスクは少ない。

 ギルドからの上がりも視野に入れれば、相当な額が帝国に入る。

 管理料は払うが、迷宮の使用料やら登録料やら、やたらと掛かる経費にたっぷりと税金を上乗せして徴収するに違いない。

 さらに、モンスターがドロップするアイテムや出現する宝物は、迷宮のランクで変わってくる。

 ランクが高ければ高いほど、入手できる物はレア度が高い。その逆も然りだ。

 その分使用料とかも増額するだろうな。


 そんなことを、トム君に説明をした。


「へぇ、良く出来てんなぁ。結局、帝国が儲かる仕組みになってるってことだなぁ」


 しかし、その態度は釈然としないようだ。

 それもそうだろう、領地にあるものが領地の手から離れるのだから。

 それは俺も同じだ。


「てことはよ、領地に入ってくる上がりはねぇってことか?」

「借用料程度でしょうかな」

「借用料?」

「家賃みたいなもんだ。お宅の迷宮を借りて商売しますよ的な、な」

「みかじめ料とか取らねぇのかよ?」

「冒険者が逐一出入りする環境になります。彼らの方が、下手な後ろ盾よりよっぽど頼りになりますからな」

「かーー! んだよ、ったくぅ! じゃぁ、迷宮があったって、ここが潤う訳じゃねぇのかよぉぉぉ!」


「それが帝国の常識でございますからな。ですから、それをひっくり返します!」


 椅子の背もたれに寄っかかっていたトム君は、驚いた表情で体を起こした。


「ひっくり返すだと?」

「えぇ、ひっくり返します。でなければ、我が領地は潤うどころか、荒む一方でございます。リチャード様から託されたこの地を、帝国の手に渡す訳には参りません」

「だから、そのための手筈は整える。だろ? バイゼル!」


 俺はそう言ってトム君にニヤッと笑って見せた。

 バイゼルは目の部分を黒くさせて頷いている。


 さぁてと、帝国め。

 辺境の領主だからって、舐めんじゃねぇぞ!

 このアルブラム領は絶対に渡さない!


ここまでお読みくださり、ありがとうございます!

皆様からの評価&感想はとても励みになっております!

これからもどうぞ、よろしくお願い致します!


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