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バイゼルの不敵な笑顔

アネッサはトム君が好きなのでしょうか?

「ダーリン!」

「うるせぇ! 俺にベタベタ触るんじゃねぇ!」

「つーか。人前であんまりイチャイチャベタベタしないでもらえますかー? マジウザいんでー」

「あ、兄貴! ボケーッとしてないで何とかしてくれよ!」


「ダーリン! ダーーーリーーーンーー!」


 封印が解けたアネッサは、その直後からなぜかトム君を「ダーリン」と呼び、ベタベタしまくってる。

 理由はよく分からない。

 そのまま放置しても良かったんだが、間違って迷宮に入ってきた何者かが、やっとこさ辿りついた最深部でこんな乳繰り合い見せられるのも酷だと思ったので。

 泣く泣く、しゃーなく屋敷へ連れて帰ってきた。


「ふーむ。どうやら彼女はトム様に絶賛フォーリンラブのようですなー」

「これが、この世を永久の山に陥れると言われる暗黒の女神かー。トム君にとっては確かに暗黒だわ」


 俺とバイゼルが冷静に状況を観察していると、トム君が泣きベソかいて俺に抱き着いてきた。

 俺はそれをベシッと撃退する。

 悪いが、野郎に抱き付かれる趣味はねぇ!


「ひ、酷いぜ……兄貴……」


 床の上で膝をつき項垂れるトム君の背中に、アネッサがピトッと貼りついた。

 その背中から、フワリと広がる美しい羽根。

 涙を流すトム君にそっと寄り添う暗黒の女神……か。


 はっは、これはなんとも……


 はっはっは、はぁ……









 ーーーなんなんだ、この茶番は?









「バイゼル、だいぶ話が違うようだが?」

「暗黒の女神アネッサは全てを滅ぼす存在と、過去の文献で読んだのですが……おかしいですね」


 おかしくはない。

 現にトム君という、アルブラム領で最高の俺の友達(マブダチ)を滅ぼそうとしているからな。

 その執着心で……


「一つ疑問に思うんだが」

「何でございましょう?」

「本当に彼女は()()()()()なのか? どうして封印されているのがアネッサだと分かったんだ?」

「リチャード様がそうおっしゃいましたから」

「親父が?」


 俺は片眉を釣り上げてバイゼルを見た。

 悪いが、親父は頭はキレても良くはない筈だ。

 学歴は中卒だってのが、親父の自慢だったからな。

 だから、親父は絶対にあの文字は読めない。

 ()()()

 俺はジトーっとした目付きでバイゼルを睨み付ける。

 バイゼルめ、目を逸らしやがった。


「……正確に申しますと、奥方様……です。台座に掘られていた文字を読んでそうおっしゃいましたから」


 あぁ、魔法のスペシャリストだった母か。

 母クラスの魔法使いなら、あの台座の古代文字も読めるだろうな。

 バイゼル、何事も正直が一番だよ。

 それにしても……


「彼女が封印された理由は?」

「それはトム様がおっしゃった通りでございます。彼女以外の天神族が協力して、あの建設中だった地下迷宮に彼女を封印したのです」

「彼女を……か?」

「……」


 俺はバイゼルの説明が終わる前にチラリとアネッサを見た。

 とてもじゃないが、世界を滅ぼすような存在には見えない。

 現に背中に羽根が生えてるから天神族なのは間違いないんだろうが。

 それにしても邪魔だな、あの羽根。

 背中にもう一人分の幅が出来ちゃってるから、彼女が動くたびに何かが床に落ちてく。

 それをトム君が拾ってる。

 ブッハーーーー!

 何てシュール!


「また、文献を片っ端から読み直しでしょうかな」

「古文書もだ。俺も手伝うよ」

「それは有り難いのですが、他にもやることがございます。ご当主」

「なんだ、やることって?」

「あの地下迷宮の活用方法でございます」


 出たこれ……


 バイゼルの言葉に、俺の顔からはサーっと血の気が引いていく。


「……地下迷宮の? 運営? するの?」

「何せ、領地内にありますからな」

「親父みたいに隠せばいいんじゃないのかな!?」

「ご当主!」


 バイゼルの低くて太くてドシッとした声が俺の腹を貫く!


「ご当主はおっしゃいました。この領地を変えると」


 そして俺に近付き、顔を寄せてきた。

 やめて、バイゼルさん!

 マジで怖いから! マジで目がキレてますからーーー!!


「い、言いましたけれども! 地下迷宮の活用とか、運営とか! む、む、む……」

「ご安心を」


 俺がしのごの喚くとバイゼルは目を悪戯っぽく細めてみせた。

 そして、見ていて不敵な笑顔を作ってみせるのだ。


「私に考えがございます」


 ……それは一体、どんな考えなのでしょうか……?

バイゼルさんの笑顔って素敵だと思います。

きっと、ショーンコネリーのような渋さがあるかと。

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