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封印の女神は超マブい

さぁ、バイゼルよ。

理由を語るがよい!

「さぁて、ご当主! 前回の理由を申し上げる回がやってまいりました!」


 そうですね、バイゼルさん。

 ほんとビックリしちゃうよ。

 何が悲しくて、あんなとんでもなく恐ろしい悪魔の化身の封印を解かなきゃならんのだ?


「しょうもない理由だったら、タダじゃおかないからな!」

「タダじゃおかないとは、恐ろしい。先行き短い爺に何と」


 いやいや、先行き短いクソジジイが、何で魔法使ったり、俊敏な動きが出来るんだよ?

 おかしいだろ!

 世界の理を無視しまくらないでほしいな、全く!


「それはさておき。あの石像ですが、あれは間違いなく女神『アネッサ』でございます。そもそも、なぜアネッサがこのような迷宮の奥深くに封印されているかといいますと、かくかくしかじか」

「……バイゼル。後半が全く説明になってねぇ」

「ほっほっ、寄る年波には何とやら。歳は取りたくありませんなぁ」


 と苦笑いをして見せるバイゼルだが、何が言いたいのかサッパリだ。

 ていうか、そんな端折りまくった説明で、よく「説明は次回!」とか言って引き延ばせたな。

 はっきり言ってバカじゃないのか?


 ふと横を見れば、トム君の表情が光悦としているんだが、どうしたんだろう?


「さすが爺さん! 痺れるぜ! シブいぜ、眩しいぜぇぇぇぇぇぇ!」


 はぁ、全く……

 ここにもバカがいやがったか……


 揃いも揃って、嫌んなっちまう……


「ともかくバイゼル! アネッサが封印された理由はしっかり説明してくれよ!」

「さっきしたではありませんか? ご当主の脳みそはよほど記憶力がないと見えます。ペラッペラのメモ紙の方がマシでは?」


 こんのクソジジイが!

 マジで首絞めてやろうか、えぇ!!


「爺さん、いくら何でも、そりゃ言い過ぎだ。要するにあれだろ? アネッサが大昔に大暴れし過ぎたせいで、同じ天神族がこのままじゃヤベェってんで、総動員して封印しようとしたけど、手頃な場所がなかった。そこへ、ちょうど地上の人間が何かの時のためのシェルターとして造ってたこの迷宮が目に付いて、人間脅して迷宮ゲッチュ。彼女を封じ込めたと。んで、リチャードの旦那と爺さんがここを見つけて潜ったら、アネッサの石像を見つけて、しかも魔力が大量に漏れてる状態だったから、封印の上に封印を重ねた。ってことだよな?」

「その通りでございます! トム様、見かけによらず聡明でございますな。どこぞのペラッペラな紙くずとは大違いです」


 どこぞのペラッペラな紙くずってのは、俺のことかな?

 バイゼルゥゥゥゥゥ……

 オマエ、マジデコロスヨ?


「まぁまぁ。そう怒るなよ、兄貴。取り敢えず、リチャードの旦那が施してくれた封印結界のお陰で、アネッサから漏れる魔力は抑えることができたわけだろ?」

「それでも大地や水が枯渇したんだ。タチが悪いだろ」

「封印結界を施されたのは、奥方様でございます。凄腕の魔法使いでございましたから」


 と、バイゼルは横目でチラチラ俺を見ている。

 悪かったな、どうせ俺は出涸らしだよ!


「ちなみに、『コア』を停止させたのは、モンスターの動きを止めるためでございます。我々がここを発見した時、既に迷宮内はモンスターで溢れかえっており、さらにアネッサの魔力で変容している個体もおりました。

 あの扉にも封印が施されており、モンスターが領地に出てくることはないのですが、万が一がございます」

「あぁ、それで『コア』を停めた、って訳か」

「ふぅ、ようやくご理解頂けましたか? 出来ましたら、もう少し早めに」

「爺さん、もう突っかかるのはよせ。兄貴も困ってんじゃねぇか」


 トム君は俺たちにそう言ってから、アネッサの石像へ向かった。

 そして、ペシペシと手で石像を軽く叩いた。いや、あれはハタいてるんだな。


「それにしても、これから魔力がねぇ」


 訝しげな表情で、トム君はアネッサの石像をペシペシし続けている。

 それにしてもこの石像。

 そんなに大きくはないなぁ。

 台座に立ってるから俺たちより高いのは高いけど、石像自体の大きさは一般的な女性のそれに近いんじゃないか。

 あぁ、それってのは身長のことだ。


 怪しい言い回しではないからな。


 その石像をトム君がペシペシしてまわっている。


 ペシペシーーポロリ。


 ん?

 何か今、ポロって落ちなかったか?

 はて? おかしいな、見間違い?


 んーーー??



「何見てんだ、兄貴。そうか、兄貴もやりたいのか(ペシペシを)」


 とバイゼル同様調子に乗り始めているトム君がペシペシするたびに、何かがポロポロと……


 あれ?

 それって、もしかしてアネッサから?


 あれ?

 どうしてトム君がペシペシしてるところから肌色が見えているんだ?


「トム君、何か溢れてるぞ?」


 俺はトム君がペシペシしてるところを指差した。


「は? 何が溢れてるって?」


 と、トム君が振り返ると……














 トム君が触れているところからピシピシとヒビが走る。

 それはアネッサの石像全体に走り、やがて……



 ピシリという乾いた音と共に崩れていく!


 そして、崩れた石があったところにはーー!








「……」







 目を瞬く、ひとりの女性が立っていた。


 亜麻色の髪を靡かせ、小さく整った顔立ちにスレンダーな体躯にビキニアーマーという、サービス満点な格好。

 その背中には、真っ白で背丈より大きな翼がある。


 天神族の特徴だな。

 てことは……


 こいつがアネッサか?



「……リン」


 そのプルプルしているくちびるが揺れ、何かを呟いた。

 何言ってるんだ?



「……ーリン!」


 彼女はトム君をジッと見据えながらジワリジワリと彼に近付いていく。

 そうか、目覚めて最初の獲物がトム君なのだな。

 トム君、今までありがとう。そしてさようなら。

 君のことは忘れないよ、君の名も!

 アネッサ、せめてもの良心があるならば。

 苦しませぬよう、トム君を天に送ってくれたまえ。


「こ、コラコラ! 兄貴、何胸の前で手を組んで祈ってんだよ!」

「ん? あぁ、トム君。君の冥福を祈っているんだよ。短い付き合いだったが、俺は君のような友を持てて楽しかった。神よ、トム君の魂を導きたまえ」

「祈るな! そんなもん勝手に祈るな!」

「ダーーーリン!」

「ホワァァァァァイ!?」


 そしてトム君に唐突に抱き着いたアネッサ。

 その表情は、満面の笑み!

 そうか、そんな愛くるしい顔で、お前は世界を滅ぼすんだな。


 しかし、ダーリン?


「ホワァァァァァイ!?」

「ダーーーリン!」



「ダーリン! もう離さないっちゃ!!」


 何がどうなってるっちゃ?

何かおかしなことになったなぁ。


この次もサービスだっちゃ!


ここまでお読みくださり、ありがとうございます!


これからもどうぞ、よろしくお願い致します!


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