089話 囚われのタクト 後編
とんでも無い歓迎を受けたタクトだったが、何とか切り抜けた時にヘキサグラムの拓斗から信号が入る・・・
タクトからは繋げないが一旦繋がれば、此方の都合が良ければ魔力を流すだけで、相手に信号を送る位は出来る仕組みだ。
それを受けた拓斗がゲートを開き〔今良いか?〕念話の後で、ひょっこりと拓斗は顔を出す「今は良いけど直ぐに監視が来るよ、それに外にも看守がいるから大声は駄目だね」小声で話すと「了解した」拓斗とスラ、ミウが此処へと転移、門と言うよりは、何処か家の扉と言っても良い様な物を開いた?いや異空間を繋げて普通に廊下から部屋へと、現れた様な気楽さで「よぉ♪」と入って来た。
因みに最初は四角い画面のテレビを見ている様な小さい物の向こうで、拓斗の顔が笑って見えていたのだが、徐々に大きな画面へと移り変わり向こうの景色が大きく見えて来る・・・向こうからは、タクトが今居る部屋が、屹度見えている筈だ。
辺りを見渡して拓斗は〔会話は念話の方が、騒がしくなくて良さそうだな、防音障壁を張るのも手だが、それ自体を感知されると不味い、なにが仕掛けてあるのか?来た許りで全く不明だしな・・・〕〔そうだね拓斗〕〔まさしくじゃな〕
ミウは小声で「アタシは気配を抑えて、此処で黙って聞いているわよ」皆が頷くと〔人数が増えただけでも気配が増して、感づかれる危険が増すだわさ〕スラも早速気配を消して賛同する・・・
タクトは此処へ来た顔触れを見て〔他の人はどうしたの?〕〔未だ向こうの戦場が落ち着いていないのと、セラがこの部屋へ出向けば、同じ顔が二人いてややこしいからな、ポコとガッチャ共々遠慮して貰った。それに来るのを凄く嫌がっていた〕〔成る程じゃな、して連絡が付いた以上、此れからの行動は、手筈通りかの?〕
やや考えた拓斗だったが〔其方に支障が無ければ手筈通りだ〕タクトとエルーザが互いに頷くと〔問題無いよ拓斗〕などと言いながら一応は、此れ迄の情報を互いに交換して〔下女は問題の内に入らないのか?〕〔まぁ大丈夫じゃろ、妾も手助けをする故、安心するが良い〕〔此方は予想外に捕虜が多かったんだよな・・・〕
拓斗の呟きにエルーザは〔軍師殿の予想を上回ったのかの?〕〔或る意味ではそう何だ。オーク達は疑似兵化される事を酷く恐れていてね、劣勢を悟った後は、実際為す術も無かった模様だよ〕〔成る程の、本来ならもっと勇猛だったのじゃな?〕〔その様だな、取り敢えずロボスさんの指示通りにイーストアランへ護送するよ〕
〔了解じゃ、だが主殿、奴らを奴隷兵団にでする積もりかの?〕〔迚もじゃ無いが出来無いね、意思が希薄な獣魔とは違い、彼らや彼女達は知性があるからね、身の振り方が決まれば開放するよ、大食らいを抱えていては身の破産だ〕
〔彼女達じゃと?〕〔あぁ彼女達だ。女戦士も近衛兵の中には結構居たんだよな、男共に庇われて、捕虜の男女比率では、若干だが数の方は多いんだよ〕〔成る程、然様な事もあるのじゃな・・・ならば場合に因ればじゃがな、此処での都合が悪くなれば、此方の下女も送る話しに成るやもの?女性が多いのなら問題もあるまい〕
眼下では、悲鳴混じりだった嬌声が、全体に歓喜の声へと艶っぽく変貌を遂げて、獣の所業が男女共に本能任せの狂乱に成っている様子で、見ていて何とも言えない雰囲気だが、自然と拓斗の目にも入ってきた。
何となくエルーザの気持を察した拓斗は〔それは構わない、兎も角向こうでも同じだけどな、生きている者達を無下には扱えないからな、それに女性なら酷い目にも合わせたくないし、もう仕方無いかな〕〔主殿も相変わらずじゃな、甘い事じゃがそれも又悪くは無い話しじゃ、妾の理念とも合致する・・・〕
拓斗はエルーザの話しに興味が出て〔エルーザ、理念とは何だ?〕〔妾達の帝国はじゃな、女性達が中心と成って案外上手くやって居ったのじゃ、当時の男共が本能むき出しで酷かった故にの、志を同じゅうする男も居ったが、基本は女系で長く統治しておったから、妾の帝国は種族に拘らなんだのじゃ〕〔成る程な、良い社会を築いていたんだな〕やや褒められて嬉しいエルーザが、少しだけ微笑む・・・
その時タクトが「今しか言えないと思うから伝えて置くけど、拓斗、今回の我が侭を認めてくれて有り難う」急に言いだした話しに面食らいながらも拓斗は「許すも許さないもタクトの自由意志は尊重するよ、今迄も此れからもな・・・ただ今回は単独行動だと思って、少し心配しただけなんだ。言い方が悪かったのなら誤るが、誤解はして欲しく無いかな?」
ニコリと笑ったタクトは「そんな意味で君に言ったんじゃ無いんだけれど、拓斗の気持ちは良く分かったよ、僕こそ急にこんな話しをし出してご免ね」「許可を取る必要は全く無いんだが実は俺、妙に心配性なんだよ、それに何でも言って欲しい、お互いの意思疎通は大事な事だからな、と言う訳で行き先くらいは教えてくれよ」「それも理解しているよ、だって僕も拓斗だからね」「そう、だったな・・・」
もう時間が少ないかと察して〔と言う事で長居は無用、次は此方が連絡を待つ事にするけれど、携帯が出来上がれば、今回の様に確認してから届けるよ〕少しその話題で盛り上がっていたタクト達は笑い〔それで良いよ、此方は此れからどう成るか予断を許さないからね〕〔全くじゃ〕〔それじゃ頑張ってくれ〕〔有り難う拓斗、其方の皆も頑張って〕
スラが少し心配そうに〔大丈夫なのね?〕〔大丈夫だよ早瀬姉ちゃん、ミウもね〕「了解だわよ、其方には魔王ジュートもいるし、アタシは心配して無いわ」〔妾は一軍に相当するからの、安心せよ〕ゲートを開いて三人は、元いた戦場へと帰って行った・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
暫くして最初の三人から八人に増えた娘達が、女官長に連れられ食べきれない程の食事を運んで来た。
タクトが心配していた食事事情とは違い、真面な食事が運ばれて来ると〔どうやら妾の杞憂じゃったの〕〔ホント、助かったよ〕〔詳しく聞いて居ったならばじゃ、下僕が吸血姫だと心得て生け贄の若い人族の男でも、あの女官長ならば抜かり無く段取りしたのじゃろうが、どうやら聞いて居らぬ様子じゃ〕〔だよね・・・〕
可愛い白のフリルが縁取りしてある、濃紺のお仕着せを着た少女や若い女性達が、タクトの意を迎え様と、甲斐甲斐しく給仕の世話を始める・・・その手際に不備が無いかと観察する女官長が、一々目を光らせて軽く咳払いをしたり、睨んだりしているのは、タクトも何だか微笑ましい・・・
食事が終了して、タクトの目の前にお茶が運ばれて来ると、女官長は一人の女性を前に出し「この者はシュンカと申しまして、此の春に行儀見習いを卒業致して居りますが、縁に恵まれず役職も残念ながら得ておりません。それ故この度はお嬢様のメイド長としての務めを与えました。遠慮無く何事もお申し付けて下さいませ」
因みに優秀な者ほど、敢えて役職を与えず更に磨き手元に置いて、この様な場合に機会を与える事がある・・・シュンカは配属に迷うほどの、優秀だった人材だ。
見れば器量は普通より少し良い?位の顔立ちでややふっくらとした体型だ。背丈も中程だが笑うと愛想の良い感じで、タクトは気に入った「分かったスよ、シュンカさん、此から宜しくス」「はいお嬢様、此方こそお願い致します」ニコリと自然に笑った後、深々とお辞儀をする・・・
それを見て女官長は安堵して「それでは私は下がらせて頂きます。後の事はどうぞ此のシュンカに、何事もお申し付け下さい」一礼をした後、未だ名前すら知らない女官長は、妙に足取りも軽く階下に降りて行った。
七人をシュンカはタクトへ見える様に並ばせて「左から冬華、結花、遙花の三人は先程お嬢様のお伽、いえお世話を務めさせて頂きましたが、新たに私が春花で順にお世話係兼、身辺護衛の香貫花、明日華、彩花で御座います。そして最後は護衛長兼、副メイド長を勤めさせて頂きます依舞花で御座います。以後はお見知りおきをお願い致します」一人ひとり、名前が呼ばれる度に頭を下げたが、最後には全員が一斉に頭を下げた後、片付けなどの仕事に各々が取り掛かった。
後で説明をされたが、二人一組で八時間交替、常に二人はタクトのお世話係として勤めるとの話しを聞き、一人は戦闘の専門家で護衛を兼ねているとも教えられた。
万が一不埒者が現れた場合に対応するとの事で、他のお世話係三人も一応は、護身術程度なら出来ると、タクトは説明をされた。
そして常時付いているのは、長のシュンカと夜間は副のイムカが付くらしく、常に三人が言わずもがなの話しだが、タクトの監視に付く事に成った模様だ。
未だ宵の口でもあり、外の喧噪も収まる気配も無い儘で、暇を持て余したタクトは「全員名前の最後には『カ』が付くんスね?」シュンカは話し相手も仕事のウチと愛想も良く「お気付きに成られましたか流石で御座います。私共は全員同じ一族で御座いまして、生まれた女の子の名前には『カ』を付ける慣わしが御座います」
因みにシュンカとイムカは、同腹の姉妹でシュンカが一つ年上の十八歳、イムカとカヌカが同じ年の十七歳、父違いだが二人の妹でトウカとユウカが十四歳、別腹でアスカとサヤカが十六歳、一番下のハルカは十三歳でシュンカの妹だった。最初の人族女性から既に三世代か四世代を経ている・・・
「成る程スね、だからスよ、みんな何処となく似ているな?と思ってたス」「元を辿れば、私共オークの全員がほぼ陛下のお血筋を引いておりますが、薄い者と濃い者とに別れておりまして、私共は数年前に攫われてきた人族女性の血を残念ながら色濃く受け継いでおります」「そう何すか」残念ながら?タクトは自分も攫われて来た。セラ姉ちゃんならば同じ運命だったのかと、考えながら返事をした。
問い掛けてもいなかったのだが、もの悲しくシュンカは「人間の女性は、オークの多産には堪えられず。一度目は堪えても二度目は無いと言われております。普通のオーク女性なら多産も平気ですが、強力な繁殖力を有するオークですので、人間や私達なら受胎する事が死に繋がるのです」「それは大変な話しスね、ヤバいスよ」
この頃には、全員が並びだして「はい、この度は変化も出来無い、中途半端な私共全員を今日の様な運命からお救い下さいまして、改めてお礼を申し上げます。この感謝と忠誠をお嬢様に捧げたいと思います」「感謝致します」残りと唱和してこの場の全員が最敬礼をする・・・
下を見れば、変化を遂げた女性達は、本能に任せて既に歓喜の声を上げているが、人型のまんま相手をしている下女は、数の方は少ないのだが、もう既に気を失って物を言わない屍のような状態だった。
タクトが何も言わないでいたらシュンカに代わりイムカが「その代わりと言っては何ですが、私共の一族は、魔力量が多い者が排出されます。但し私達はその中でも魔力が少ないと判定されて、行儀見習いや下女として王宮に差し出されました」
此処に来て漸くタクトは彼女達の必死な眼差しと、恐らく経験も無いであろう筈の行為を最初の三人が、恥も外聞も無く行い、タクトの関心を買おうと努力したその理由の全てが理解出来た。
其処でタクトは「成る程スね、話しの方は分かったス、けれど魔力量は訓練次第で増えるスよ、此れから頑張って欲しいスね」「え!増えるのですか?」「訓練次第スけどね、チャンと努力すれば増えるス、後レベルアップも有効スよ」
それを聞いて、ややガッカリとしたイムカは「レベルアップするには、外で獣魔を狩るか迷宮で戦わなくてはダメな話しなのですよね、私達は既に王宮の虜も同然で此処か奥離宮、或いは裏方の厨房や王宮内の掃除で、外出は不可能で御座います。外でのレベルアップは、残念ながら夢の又夢の話しです」
「それは残念スよね、けれど機会があれば、是非挑戦して見れば良いスよ、自分のお付きならそれも可能かもス、後は日頃の訓練だけでも多少なら力を伸ばせるス」「お嬢様!それは本当の話しなので御座いましょうか?」
イムカがその身を乗り出して迫ると(顔が近いよイムカ・・・)「本当ス、教えて上げるスよ、適正に応じて伸ばせば、戦闘力も可成り上がるスね、生活魔法なども憶えれば、自分の元を離れた後は、是非ともそれを今後に活かして欲しいもんス」彼女達全員に希望の光が灯った瞬間だった。
その後は、色々とオーク世界の常識や慣習などの話しを聞き、今回の事情も徐々に理解した頃「と言う訳でお嬢様は命の恩人でもあり、既に私共はお嬢様の資産でもあります。以後は何卒遠慮無く何事もお申し付け下さい」再び全員が頭を下げた。
そして「もう遅いから」と就寝しようとすれば、三人が寝室まで付いて来る・・・
他の者は階下の控え室で休むなり、翌日の朝食や昼食の下拵えを始めるとの事で、残ったイムカ達へタクトは「あのぉ~自分はスよね、一人でゆっくりと寝たいんスけど・・・」三人は女官長から【決してお一人にしては成りません、陛下ご執心のお方なのですからね、万が一があれば大変です】などと釘を刺されていた。
監視をしろ!と迄は言われていない彼女達だったが、女官長はこの様な言い方で、暗にそれを示唆した。だが後にお互いに打ち解けるのだが、彼女達の感謝は本物で忠誠心も本物だった。
少し楽しそうなエルーザは〔まぁ当然じゃな、彼奴らを連れ込んで居ったのなら、今後は主殿と内緒話も出来ぬわ〕〔だよね、僕は寝る必要も無いけど、一人に成る機会は貴重に成るかもね〕〔まさしくじゃ、それにしても・・・〕〔それにしてもの後は何?僕に話し掛けておいて、途中で止めないでよ〕
少しエルーザは考えた後で〔いや何、お主に拒否られた時の娘達が哀れでの・・・反応を見ればじゃ、随分と恥じ入って居った〕その時はタクトも或る意味必死で、観察をする余裕も無かったのだが、指摘されて〔確かに可哀相なくらいだったね〕〔何とかしてやりたいがの、我らも思惑があるからそうも言っては居られんわ〕
タクトの意思表示にやや戸惑いながらも、普通なら此処からの脱出がまず不可能と考え、そして既にタクトとは、上下関係がハッキリした三人は逆らう事も出来ずで「それでは中央のお部屋で控えております故、何か御座いましたらお呼び下さい。そして全員にご用の場合は、各部屋にあるこの紐を軽く引いて頂ければ、下の控え室の呼び鈴が鳴りますのでお使い下さいませ」とイムカを筆頭に出て行った。
そしてその儘朝を迎える迄、外の喧噪と嬌声を聞きながら過ごす事に成る・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
肉の宴が始まる少し前、後宮へと戻って食事と風呂を済ませたミーメは・・・
ギシギシと寝台を揺らして何時もの習慣を初めた。お気に入りの数人を呼び出して相手をしているのだが、今日は気に成る事が多くて気が乗らない・・・
喘ぎ喘ぎ「陛下、ハンカイ陛下、今日はキツう御座います。その・・・もう少し、少し、お手柔らかにお願い致しまする・・・」途切れ途切れに言葉を繋ぎ、何とか懇願する美姫達だが、今日のミーメは容赦ない、これ以上逆らうと殺されかねない程の殺気を込めて激しく攻め立てている・・・
ミーメは内心で・・・
急速再生で身体の方も疲れている・・・だが次から次へと疑念も湧いて来る・・・直ぐにでもセラフィナの元へと向かい、思いの丈を迸らせて、儂が造作したあの身体を無茶無茶にしてやりたいが、あの態度は頂けない・・・
一旦リセットじゃ、再設定してこの儂の思い通りに動く、儂だけを愛する雌奴隷にしてから楽しむのじゃ、今度はもう誰にも邪魔はさせぬ・・・
女を抱きながら別の女の事を考えているミーメ、何時までも果てる事が全く無く、次から次へと持たない女を取っ替え引っ替え、その絶倫振りを披露して行く・・・時折りセラフィナを攻めている想像で達すると、弾けて迸る時には溢れて、周りが恐怖する程に今日のミーメは異常だった。
あの変化したスライムに話し掛けられた時、数万年に一度か二度程の割合で、突然現れる知恵を持ったイレギュラーのスライムだと判断したが、そんな事でこの儂が驚いた訳では無い・・・
彼奴は、大魔女王エルーザ様を知っていると言い、そして次に現れた忌々しいあのイレギュラーは、精霊魔法を扱い、消滅魔法まで使い熟した。そして奴は【其奴はヒョッとしてエルーザ、と言うんじゃ無いか?豚!】と確かに問い掛けて来た。
奴ら一体何者だ?
数人の相手を組み伏せて、ミーメ自体も或る程度満足した頃、碌に睡眠を取っていなかった丸一日を精査しながら「まぁ・・・全ては明日、目覚めてからじゃ」呟く様に告げると、死屍累々と化した女達を掻き分けて、広い寝台を狭くしてミーメは眠りに就いた。全ては明日じゃ・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
肉の宴が続く中庭や廊下、開いていた部屋を使って、大饗宴が盛り上がる・・・
その様子を二階から眺めてカントンは「なぁバショク」「何だカントン」「今回は半数も帰って来なかったが、兵士共はその恐怖を忘れたい様なバカ騒ぎをしているな・・・」「あぁそうだな、流石に近衛の女達は居ない様子だがな、赤備えの鎧を着ている女はもう駄目だ。下女と同様で我を忘れている・・・」
下の様子を確認をしながらカントンは「確かにな・・・あの子達も彼処での恐怖を忘れたいのだろうな」「此方は捨て身で敵の数を減らしたが、部下が恐怖の絶頂に達したのは、我らより一回りはデカい、ハイオークの軍団が増えた時だった」
バショクが述懐するとカントンは「そうだったのか、戦の最中俺は陛下の命令で、別行動中だったのでな、ヤケに動きが鈍いと感じてはいたが、同胞と良く似た疑似兵が現れていたとは・・・そんな理由があったんだな」
カントンの述懐にバショクは頷くと「恐らく我らの同胞では無かった。が、大方の部下達は、不死の王に捕らわれて、醜く崩れた身体を引き摺り襲って来る。そんな元同胞の姿を思い起こして、恐怖したのだろう・・・」「大昔の話しだとは言え、未だに恐怖体験として、我らに語り継がれている忌まわしい話しだからな、確かに連想するなとは言えぬよ」
カントンは、その場に居なくて良かったと、心底思ったが「それでは昨日今日で、敢え無く死んだ仲間達も、次には我らに牙を剥いて来るのやもの?」「有り得るな・・・」バショクは同意しながらも、忌々しそうだった。
既に確保した下女数人を抱えてカントンは「まぁ今日の所は此の俺も楽しむとするかな、褒美も貰えそうだし、美味くすれば領地持ちに成れるかも」「それは愉快な想像だな、俺も夢を見るか?いや、俺の場合とお前とは違うな、陛下の希望を叶えたのだお目出度う」「まぁ沙汰が出てからだな、期待して残念な結果だったら目も当てられない・・・」
やや真剣にバショクは「確かにな、だが今度の出征は堪えた」「順番から言えば、次は他の者が出征するだろう?」バショクも同様に下女を抱えながら「それも一応言えてはいるが、もしも万が一再び彼処へと出る命令が下されれば・・・」「もし下されれば?」「俺は可能な限り拒否する」カントンは黙っていたが、気持の方はバショクと同様だった。
赤や黄、黒と青、四つの軍団には一割から三割程度の女性兵が混在しているオーク軍団だが、その者達は行軍中や遠征先で政治上の略奪が出来無い場合に限り、兵士達の猛りを抑える為に従軍させている側面がある・・・
数が増えないのは、妊娠により退官するしか、道が残されて居ないからだが、出産した後で仕方無く復帰する者も多い、今度は生活の為にだが・・・
余談だが育児を放棄しても施設に預ければ、子供は国家人的資源として扱われて、国がちゃんと面倒を見る・・・或る意味福祉は充実しているのかも知れない。
だがしかし、近衛に属している女戦士達は別格で、実力が無ければ昇進しないし、指揮統率も出来る優秀な戦士だ。万が一不埒者が出ても、下級兵士など実力で彼女達は、意図も簡単に排除する・・・
因みに子供の頃から訓練を始めて力を付けていく過程で、落ちこぼれた者は色付きの兵団へと配属されるが、近衛では自由意志での恋愛しか自らも認めない、何れは将来有望な者達へと嫁ぐ夢を持っているし、法律的にも身分を保護される・・・
強い遺伝子を残したい欲求に駆られて、男共からは彼女達の人気も可成り高いが、近衛や各兵団の上級士官か、或いは貴族以外では高嶺の花だった。生涯独身を貫く女丈夫も存在するが、或る程度の年齢に達すると、身の振り方を考える者も多い。
余談だが、現在一人だけ近衛の将軍として君臨している強者も存在している・・・
バショクは、彼女達が大勢捕らわれた現場を見ていた「近衛兵団の女達も数人だが捕らわれた」「そうなのか?俺は別行動をしていたから知らなかったよ、赤備えが一番多くやられただろうからな、その女達も犠牲に成ったやもな・・・」
「近衛の女達も最後は本気を出して変化していたが、最初から変化して戦っていた赤備えは、恐らく被害の方が、数倍の数だろうよ」「前日から数えると、大凡九百ほどは帰っていない」「次は相手も可成り増強されているな・・・」「まぁ過ぎた事を考えても仕方が無い、バショク、今日は生き残った事を感謝して楽しもうぜ」「分かっているさカントン、それじゃ明日な」二人は特権で与えられている自室へ女を抱えて向かった。
そして翌朝、と言っても遅めだが、ミーメは北の塔へとその足を向けた・・・・
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。次回の更新予定は11月22日です。
次回は閑話を挟みます。
乙女達の語らい六話を掲載予定日ではないのですが、追加でお届け致します。
何時も応援有り難うございます。又ポイントが上がるのは、励みに成ります。
此れからも頑張りますので、感想などを聞かせて頂ければ幸いです。作者拝




