表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツイン・タクト (外部世界の不思議な物語)  作者: スラ君
第一章 始まりは突然に・・・
2/144

002話 此処は何処?

突然姿を消した拓斗は?

此処ここ何処いずこ?・・・少し前の会話を思い出しながら、曖昧な受け答えを思い出す。


肝心な事は何一つ聞き出せないまま、現在に至る自分のおろかさを呪った。


忠告されていたにもかかわらず「思わず歩みを止めて仕舞しまった」と忸怩じくじたる思いを噛み締めて再び考えを巡らせる・・・


今回は同化に何時いつもより時間が多く掛かっている様で、手足すら動かせない状態が長く続いた。


何時もなら自覚が無くても共に暮らして居る為、相手のことが瞬時に理解出来るのだが、漠然とした記憶と身体を慣らすのに時間が掛かり、思う様に動かせない事に苛立いらだった。


何時もは、生誕を経験して後から魂が、意識が覚醒する展開が多かったが、久しく他の世界には、転生していない拓斗は、此の感覚・・・初めてだな?


途中から既に人格がある他人の身体に魂だけが、イヤ、この場合は死んだ後だから魂魄が正しいのか?まあ、どっちでも良いか・・・


その魂魄だけが、転移したのは初めての経験だな、もう記憶も曖昧だが、随分前に転移した時は、身体ごと転移したのだが、見知らぬ世界で言葉には大変苦労した。


やがて上半身の自由を取り戻すと、取り敢えず状況の確認を始めた。


洞窟の中で気を失っていた模様で周りを見渡すと、真後ろに獣人がいた。


「誰?」


声に反応して「タクトは大丈夫だった?」獣人が反対に問い掛けて来た。


言葉が理解出来る事に拓斗は安堵したが、疑問が押し寄せる・・・


如何どうして俺の名前を知っているのだ?此奴は一体誰何だ?身構えて居ると少しずつ記憶が追加されて彼女は『ミウ』だと理解して自分は『タクト』と呼ばれる人族の幼子、共に10歳だと思い至る・・・


「俺は大丈夫だ」答えると「生意気ね、何時もは僕なのに」と笑い、続けて「有り難う・・・庇ってくれて」彼女はやや俯いて照れる様子で最後は、小声で呟く様に話すと、少しずつ拓斗は現状を反芻はんすうする様に思い出して来た・・・


俺達の開拓村では、昨日儀式を迎えてタクトを初め、ミウと数人が登録を終えた。


この世界では、子供の生存率が低く10歳迄は、戸籍も作らずに推移するのだが、春の儀式を境に人頭税が発生して、初めて国民と認められるらしい・・・


その事から一般には、成人の儀式と呼ばれる事も有る程の大事な儀式なのだ。


結婚も一応認められるが貴族以外では、婚約する事も稀で普通なら15歳を目途に自力で人頭税の支払いが出来る頃合いの年齢を待つのが一般的だ。


その儀式が行われた翌日、数日前に発見された転移陣(門)に二人は、付き添ったイヤ、母さんに引率いんそつされて三人で訪れていた。


確か父さん達が、稼働しない転移陣の調査をしていたんだ。


霞む記憶の中を手繰る様に思い出しながら、確か不測の事態が発生して、それまで停止していた転移陣が突然作動した。


そして大人達を置き去りに迷宮へと、俺達二人だけが何故か転移したのだ。


「その後、何があって俺達二人は、気絶していたんだ?」


混乱しながら取り留めも無く記憶が蘇るり、ミウの事を置き去りに俺はこの世界の説明を聞いている感覚に成った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


現地の住民は、大半が獣人族で人族や魔族、妖精族などの他民族は、少数だった。


此の六角形、星形の大陸は、獣人達が支配する『ヘキサグラム王国』の大地だ。


北側上部の突起三点を支配する北方の侯爵領と、中央部に広大な土地を有する王国の支配地、そして残り南側の突起三点の真ん中を中央から最南端へと、南北を縦に二分する大山脈を境界にして、東西に辺境伯領があり、細かな事などはさて置いて大きく大陸は四分割されているが、大きな問題も無く統治されて来た。


東部地区は、支配貴族も纏まっている様子で比較的に世情も安定しているのだが、タクトの住む西部地区は、最近に成って支配力の低下からやや雑然としているのが世界情勢の様だ。


その西部地区の中心地から南西に位置する未開地で、数年前に偶然転移陣が発見された。


当時は、大騒ぎに成ったのだ。


近年では珍しい大発見で、当時は学者なども大勢調査に来ていた程だ。


其処へ調査に向かう為には、街と町を結ぶ本街道を南西に移動して、比較的大きな町を三箇所と、途中所々に点在する大小様々な村も九箇所程を抜けなければ成らなかった。


発見した報償を貰う為に同行している、現地近くの冒険者に案内されながら、更に奥地へ向かい『サウス・プティマ』を出発してからでも、都合二ヶ月以上も掛けて移動して、街道から外れた所にその発見場所が在った。


調査を任されて苦労の末に到着した時は、クランの人員も「良くこんな場所を発見したな」と感心もしたり「開発には苦労しそうだ」などと口々に言い合ったらしいのだが、後に街道へと繋がる比較的に短いルートも発見されて安堵した模様だ。


現地の転移門を起動した所、西の辺境伯『ウルサル・プティマ・ヘキサグラム』が傘下に収める転移門へと繋がった為に規約の通り、城下町サウス・プティマの隣村扱いにされた。(他の大きな街では、ウエスト・プティマが存在する)


其処そこをタクトの育ての親が開発を請け負い、仮の統治を行っている・・・


何かの手柄を立てて騎士の称号を持つ父が、開発の後に賜る予定にも成って居る。


開発を委託した貴族、ウルサル卿にとっては、ていの良い丸投げなのだが、丁度亡き友人に託されたタクトの事も有り「子育てをするには、都合が良いな」と先の事は分からないが、長期間一つ所に居座る仕事が出来たと、反対に喜んだらしい。


中規模クラン『白豹の爪』を統率する親父こと『黒豹のアビス』と『白豹のリズ』がタクトを育てながら、ラプトルの森を中心に管理して居る・・・そして川沿いの平地を初期の開拓民と共に行い、移民を受け入れて村の体裁ていさいを整えながら既に十年近くの歳月が経っていた。


二歳下に『雪豹のディアナ』と言う親父達の本当の娘、タクトに取っては妹同然の可愛い女の子が存在するのだが、白地に黒の斑点が有る事から、見た目で二つ名が付いた。二つ名は獣人の間では、色々な意味で誇りに成るらしい・・・


因みに獣人族は、いずれかの因子が強く出る場合と、変異で仮に猫の獣人から虎人が生まれたり、兎が生まれたりする見た目では判別し難い種族なのだが、匂いなどで親子関係は間違わない事から、浮気が出来無い種族でもあるそうだ。


無論、甲斐性があれば、種族的にも昔から多妻はありで、多夫もありなのだが、人それぞれで貴族以外では、少数例の模様だ。


法律的にも規制されていないが、因みにベタ惚れの親父はリズを溺愛、つまり大事にしている・・・


昨日の話に戻すのだが、開拓民の子供達数人と、古くからの付き合いである親父の仲間で、クランの副代表を勤める『猿人のロラン』そしてその妻『兎人のムウ』の長女、愛娘の兎人ミウも、目出度く儀式を迎えた。


当時はロランもこの開拓事業を受けた事を大変喜び、離れて居た家族(嫁と当時3歳の長男、生まれたばかりのミウ)を村に引き取り、現在も移り住んで居る・・・


その頃、クラン白豹の爪は、子育て世代が多くいたので、もう一人の副代表が若手達を率いて対外活動をしている別働部隊と若手育成を初めとする拠点経営の二手に分かれた経緯がある。


又、脱線した・・・取り留めの無い記憶と肝心な知りたい記憶が交互だな、致し方無いが集中して現状の把握に勤めねば、後で大変な事に成るな、戻そう・・・


俺もサウス・プティマからやって来た神官と戸籍を管理する役人達の指示に従って儀式を行っていた。


前半は、難しい儀式を眺めて緊張したが、最後に用紙を手渡されて「記帳した後に役人へ渡す事」などと告げられて魔法の用紙を受け取った。


名前はタクトと・・・獣人の殆どは名字なども無く、通称や字などを呼称する事が多い、何々の誰それや何々の息子で誰、などで理解出来る模様だ。


住んで居る場所は、仮の名称で一応『サウス・ステラ村』か・・・後数年で町規模へと拡大すれば、正式名称に成るのだから「マア、良いか」と記載した。


実質、既にステラ村は、周辺からも認知されている。


他には生年月日だが親父曰く「年齢は分かるが後は知らん」と言う事で何時も四月一日に行っている建前上の誕生日を書いた。


ミウと一緒に横並びで提出すると、魔法の水晶に手を添える事を指示された。


最初は赤色から土色(茶色)に変わり次第に他の色が混ざると「君は灰色だね」と言って記載された紙片を水晶に当てて血を注ぐ様に指示される・・・


すると紙片が反応して残りの記載事項が勝手に数字や記号で埋まり、そして登録が終了した。


開拓民の多くが光らずか弱い光程度、そして殆どが、やや茶色の輝きを見せる中、ミウは見事に水色で強く光った。思い出すと彼女は得意満面だ・・・


最後に迷宮ラビリンスで発見された機械へ諸々が記載された用紙を特定の場所に格納すると、名刺サイズより、やや大きめの白いカードが、排出されて手渡された。


其処には、名前とランク、登録番号が記載されて説明された話しに因ると納税にも必要だが、自由選択で加入した各種ギルドでの入出金や預貯金、ランクアップ時に必要だから「無くさないように」と最後には、一際大きな声で念押しされた。


再発行には、魔法の用紙代金や手続き費用を含む多額の金銭と、紛失を長く放置すれば、重い罰則がある模様で、最初の登録時では、領主が肩代わりしている事情もあり、役人は大真面目に説明をしていた。


此のカードはギルドに加入すると、冒険者なら冒険者カードとして使える様で商業ギルド、職人などのギルドでも同様に使えるらしい、無加入ならば、領民カードと呼ばれて春に行われる儀式と納税、秋に行われる農作物などの物納時期に合わせる様に訪れては、年に二度調査する。


今日は、此の後に確認が行わるのが慣わしだ。


因みにクランの多くは、冒険者ギルドに加入しているが、他のギルドにも複数加入している人も大勢いる模様で、会費を支払う以上の稼ぎを出せる者達は「重い金を持ち運びしなくても、此は軽くて何かと便利だぜ」などと言って使用している。


例えば、此方の商会で大量に買い取った作物を証書で持ち運び、行った先で同質の現物に変えるなどの商取引の場合にカードへ契約内容を記載すれば、証書代わりに成ったりする・・・


商品の持ち運び代金は、それなりに掛かるのだが、商会が大量に運ぶのと、個人で運ぶのとでは、運賃に格段の差が出る事は、素人でも簡単に考え付く・・・


もう一言付け加えるならば、穀物などには等級が付けられるので問題が少ないが、道具類やその他はその限りでは無く、大量に取引が出来る品物に限る、などと言う欠点もある・・・


因みに各町の商品は、大規模商会が商品の不均衡が起こらない様に調整していたりする。


高価だが読み取り機を購入できる程の大商会や高級な宿屋などでも、決済が出来るので重宝している模様なのだ。


そして冒険者ならランクが上がれば、受ける仕事のランクも上がり、何くれと無く優遇される為に高収入も夢では無くなる・・・


取り留めの無い知識が溢れ、肝心な事を思い出すのに苦労している拓斗だが儀式を終えて帰って見ると親父達からクランの倉庫に眠る武具の数々を指さし「自分達に合う物を此処から探せ」と言われたのでミウ共々、喜々として選び始めた。


高価な武具などは、クラン本館の倉庫に眠っているのだが、この世界の武具は奇妙な物が多い、何故なら魔鉄・魔銀などを使った魔力を流し込む事で成長する武具が有る為に一般では扱い難い物が存在する、使用者との感覚が、丁度うまく合えば、手に入れた当初から、強力な武器と成るのだが、武具の方が相手を選ぶ事も有り、普通の武具とは、全く別物なのだ。


その様な、特殊な武具や迷宮産の高級品が、多数収められているのが、クラン本館倉庫なのだが、此処には当然の如く雑多な物しか無い。


駆け出しが使う武具なら普通の武具でもある程度なら物の役に立つ、しかしながらタクト達は、魔鉄や魔銀、複合綱の製品を見つけ出すために鵜の目鷹の目だ。


コレも駄目、アレも駄目・・・良い物が無いわね」「良い物なら本館じゃないかな」「そんな事は分かっているわよ」指摘されてミウはややスネ加減だ。


魔鉄や魔銀を使った武具でも、最初から合う物を選択しないと無駄である・・・


例えば、剣が斧には成ったりしないので、防具も好みに合わせて長期間を掛けて魔力を流さないと、何れ無駄に成ることもある、現在ミウは片手長剣を選んでいるのだが現状の体格では、両手剣と言っても過言では無い、防具も胸当や手足の脛当て小手などを着けたり外したりしていた。


兎に角僕は非力だ・・・人族では獣人族の身体能力に遠く及ばない、此の村の同世代では、誰にも力比べで勝った事が無い、それは女の子であったとしてもだ。


実際に剣や斧を振り回しても的に当てる自信も無く、魔法や弓を鍛えたいと思っていた。それで何となく決めたナイフを手に持ちワンド、短い杖を試したりしていたのだが、何となくフッと目に付いたボロボロの胸当が気に成りだした。


「そんな汚いボロボロより、此方の方が良いわよ」ミウが新品を何くれと無くすすめるのだが、一度気になれば、けて見たくなりホコリを払いながらて見た。


ぶかぶかの胸当だったが、着てみるとサイズ合わせの魔法が掛かっていた模様で、シックリ来る「どうよ」「革もひび割れて変色しているし、心臓部分の攻殻なども素材が判明しないわね、馬鹿やってないで新品を選ぶべきだわ」「新品に掘り出し物が無かったのだから、試すだけなら良いだろう」「仕方無いわね」と自分の品を選びにミウは離れて行った。


結局、護身用のナイフとワンド、今着ている胸当と手足の防具、何の革か不明だが同じ様な場所に置いてあった同素材と思われるマントを選び「男の子ならマントは外せ無い」それと革の靴を履いて本館の我が家へと帰った。


ミウは先に述べた戦士風の格好に色違いだが、お揃いの靴をわざと選んで嬉しそうに帰って行った。


実際、僕達は恵まれているのだ。


他の子供達は領民に成るならいざ知らず、冒険者や旅商人を目指すなら武具なども一から揃えなければならないのだから・・・


その晩は、食後に革の手入れ道具を揃えて部屋に持ち帰ると、ひたすら磨き上げて「ミウ、此は化ける防具達なんだよ」と何の根拠も無く独り言を言いながら眠りに付いたのだったが、本当の意味で正解を引いた事に気が付かなかった。

拙作ですがご辛抱の程をお願い申します。


当面の間、ストックの続く限り毎日更新致しますので楽しんで頂ければ幸いです。


細かな部分の言い回しやその他で気が付いた間違い等を随時訂正しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ