109話 魔の国漫遊記④混迷の都ソドム 後編
恫喝したエルーザと三つ目鬼人のタクト、大人しく成った貴族と軍人は・・・
一様に大人しく成った高位の貴族と軍人を眺めながらエルーザは「先ず被害の方はどうなのじゃ?」「重点的に守れと仰られた資料庫と、隣接する王宮図書館以外の王城は壊滅的です」カリンが資料を見ながら説明する・・・
「まぁ資料が残ったのは幸いか、行政庁はどうなのじゃ?」「大凡の資料は持ち出せましたが政庁自体はもう駄目です」「うむ、それで貴族街の方は?」エルーザの問い掛けにカリンは「其方も可成り被害の方は甚大で、壊滅寸前状態と言えます」エルーザは視線を移して「市民の街はどうなのじゃ?」
商工業組合会頭のチンシェンが「先程漸く届いた報告アルけど、全体の大凡七割方は無事アルよ、けれど未だ火災で一部の被害は拡がっているアルね、それと暴動で火災が発生したスラムは全滅アルよ、最終的には未だ何とも言えないアル」
エルーザは消火作業をしているタクトに向かい「そうなのかの?」「溶岩ドームに力を注ぎ出したからね、街は自力消火が出来無い箇所を指定して貰って居る段階、今は早瀬お姉ちゃん達が頑張ってくれて居る頃かな」「師匠は先程来て居ったの」「みんな頑張っているけれど、それも夕方までだからね」
だがその後、火災の方はスラ達の応援が増えて、徐々にだが鎮静化して行く・・・
カリンが報告書を片手に「それと硫黄や有毒ガスなどの方は、当初王宮の北辺りに迄亀裂が入り、大量に噴き出して居ましたが、その上を火砕流が覆う形で現状は、徐々に収まっております。現在は臭気が酷い物の、何とか作業は出来る範囲かと」「それは朗報じゃが、何かの加減で人体に影響が出ぬとも限らぬからの、注意する事じゃ」「はい、畏まりました。部下達に伝えます」
チンシェンも「街が王宮から東に向かって発展しているアルからね、冬の間は特に北西からの風向きで吹く事が多いアルよ」「と言う事は風下に成る地域が多いんだよね?」タクトが尋ねると「そうアルよ、灰が降れば人々も暮らし難く成るアル」「何れは鎮まる話しでも、当面はドームが崩れる度に噴いておるしの、此は移転を考えた方が良いのかも?じゃな・・・」「いや、そうでも無いぜ!」ニヤリと笑うおやじが立って居た。
声を掛けられてその場の全員が振り向くと、ミウねえとアラン、そしてルウ迄もが来ていて、その中のアランが発言した模様だ。
驚いたタクトが「アランおじちゃん、それにチビッ子ルウ」「チビッコ言うな!」「おい随分縮んで無いか拓斗?」「あ!僕は元のタクトだよ」「オッと、話しには聞いていたがスライムの方か?」「そうだよ、そのタクトだね」ミウねえは名前を呼ばれなくて少し拗ねていたが、タクトは後で宥めて消火を手伝って貰う・・・
アランは少し不機嫌そうに「今日初めて大きく成った拓斗に会ったが、彼奴夜中に起こしやがって、強制的に拉致された」「そう不機嫌」ルウも文句を言う「それで拓斗はどうした?」「寝に帰ったよ、連日働きっ放しだったからね」一瞬アランは嫌そうな顔をしたが、話しの後半で過労と寝不足ならばと納得した。
そしてアランは「実はな、その拓斗に頼まれて、ミウねえだったか?(ミウねえは頷く)彼女と一緒に少しこの辺り一帯を調査したんだぜ。何れ落ち着いたら考えるとしてだが、北を一旦放棄して、川を挟んだ南側を中心に復興させれば、まぁ良いじゃ無いかな、商業地区と工業地区が、ソックリ残って居るから勿体ねえぜ」
一人の高位貴族が「ならば早く商館などを接収為ねば成るまい」「では私は商人の別邸で我慢するか」なばら我も我もと勝手な事を言い出すと「馬鹿か?バカなのかお主達は・・・」エルーザが再び怒りを向けて貴族達を蔑むと「馬鹿とは聞き捨て成らぬ、謝罪して貰おう」やや震えながら副師団長が言い返す。
其処へタクトが「此れからさ、復興を目指そうと言う話し何だよね?」「そうだ!だから我ら為政者が復興に向けて早く動ける様に接収の方も急がねば成らぬのだ」副師団長は正当な主張と権利として要求している積もりなのだが・・・
タクトは「だったら悪いけれども、馬鹿は君達だよ、商人達のやる気を削いでさ、どう復興資金を稼ぐの?足りなく成った物資などは、一体誰が補充するの?民に対しても、貴族だけが良い目をして、焼け出された人々が野ざらしなら、誰がそんな君達を敬うの?ホント信じられないよ、そんな考えなら自ら此処を出て行った方が無難だね、嫌なら僕が直接叩き出す。それに国庫は火砕流に呑み込まれて、アンタ達の街も同様で裸同然だよね、そんな人達が何も出さないが、人一倍口は出す何て恥さらしだよ」
「良く言ったタクトよ、妾も同じ考えじゃ、今迄の体制を維持する事は、もう既に困難なのじゃからの、考えが改まらない様ならば、此奴らはもう要らぬ存在じゃ」バロンですら「確かにマイレディ、そしてタクト様が仰る通りで御座います」他の平民や平の兵士も同感の模様で、口々に批難めいた事を言いだした。
だが諦めない貴族は「誰かが民を導かねば成らぬ、ならばその役目は我ら貴族かと存ずるが、如何に?」エルーザは鼻で返事をした後「お主らに何が出来るのじゃ?踏ん反り返る以外に出来る事は何なのじゃ、その辺りを申して見よ」挑発的に問われて「行政や司法を司り、治安維持が出来るわ!」副師団長が思わず言い返す。
エルーザが「そんな物今必要なのか?」しかしタクトは「いや必要だよエルーザ、必要だけれども、君達に限った仕事じゃ無いよね、例えば治安維持なら其処に居るカントンやカリン達がすれば良い、行政も司法も然りだよね」
副師団長は真っ赤な顔をして「ぐぬぬぬぬ・・・だが、しかし、我らの方が慣れて居るし、今迄の運営方法も熟知して居る、それを考えれば当然の話し、余所の国の事に口だしは無用じゃ、復興のみを手伝って貰えれば、それで良い事じゃ」懲りも為ず言い返す・・・再び最初の様な話しに戻り始めた。
蔑む様な眼差しをエルーザは向けて「勘違いして居るの」「何がじゃ」副師団長は問い返すと「妾達はお主らの復権に手を貸すわけでは無く、人々の為に手を貸そうとして居るだけじゃ、余り我慾を張っては、元も子も無くす嵌めに成るとは、何故思わぬのかの・・・それ程国の体制や自らを含めての体面が大事なのか?同じ事の繰り返しに妾は嫌気が差す」
呆れる様に見た後「国の体制が残って居ると考えるから、この馬鹿共が何時までも勘違いする元何じゃ、そもそも国名からしてオークの国ソドムじゃ、次の行き先も牛の国ゴモラならば、妙な暗示で両方とも国名が不吉じゃ、何故か碌な未来しか想像が出来ぬの・・・」バロンがその意を忖度して「この際に国名を変えましょうかマイレディ」「そうじゃの、それが良いかもじゃ」
苛ついたエルーザは我慢も限界で、跳んでも無い方向へ話しが向かい始める・・・
周りを睥睨しながらエルーザは「この国は力が全てじゃったの?」ハルが「はい、それが国是で御座いました」満足そうに頷くと「ならば一番力がある妾が、国名を変えて使わそう程に皆の者、感謝為よ」威圧感タップリに魔力を放出する・・・
屈辱的な話しに副師団長は「何を又勝手な事を・・・理不尽極まれる!」「ほう、理不尽の・・・」「その様な運命も、彼らは受け入れる事自体が肝要かと・・・」バロンは逆らった貴族や軍人を徹底的に追い込む積もりの様だ。
「運命か・・・ならば国名は『フェイト』でどうじゃ?」「エルーザが又変な事を言いだしたよ」「何も変な事ではありは為ぬ、心機一転を図るならば旧名を捨てて遣り直しじゃ、この街もそうじゃな・・・理不尽を文字って『アウトレイジ』どうじゃ」(乱暴、暴行、不法行為など、何となくオーク世界に似合う)
自分が言った言葉で国名と街の名が変更に成り、驚く副師団長を無視して「流石はマイレディ」「もう何でも良いんじゃ無いかな」「フェアリースタンでも良かったのじゃが、妾達は乱暴者揃いじゃからの・・・」ウンウンとオーク全員が頷くと、嬉しそうにエルーザは「ホレ見ろ、な、此で決定じゃ!国名はフェイトで街の名はアウトレイジじゃ」
違うー!と叫びたいオーク達だったが、勘違いしたエルーザは、強引に決めた。
タクトが周りの雰囲気を察して「まぁ落ち着いたら国民投票でもして、変更すれば良いだけだからね、取り敢えず仕方無いよ」ウンウンと頷くオークを見て「何じゃ不服なのか?」エルーザが睨みを利かすとブンブン顔を振るオーク達、満足そうにエルーザは尊大に構えて「そうであろうが、ブワッハッハ♪」
変更する気満々のオーク達だが、何故か何時の間にか定着して仕舞う事に成る。
これ以降は到頭高位貴族や軍人も、足掻けば足掻くほど事態が悪く成る事を悟り、諦めた模様で意外と積極的に話し合いには、チャンと応じる雰囲気に成って来る、彼らも此の儘では駄目だとの認識は、一応持っていた様子だ・・・
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数日後・・・
エルーザが一喝し、会議とも言えない一方的なゴリ押しで、国名と都市名を改変した後で決まった事は、溢れる溶岩の抑えに終日スラ達が交代で、川の水をドームに掛け続ける事を承知した。(無論、抑えきれない事は承知なのだが、都市部方面を重点的に冷やす事と土魔法で流れを遮ったり、溶岩ドームの一部を破壊して、態と被害の少ない方向へ躱す事に尽力する話しに成った)
不足物資などは、拓斗とバロンが転移魔法を使い、余剰物資と交換で提供し、技術指導でアランとルウが支援する話しと成ったのだが、統治に関しては未だに揉めている・・・
治安維持と復興作業はカントンやギエン達が率先して行っているのだが、最低限の行政指導をバロンが彼らにしている状態で、何かと相談事が絶えない・・・
既に出発したエルーザが煩わしそうに指示したり、アウトレイジに態々転移しては利害調整などを行っていた。
そう……タクトは次の目的地に向かっていたのだ。
纏まらない高位貴族達や高級軍人達が口出しをして、エルーザは不満を爆発させて「ならば好きにするが良い、妾達はもう知らぬわ!但しじゃ、働きに応じた報酬は貰う故、覚悟をしておく事じゃな」などと宣言して出発して仕舞った。
実の所、物資はチンシェン達商工業組合が過不足無く対応して、エルーザ達には、損の無い取引をしていた。どさくさに紛れて人員の交流を開始し、スラ達の働きに対しても「内緒アルが、国庫が埋まっているアルからね、取り出せるものならば、お礼とお詫びに大魔女王様が、自由に持って行って欲しいアルよ、空にしても問題無い位には、お世話に成ったアル」
エルーザが土魔法で土手を制作する序でに掘り起こし、それを報酬として貰い受けたので、タクト達の活動資金は一国を運営する数十年分を一旦は手に入れたのだが「それではその方達も後で困るじゃろ」と言う話しで厳選した武器や防具の一部、資金の方でも或る程度を受け取り、残りは復興資金と体勢が整った後の行政資金に充てる事で話しが着いた。
チンシェンは勝手な事をしているのだが、国庫が掘り起こされた事を知ると、その管理でも揉める原因と成り「ならば余が分配してやろう」バロンが威圧タップリに全ての財宝や資金を異空間へ移して「必要があれば余に申し出よ」宣言すると金庫番として君臨する事に成った。
本来はエルーザ達の旅にお供する気持でいたバロンの足枷に成った者共に対する、彼なりの報復だったが、誰も異議を唱えることなどは出来無かった。
後に力を失った貴族達と武官達は、出て行く者と残る者達に別れ、暫定的に市民の代表に成ったチンシェンや数人の有力者、そしてカントンやバショク、ギエンなどが組織する合議制の体制を調えると、フェイトは国として動き出したが、この事が原因で遠征中の軍や地方の有力者と揉める事に成る・・・
情報が錯綜して誤報なども混じり、一応確実視された情報でも『王都ソドム陥落』『ハンカイ陛下の崩御』『謎の国フェイト建国』『王位継承権上位者死滅』『市民政権の樹立』等々……断片的な話しが伝わると、西以外の方面に派遣していた遠征軍や地方の有力者、元王族から封じられた貴族が、それぞれの思惑で動き出した。
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長い統治が終焉して残ったのは、待つ事を諦めた元王族の末裔や近年望んで貴族に成った元王族が、互いに領地(ミーメは大きく成り過ぎるか、刃向かわない限りは放置していた)を争い、現在有力な貴族では北の張遼と東の藐焉が、中小領主に難癖を付けて攻めたり、或いは併合したりして、周辺を従わせて勢力を拡大させていた。
そして直営部隊では赤備え師団の魏延、南の黄備え師団の馬良、そして北を預かる青備え師団の燉煌、一年毎の交代で北に向かった黒備え師団の劉邦が、三千前後の人数を従えて師団を構成、更に徴兵を黒の部隊長が千人単位で統率、万単位の数を指揮しながら北に向かって移動中だった。
基本的に王都の徴兵は、地元勤務と北か南に振り分けられて任務に就いていたのだが、国境問題で危うい北方面は、各地の貴族からの募兵などを集めながら進む為、現在最大戦力を有しているのは北と南、そして国境に向かいつつ集結している黒のリュウパンだった。
その中で身動きが出来ない南北の両師団は距離が不利、砂漠地帯で隔てられる西方面の貴族達は、情報が遅く到達する事に成り、東のバクエンとリュウパンの二人が当初の情報取得では、王都に近かった為にやや抜きん出た格好だ。
王都から貴族や豪商、その他それぞれの思惑で支持する有力者に伝令が出たのは、ハンカイの死亡が確認された後だった。
伝令が走る中……「道を空けろ!」「伝令の道を空けるんだ!」リュウパンの元へ届いた知らせは【ハンカイ陛下、崩御】だった。
リュウパンは部下に「此をお前達も見て見ろ!」手にした幹部級の黒備え幕僚長とその部下は「此は・・・」「何と!」「真逆?」各々が反応する中「閣下、ご運が到来しましたな」一人が囁く様に告げる・・・
得たりと「まさしく仰る通り」次々と追従するとリュウパンは内心を隠して「此は陛下の弔い合戦だ。仇討ちだ!後の事は後の事とし、取り敢えず引き返すぞ!」
さり気なく最初に物申した腹心に目配せをすると、心得たと許りに腹心子飼いの部下に素早く指示をして、街道を始め北に通じる細道などを広範囲に封鎖すべく動き出した。
リュウパンは転進命令を出した後、部下の動きを確認しながら「現在は如何ほどの兵が集まって居るのだ?」「我が師団三千と徴兵が一万五千、貴族領からの兵が五千ほどで、此れから北へ向かえば後五千ほどは集まりますが、如何致しましょう」
リュウパンは即座に「捨て置け」「は?」「捨て置けと行っているのだ!今は転進を急ぐ事が肝要だ」「成る程、了解致しました」
鷹揚に頷くと「徴兵は二年任期だが、一年半の防人と往復に二ヶ月、実際訓練を施しておるのは数ヶ月で、帰りなら任務中に鍛えて或る程度はマシに成るが、今は行軍をするのもやっとの有様だ。それに領主軍とてどう成るか分からぬからな、北のチョウリョウ殿と青のトンコウ殿を或る程度足止めすればそれで良しだ」
別の部下が「しかし我々は運が良いですな、後数日遅ければ北に抜ける狭隘な山岳地帯に差し掛かる所でした」「徴兵の練度はイマイチだがな、今ならば先に王都を突ける位置に居るのだ。これを活かせば運も開けるぞ」「真に然様で御座いますな閣下、後は東ですか・・・」双方が頷き合う・・・
その頃、東のバクエンは・・・
急ぎ足で現れた部下が「王都からの知らせです」一報を読んで「真逆?しかし此が本当の話しなら、隣接した強敵が居ない儂は有利なのだがな・・・」手紙を部下に見せながら呟くと「真に千載一遇の好機で御座います。南北国境の軍勢が動けない今ならば、我が軍の道は開けたも同然で御座いますよ閣下」
三人目の部下が読み終えると「可及的速やかに兵共を召集致しましょう!敵討ちと言う大義名分も御座います」だが最初に読み終えた腹心は、バクエンの考えを既に見抜き動き出していた。
東は可成り王都に近い位置関係だったが既に動いて居た軍が引き返すのと、話しを聞いて此れから招集するのでは、段取りは全くの違いがあり、準備に手間取る事に成ったのだが、遅れては成らじと騎馬部隊の五百を先に送り出す事に成功する。
情報収集をしながら進むバクエンは、後続の軍勢を当然ながら急がせたが数日後、北の街道を進む黒備え師団の後塵を拝する事に成る・・・
話しは若干戻り「どうしても行かれるのですか・・・」既に諦め模様のカントンが問い掛ける・・・しかしタクトは「どうもこんな事は性に合わないからね、それにエルーザも本気で怒っているよ」「妾がこれ以上口を出したならば、更に面倒事が起こるじゃろうが、もう馬鹿者共の相手はお手上げじゃ、金輪際ご免じゃ!」
タクトは申し訳無さそうに「本音を言わせて貰えば、ゆっくりとしている暇は無いしね、僕達も目的があるから勘弁だよ」「そうじゃな、一応バロンが残るのじゃ、それで辛抱を為よ、新政府の運営が軌道に乗ればじゃ、お主達が自治をする方が、未だましじゃからの・・・或いは馬鹿者共が復権するも良しじゃが、その時は妾も本当の意味でおサラバ!じゃな」エルーザはアッサリした物だった。
バロンが重々しく「早く体制を整える事を望む、私とて仕える相手から離れるのは辛いからな」カントンが相手でも、エルーザの前では大人しいバロンだったが後に【手間取れば余の我慢にも、限りがあると思え】などと脅したりもした。
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タクト達が西に向かう事に成ったのは「砂漠を西北西に一旦出て、その後に中央を北よりに横断するのが、ゴモラへの近道です」カリンがそう伝えた後で「近道なのですが踏破するのには、現在は可成り困難な状況で、遠回りでも西南西の貴族領を通過する方をお勧め致します」
タクトが不思議そうに「ゴモラは北に位置する筈何だよね、何で西に向かう話しに成るの?」カリンはやや詰まりながら「そ、それは・・・いや、正直に申しますと北では国境付近で牛共と対峙中で御座いまして、恐らく通行が出来ません、その上現在の状況を考えますと味方ですらも不穏かと」「成る程ね、理解したよ」
「砂漠の横断が何故駄目なのじゃ?」エルーザが敢えて問うと「西に向かえばハルマッタンと呼ばれる貿易風が吹き荒ぶ砂漠地帯なので、中央の踏破は通常ならほぼ不可能です。なので一旦南下して雨の多い領主地域を通り、迂回してから最短の砂漠越えに成ります。ですがその最短の道程でも、オアシスを効率良く利用する事が不可欠です。けれどもその道案内の一族が非協力的なのです」
都市国家のゴモラは、位置的には西北西方面に在るのだが、一旦西南西へと向かい乾燥地帯を迂回するか、北上して山脈越えの国境線で、互いに睨み合う戦場を突っ切るしか道が無いとの事で「どうする?」「戦場を突っ切るのも面白そうじゃの」エルーザがタクトの問いにこんな事を宣う・・・
タクトが「砂漠自体は、ほぼ踏破不可能と言う事だけど、全く無理と言う話しでは無いんだね?」「はい、ほぼと申しましたのは、幾つか存在するオアシスを的確に経由すれば、何とか成る程度だとお考え下さい、そしてその道筋を案内出来る者はオークだけでは少数かと・・・いえ、皆無だと申し上げます」
「成る程の・・・じゃが妾達ならば、まぁ何とか成るかタクト」「成るね」「え?成るのですか!」「成るな」「成るよね、だったら中央突破を選択する方が良いねエルーザ」「そうじゃなタクトよ」「中央突破を選ぶのですか・・・」少し考えた後カリンは「それでも頑張りますから私達をお供にお加え下さいませ」
今度はタクト達が驚いて「何じゃとぉ?」「え?お供って何だよ」「はい、お願い致します。是非とも同行させて下さい」「それは又、何でなのじゃ?危険を伴うのじゃがな・・・」「恩返しもありますが、私も強く成りたいのです。戦闘が得意な者達だけで構いませんから是非ともお願い致します」
「命を無くしてもかの?」「覚悟の上です。それに戦闘だけでは無く、身の回りのお世話もさせて頂きたいのです」「どうするのじゃタクト?」「彼女の自由意志を尊重するならば、反対も出来無い話しなのかな?いや、何か違う・・・それにトラブルが早足で、向こうから団体でやって来る僕達の旅は、可成り危険だと言えると思うからね、どうしたら良いものやら迷うよ」
身を乗り出す様にカリンは「望む所です」即座に答える様子を伺い「まぁそう言う話しならエルーザ、何とか成るんじゃないかな?」「成る程の、じゃが足手纏いと妾が判断したのならばじゃ、引き返して貰うからの」「はい、承知致しました」
「話しが着いたなら賑やかなのは歓迎?なのかな・・・」微妙な返事をした。
そんな会話の後、タクト達は出発したのだが、追いかけて来たアウトレイジからの知らせで、引き返す事に成ったのだ。
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。次回の更新予定は02月06日です。
細かな部分の言い回しやその他で気が付いた間違い等を随時訂正しています。
何時も応援を感謝致します。少しでもポイントが上がるのは励みに成ります。
此れからも頑張りますので、感想などを聞かせて頂ければ幸いです。作者拝




