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ツイン・タクト (外部世界の不思議な物語)  作者: スラ君
第三章 転移 魔人族の国、獣人族の国
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108話 乙女達の語らい⑩

閑話的な話しですが、作中では彼女達の心情が余り描かれていませんので、時折り今後はエピソードを挟んで、深めたいと思います。本文の補足的な部分も多少有りますが、読み飛ばしても問題は有りませんから、ご自由にお楽しみ下さい。

ザイオンに拓斗よりも一日早く辿り着いたディアナ達は、早速ホテルへ入る、だが夕方早くから何もする事が無くなったディアナが、食後にはもうぐずりだした。


夕刻前に南門の入市審査を難無く突破した時には、上機嫌でディアナも喜んでいたのだが、街中に入るとカムセラが「あ!ヤバイ」「彼方にも雌虎の仲間が・・・」アムセラも人目を避ける・・・門通過後は、二人に巻き込まれてディアナ迄もが、路地を選んで雌虎が少なく成る迄、ひたすらフードで顔を隠しながら歩いた。


だがその甲斐あって貴族街の近くに在るホテルへと辿り着いた「一番良いホテルで泊まるなんてアタシ初めて♪」アムセラが嬉しそうに言うと、カムセラも「だってホテル・キングダムよ、王国!何て偉そうな名が付くのよぉ~♪王族でも泊まれる格式があるんだから、もうアタシ幸せ♪」


カムセラが「流石は拓斗君、いや、拓斗様よね」ウンウンと頷きながらアムセラも「太っ腹よね【一番高い良いホテルを選べ】キャー♪普通言えないわね」「一泊、幾ら位するんだろう?」「一般部屋でも普通の高級宿の倍だと聞いたわ」


嘗て二人は大金を払い、泊まり客ならば只なのだが、一般に昼だけ開放されているレストランのスイーツ食べ放題に参加してる・・・その時、何時かは此処で贅沢をしたいと、心に誓ったのは去年の事だった。


横から別入口で入れるレストランとは違い、正面玄関から入るとホールの豪華さで圧倒される「流石に最高級の部屋に泊まるのは畏れ多いけど、少しグレードが良い程度の部屋なら良いかも?」カムセラが問う「そうだよね、貴族街に近くて格調が高いホテルなら、此処しか無いのは当たり前だけど、ウチら貧乏性?」


アムセラも同様に気圧されて「まぁ、そうなんだけどね、明日には拓斗さんが来るから、いや、拓斗様の部屋は、改めて到着してから決める事とするけど、ヤッパリこの位でも気が引けそうだよ」だがディアナは「ふーん、そうなんだなの・・・」脱なの宣言後も癖が偶に出る・・・


値段表を見ながらアムセラが「三倍か・・・」「一番上なんて時価だよ、時価!」「応相談なのかな?」「いやアムセラ、言い値に違いないわね、その下を見てよ」カムセラに言われてアムセラが見ると「一泊で・・・一、十、百、姉様ぁ、アタシもう恐ろしくて値段表を見られない・・・」


だがしかし、ディアナは臆せず「何してるなの?」二人の話を聞いてディアナは、さっさと決めて二人を促すと、案内役のボーイに付いて行く「或る意味大物よね」「確かに・・・」慌てて二人も後を追う・・・


倍を過ぎ・・・三倍、そして四倍の階へと進む自動昇降機、其処を過ぎる頃には、自然に双子の足が震え出す。そして五倍の階で止まると「此処がご希望のクラスで御座います。この階の5号室、部屋番号は505号室と成っております」黙って此処まで付いて来た三人だが、カムセラとアムセラはやや挙動が怪しい・・・


更に案内を続けるボーイがドアを開けると、ディアナは家族と旅行した際の部屋を思い出しながら「まぁ、こんな物なの」鍵を受け取り慣れた手つきでチップを渡すなどの、堂に入った態度でディアナが呟く・・・


アッサリ受け取るボーイが「三人部屋と言う括りが御座いませんで、此処は家族部屋と成ります。食事の方は如何致しましょうか?此方へ運びましょうか、それとも下のレストランが宜しいでしょうか?」カムセラが嘗ての事を思い出し慌てながら「レストランへ行くわ」「そうだね姉様、追加注文もし易いよ」「と言う事なの」「それでは食事のお時間の方は何時でも、皆様ごゆっくり為さって下さい」一礼をして出て行くボーイは、足音にすら気を配り静かに消えた。


見送るカムセラが「流石ね」頷きながらアムセラは「暗殺者?」「ウチらがそれを言うかね?」「アハ言えないね」「何処も一流なら当たり前の事なの」ディアナは指摘するが、双子の二人は同意しかねていた。


冗談交じりに話しては居るのだが、警戒に値する出来事だったのだ。


早速ディアナがシャワー室を使い始めると「姉様」「何?」声を低めてアムセラは「此処ヤバいんじゃ・・・」頷くカムセラは「拓斗様は承知の上?何でしょうね」「ヤッパリか・・・」「まぁアタシ達は楽しもうよ、お仕事はあるけれど・・・」頷くアムセラも「明日の夕方かぁ・・・」


その後、見た事が無い食事を堪能して、スイーツもタップリと、ゲップが出る程に詰め込んだ二人と、不機嫌なディアナが深夜までトランプをしながら時間を潰す。


このトランプは数日前、フレア温泉ログハウスで拓斗達とスラ、それにガッチャがポーカーをしながら遊んでいたので「トランプ、作ったんだね」アムセラがスラに聞くと「そうだわよ、まだあるからひと組持って行く?」


テント暮らしでも偶には良いかと、アムセラが受け取り「有り難うね」「暇潰しに良いだわさよ」「バリエーションの多い遊び道具だから、今晩からでも早速ディアちゃんに教えるよ」カムセラも「訓練ばかりじゃ持たないからね、偶には息抜きも良いかな」などと言いながら二人は有り難く持って行く・・・


そしてこの日も、ジッとしている事に飽きたディアナへ大富豪(もしくは大貧民)を教えたのだが、大勢が参加すれば、まだ逆転もし易いゲームだが、三人程度なら一度ド貧民に成ると、もう浮かぶ瀬も無い・・・直ぐに最下位のディアナは飽きて「このゲーム詰まんなぁい」などと言い始めた。


だがしかし、このゲーム以外では、双子は勝てなかったのだ・・・色々と教えて、最初はババ抜き、七並べなどなどだが、賭けが絡むゲームを教えると、何故かディアナは強かったのだ。


初め頃は賭けの方も大人しかったのだが、負けが込むと双子は大きく賭けだした。


だが強運のディアナは破竹の勢いで、身包み剥がされた双子は、もう下女扱いが妥当な程で、借金をディアナに待って貰っている状態だった「真逆、この子がこんな強運の持ち主だった何て・・・」「姉様、どうしよう?」「金持ちは賭け事も強いとは聞いていたけれども、此処迄とは・・・」


だがトランプを止めて、只ジッと部屋に居る事は、ディアナには無理だったのだ。


翌日も双子は、夕方まで泣く泣く賭けを続けるしか、もう選択肢は残されて居ないのだ「クッ・・・」「あ!駄目、もう限界だわ」「これ程とは・・・これ程の勢いとは・・・アタシもう破産」「アタシも・・・」「だったらもう止めるのなの!」


もう疾っくに飽きているディアナが二人に言い放つ!そして気分転換と、もうソロソロ兄様が来る頃と考えて、シャワー室に向かった。勝者の余裕である・・・


悔しい・・・双子はトランプ先駆者なのに勝てないのは、二人共勝てそうな手札の時、同じ仕種が出ていた事に気が付かなかったのだ「早く拓斗様が来ないかなぁ」「もう早く来てよぉ~!」「来たわさ」スラが突然現れて、ディアナがいない所を見計らい「実は・・・」と、今日はもう来ない事と、最上階とその下の階の部屋、各フロアー内全ての予約を頼まれた旨をスラは伝えた・・・


スラは拓斗から念話で頼まれて、直接ホテル・キングダムへと来たのだが、この後雌虎本部でたこ焼きを焼く事に成る・・・


実は拓斗も余り深く考えず、クラン雌虎本部でお泊まりする事に成り、カムセラとアムセラの期待を裏切って、更に翌日まで拓斗達は現れなかったのだ。


話しを聞いた双子は、その悲報に涙するしか無かったのだが、天の助けがドサッとスラの胃袋収納から出て来た。悪魔の囁きだったのかも知れないのだが・・・


タップリと金貨が詰まった袋を見て、双子は息を呑み「了解よ♪」「頼んだわさ、それとこの子達を予約が済んだら、最上階に向かわせて欲しいだわさよ」分体達を残して出て行くスラを見送り「姉様ぁ♪」「えぇ此でリベンジよ」二人は熱く成るタイプで、止せば良いのに前金を払うだけにして、残りを復讐資金に回した。


結果は言わずもがなの話しで下女以下、いや、奴隷状態の双子が出来上がる・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

紆余曲折を経て、ステラ村に出店する事と成った、獣人系魔族のオーク女性達が、習慣や種族の違いを超えて活躍する話し・・・?


先ずは生活基盤を整える為にチンシェンが、資金力に物を言わせて建設中の店舗を急遽借り受けた。後にこの不動産は買い取る事に成る・・・


そして本来予定されていた内装を目的に合った物に変更、極短期間でステラ村での営業を早速開始したのが、本通りにある『ブテックとん子』そして南通りの『焼き肉もうタマらん』の二店舗だった。


縫製工場や精肉店は本国のフェイト(名の由来は運命を意味するが、元はソドム)その中心都市と成ったアウトレイジ(乱暴者)にあるのだが、縫製工場自体は後にステラ村にも建設した。チンシェン本人は貸店舗で貿易専門の店を仮設立、営業を開始したが一等地に現在大型の店舗を建設中である・・・


全ての商売にチンシェンは、出資者として君臨するが、貿易以外の責任者として元女官長のおハルを両店舗の支配人として、経営を含む全体を統括させた。因みに女の子の選抜は、お春の手腕が大きくチンシェンも一目置く事に成る・・・


気の利いた元部下の女の子に店長を任せる形で、ブテックとん子からチンシェンの部下を借り受け、経営や実際の運営などを学びつつ、女官長時代の経験などを反映させながら指導して、短期間で軌道に乗せる事に成功する・・・


春は規模拡大に伴い、後に各地へ出店する事に成るのだが、元同僚や慕って付いて来た部下達の助けを借りて、短期間でチェーン店化する迄、アッと言う間だった。


移住希望の男なら土木や建設労働、そして元兵士なら再就職などの斡旋は比較的に容易いのだが、ステラ村への移住を希望する女の子の数が増えるに連れて憂慮したチンシェンと春は、女の子達の仕事先や派遣先を考える・・・


パーティーなどのプランを立てて、料理や接待迄を熟す集団を養成したり、元から在る商会や小売店に店員として就職を斡旋、又女の子達を貸し出したのだ。


偉容を整える為にディオン家や大商会は、頻繁に彼女達を雇い入れる事で、不意の訪問者を驚かせる一助に成るなどの嬉しい誤算も生まれる・・・何故ならば、元は王宮の侍女や下女だった彼女達は、多少の違いなどは直ぐに修正して、失礼の無い接客が意図も容易く出来たのだ。


因みにそれ以外の女の子は、縫製工場や店員見習いを経て獣人の社会に出て行く、戦える子達などは、アビスが率先して雇い入れたが、傭兵や冒険者が性に合う者も多く居て、そんな子達は地元に融け込むのも早かった。


余談だがその手腕にアビスとロボスが驚き、ディオン家の女官長に引き抜く事は、可成り後の話しに成るのだが誘った。来て貰う話しに成ると幾人かの女の子達は、お春を慕って付いて来る事に成り、ディオン家が他家よりも、更に貴族らしく成る基礎を作る事に成る・・・


話を戻すが、もうタマらんの方は時間制の食べ放題だ。家族連れや大食らいの冒険者や探索者に支持されて、もう間も無くノースアランでも二店舗目を開店する程の勢いで人気を掻っ攫った。


チンシェンとお春支配人が、絶妙な運営方法で儲けを出す。食べ放題と言っても、最初に一人前半程の料理を提供、その後は別料金の商品は手早く出すが、只の追加注文は、文句が出ない範囲で小出しに提供、飲み放題のメニーは、セルフサービスだが、別注文の飲み物は、可愛いチャイナを着た女の子が、脚線美を誇示しながら手早く持ち運びするサービスで、男共は定額料金ではもう済まないのだが、自分が注文した物だと思うから、時間延長代金に対しても、文句の一つも出て来ない。


因みに時間制限ギリギリで女の子が追加を持って行き、時間延長を促す親切さだ。


ブテックとん子も同様で、チンシェンとお春支配人が、シュンカ達を上手く使って商売繁盛だ。肉は本国から取り寄せた牛肉と豚肉、養殖させた鶏肉がメインだが、加工したソーセージやベーコン、少し肉が古く成ると、ミンチにして肉団子、ハンバーグなどに加工、残り物に成れば、肉タップリのコロッケに化けて、店内は勿論店外の路上売りでも、道行く子供ですら買える良心的価格で好評を得た。


買い物籠を持った主婦が「あら奥さん」「あらまぁ今日は奥さん」「奥さんの家もコロッケ?」「そうなのよ、コロッケ少々とミンチカツを少し」「あらウチもよ、子供とお父さんが喜ぶの」「偶にとんかつ食わせろと怒るけど、此処のコロッケやミンチカツなら黙って食べるのよ、安いし助かってるわ」などと言いながら買って行く主婦の行列が出来る程だ。


服装店のブテックとん子は、本国の縫製工場から既製品を大量に輸入する事で価格と品質を維持、首都のアウトレイジに近い場所で存在している迷宮から、イモ虫に似た魔物が吐く糸を紡績工場で大量に加工、莫大小メリヤス加工して下着などに縫製、又は機織はたおりで本格的に制作した反物をオーダーメイドで、スーツやドレス、鎧下などに仕立てて売り出している・・・


チャイナ風のデザインが多いのだが、ステラで開店してからは、ヘキサグラム風で洋風のデザインでも加工が出来る・・・仕立ても良く又、ヘキサグラム風の方は、魔の国でも大人気で、今迄は輸入品で高かった物が、直で安く手に入ると成れば、フェイトでの人気も沸騰する・・・


往復で稼ぎまくるチンシェン、それを切り盛りするやり手のお春コンビは、粗利が出まくり笑いが止まらない状態で、ステラ村移住組の生活向上と、定住基盤などを早くも調えつつあった・・・


建設労働者達は、開発中の南北と東のアランで活躍中で、既にインフラも整い出店する商人も増えている状態で、急速にステラ村の空き地も埋まり、人口も爆発的に増加中だ。


評判を勝ち得たのは、オーク娘達の真摯な接客と、幅広い注文に応えたからだ。


副支配人兼、店長の春花シュンカそして冬華トウカ結花ユウカ遙花ハルカなどの可愛い三人が愛想も良く、男性売り場コーナーでは、全く何をしに来ているのかが不明な者達もいる程だが、既製品でも評判は上々で商売も繁盛している・・・


因みに元近衛部隊隊長の秀花シュウカが副店長兼、元部下達と共に不埒者対策要員だ。


余談だが、魔の国を旅するタクトのお付きをしている六人の娘達は、交代制なので三人ずつが、焼き肉もうタマらんで用心棒をしている話しは、未だ一般に知られて居ない秘密で、彼女達を目当てで来る客は、その脚線美と容姿にいかれて、全員がほの字だったりする・・・


店は当然女性比率が多くて当たり前、男性売り場コーナーは、入口と店内を分ける壁で仕切られているが、別段女性が男性、男性が女性コーナーで買い物をしても、違和感が無い程、和気藹々とした感じの店が、ブテックとん子なのである・・・


その新店舗に「オッと此処だな」アビスが入って行く「旦那、一体アタシを何処へ連れ込もうてえのさ」トキは何も聞かずに付いて来たが「へぇー旦那、服でもプレゼントしてくれるのかい?」「あぁ、今回に限らずこの半年、何かと世話に成ったからな、依頼料は支払い済みだが、まぁ特別ボーナス?と言ったところだな」


嬉しそうにトキは「何だボーナスか・・・アタシはてっきりプレゼントだと思わず期待したさね」「もうプレゼントは、リズとムウに先途集せんどたかられたぜ」「あははは、嫁さん一筋の旦那だったね、変な言い方をして悪かったさね」


アビスはトキを妹の様に可愛がっている所が有り、それにトキはこんな場合では、敢えて甘えている・・・その証拠に此処迄は、トキから腕を組んで、撓垂れ掛かりながら、アビスとトキの二人は辿り着いたのだ。


他人が見ればバカップルその物だったりする「まぁ良いって事だぜ。それと今日は注文だけだぜ」「何故なんだい?」「スズやフウ、そして留守番しているミカゲの分も一緒に頼めよ」「そいつは旦那、嬉しい話しだね」スズが気配を殺して付いていたが、アビスに声を掛けた瞬間だった。


フウもニヤリと笑いながら「ごちぃ~♪」「気配は感じていたぜ。だがまぁ丁度良いか、お前達もチャンとサイズを測って貰え、金は後から届けるから此奴ら三人を綺麗に為て遣ってくれ頼んだぜ」店員に声を掛けるが後ろから「何時もご贔屓有り難うございますアビス様」


支配人のお春がニコニコ顔を見せるとシュンカは「ご領主様、先程のお話しによりますと、ご注文の方は、オーダーメイドで御座いますね、反物はどの辺りに致しましょうか?」既製品コーナーを素飛ばして奥へやって来る上客、他の店員も思わず笑みが零れる・・・


少し考えたアビスだが【感謝の気持ちだからな】と割り切り「此奴らは冒険者でもあるからな、防御性能もある迷宮産の反物を使ってくれ、後は好み次第だろうから多少の事なら良いぜ。今回は俺の奢りだぜ!」フウは口笛を吹き「やったぁ~♪」スズは思わずガッツポーズを決めた。


トキだけは「何だかみんなで済まないね旦那」少しだけ済まなさそうにしていた。


アビスは太っ腹な所を見せようと「なぁに此れからも頼りにしているからな、これ位は任せろよ」「アタシだけじゃ無く此奴ら迄、重ね重ねお礼を言うさね」「まぁ良いって事よ」ドン!と胸を叩くと、少しゴホッ!と咳き込んだが、態と胸を反らして少し苦笑いをアビスはしていた。


其処へ店舗内に前から居た雌虎メンバーが「姐さん達も此処で買い物すか」雌虎の数人が現れた!何だか嫌な予感がして、アビスは少ない選択肢を探す・・・


①逃げる

②今いる子にも奢る

③無視する


①の逃げるをアビスは選択「それじゃ後は頼むわ」などと言いながらそそくさと、店から出て行こうとしたのだが、実は姐さんがご領主様と不倫?いやそんな事無いわよね?だが男なんて獣よ!でも愛妻家のあのアビスさんに限って・・・アタシ憧れてたのに・・・アタシは妾でも良いわよ、などなどの会話をしながら後を付けていたのは、スズとフウだけに限らなかったのだ。


店舗の前で暫くすると【プレゼント?ごち?何でも良い?奢り?】断片的な単語と口笛【やったぁ~♪】に続き【何だかみんなで済まないね旦那】この時点でもう、雌虎メンバーが屯する宿屋に走る者達と、中へ乱入する者達に別れて「ご領主様、ごちす」「え?」「流石は太っ腹のご領主様!だぁ~い好き♡」「おんやぁ?」


次々と通り過ぎながら「ごちすね」「ええ?」「アタシをお妾さんにしてぇ~♡」「あれ?あれあれ?」頬にキスをする者迄が出る始末で、トキもこうなったら仕方無いと腹を括り【場合によっちゃぁ、多少の自腹は切るさね】だが素惚けて「旦那済まないね、み・ん・な・の分まで・・・」「おい!」フウが鳴らない口笛を吹く真似をして、スズは申し訳なさそうな顔を向ける・・・


見るとミニに近いスーツの様なドレスやワンピースの様な物、勿論派手なドレスや機能性を追求した上下に分割して、スカートもあればズボンの様な物が色取りで、女心を擽り目映い程の輝きを見せる・・・


先に中で買い物していた子達も、話しの内容は漏れ聞いてた模様で、幹部連中へのサービスと理解していたのだが「自分達も良いスよね、ごちす」「有り難うございます領主様♡」「此では留守部隊も残念がって、屹度やっかむね♪」「アタシ絶対自慢してやるわ♪有り難う」などと言いながらアビスの頬にキスをして行く・・・


知って居ながらもさり気なく、実に厚かましく強請ねだる彼女達が、アビスにとって、悪魔に見えたのが次の瞬間だった「あぁあ、アタシの妹達も遠征に参加していれば良かったのに」「アタシの姉も留守番なのよ」「それは残念ね、ウチら姉妹は二人共ゲットよ♪」


中の一人が「ホント残念だわ、惜しかったわよね、妹のサイズは覚えているのよ、好みも分かっているからホントに残念よ」残念を繰り返すと「アタシ、姉の好みとサイズなら分かるんだけどな・・・」「アタシも」「雌虎で仲良くして貰っている子のサイズも知ってる」などと言いながらチラチラとアビスを見る目が痛かった。


こうして遠征して来た雌虎全員と留守部隊に迄、高い服を奢る嵌めに成ったアビスだったが、ロボスが機転を利かせて巧く活用する事で、経費で落とせてホッとした事などは、彼女達には預かり知らぬ話しだった。因みに刺繍は店側が幹部四人に対してのみ、満面の笑みを見せながらサービスした模様だ。


そしてトキは・・・何度も何度も「旦那、済まないねえ」を繰り返すだけだった。


オマケ・・・


帰ったトキはもう完全に開き直り、宿屋に居残っていた者や出掛けて居なかった者達に「アビスの旦那がみんなの活躍に感謝してくれて、ドレスを奢ってくれるそうだよ、甘えようじゃないか!」一斉に歓声が上がり、指定された新しい評判の店、ブテックとん子に殺到する・・・


その数は合計で五百着、普通の服ならいざ知らず、迷宮産は希少品だ。途方も無い数の注文を受ける事に成った。


本国のアウトレイジでは、縫製工場の工場長が「なな何だこの注文の数は・・・」部長が「五百着分の迷宮産生地による、チャ、チャイナドレスだとぉ~!」課長が震える手と声で「無理だ・・・ははは、無理だよ、こんなの」係長は未だ実務的に「い、今の在庫はー!」絶叫すると班長が「既製品を掻っ攫えても百五十程です」一般職員が「無理、無理、絶対無理しょ」もう逃げ腰だ。


気を取り直した工場長が「のの(ゴックン)納期の方はぁ~!」「はい・・・一週間以内との事です」「なな、ぬわんだとぉ~!」一般職員が「あぁあ、無理無理、絶対無理しょ」もう何人かは耳を塞いで聞こえないふりをしている「それに既製品以外にもオーダーメイドだとぉう?いかれてやがる・・・」部長がぼやく・・・


話しを聞くだけでも気の遠くなる様な事態にチンシェンは「皆さん、良く聞いて下さい、全ての縫製工場を一週間確保、競合他社の分もです。そして針子を調達して24時間フル稼働が出来る体制を手配しなさい、生地の確保も優先事項です。例え今後の相場が崩れても、針子を含めて全てを札束で頬を叩きながら集めるのです」「何も其処までしなくても・・・もう良いんじゃね?」一般職員が投げやりだ。


所がチンシェンは「私達は獣人の方々に試されているのです。この交易相手に相応しいのかを・・・いえ、この同盟相手に相応しいのかをです。国の威信を賭けて臨む仕事など、一生のうちにそう何度も経験出来る事は無いのです。此を乗り越えた暁には、我々全員が大きく成長している筈、見せてやりましょうオークの底力を」


因みにチンシェンはこの時、アルアルすら言葉に出なかった程、追い詰められていたのだが、本人も周りもその事に気が付かなかったのでアル・・・


この演説擬きに触発された単純なオーク達は、総勢一万の数を集め、注文主を呪いながら昼夜を分かたず生産に励む・・・


冒険者達は迷宮のイモ虫を狩り尽くす勢いで大勢が潜り、生産系の人々と共に死屍累々、などの物語は語られる事は無いが、見事達成して面目を保った。


一般職員やお針子さん、そして反物を織り続けた人々の怨嗟の声が木魂する、後に『チャイナドレス馬鹿野郎ばっきゃろう!』事件は一週間後に収束する・・・

拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。次回の更新予定は02月03日です。


細かな部分の言い回しやその他で気が付いた間違い等を随時訂正しています。


何時も応援を感謝致します。少しでもポイントが上がるのは励みに成ります。

此れからも頑張りますので、感想などを聞かせて頂ければ幸いです。作者拝


乙女達の語らいシリーズは、本文の合間に少しずつ紹介したいと思いますが、不定期ですのでシリーズ次回作の投稿予告は致しません。

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