107話 動き出したヘキサグラムの状況⑩芝居
密かに締結された同盟、しかし、会議の方は予断許さず波乱含みだ。
そしてザイオンで交渉二日目が始まる・・・
ワイツ家の思惑は、勝つ方に付く事、お家存続を考えるなら当然の話しなのだが、兵力が多い王国側よりも、劣勢な王太子側に付く決心をしたのは、此れ迄の情報を雌虎経由で手に入れていたからだ。
何処までを意図して雌虎を派遣したのかは、全くの不明だが、あらゆる手を打ったその中の一つだろう、それが今回上手く作用して来たとも言える・・・
交渉は大凡前回で終わっていたのだが【是非ステラ村を見たい】などとワイツ卿が言い出したのが切っ掛けなのと、錫杖の性能テスト兼ねたデモンストレーションもあって、拓斗も行き先をステラ村にした。
ロボスから事前に【そう言う話しが出た場合には、希望に添う事】と言われていた事でもあり、実の所ワイツ卿が切り出さない場合【今日で決着を付けたいからね】などと拓斗から誘う様にとも、ロボスから指示を受けていた状態なので、願ったり叶ったりだった。
なのでアビスも連絡をすればアッサリと了承、そして最後の詰め『調印』を密かに済ませて仕舞った。こう言う事は切り出すタイミングが難しい模様で【相手に切り出させるのが何事も上策何だよね】などと言われて居たので、手立ての方を色々と思案していたが、ワイツ卿から頼まれた時には、正直拓斗もホッとした。
何が決心する決め手に成ったのか、拓斗には窺い知る事が出来無かったが【何方がより積極的に動くかで、相手の本気度も推察出来るからね、握手一つするにしても場の状態を察して歩み寄って握るのと、歩み寄られて握られるのとでは、その後の関係を左右する事もあるんだよ】
ロボスの言にそんな物かと拓斗は漠然と考えていたが、今回は二人同時に歩み寄り力強く、そして硬く握り込んだ姿を見た時、漸く何となく理解した様に思えた。
更にロボスは【まぁ兎に角、君の錫杖を献上してその性能を教えれば、それ自体がメッセージに成ると思うからね、先ずは密かに会える事が優先だよ】などとも言われて居たが、その通りに成り、僅か許りの護衛、ガニメデ達とステラへ向かった。
因みにワイツ卿達の前では、大袈裟に態と転移陣を発生させた事などは、言う迄も無い話しだ・・・
ザイオンの会議も心配だが、皆でいる事でもあり「此方が優先か・・・興味も出て勉強にも成りそうかな」と拓斗は考えて運び屋に徹したが、ロボスは手回しも良く既に書類を整えていた。
その先見の明が確かで、前以て作成していた書類は、不備も条文の落ち度も無く、何時もながら手際は良かった。
そして忙しい一日の半ばを過ぎて、昼過ぎにザイオンのワイツ館へと戻る・・・
ワイツ卿に帰り際、ステラ使節団への通行許可証発行を頼み、その後は暫く一休みしながらホテルで待機、タクトを魔の国へと送り返して「スラ達に化けて貰っても良かったんだがな、今回は助かったよ」「お姉ちゃん達は何だか妙に抜けてる所があるからね」「そう言う事、それじゃ」因みに動かなければ問題が少ない、スラの高性能分体が拓斗に化けて、ホテルのソファーで座って居る・・・
余談だがホテルには、事前にスラの分体を忍び込ませて、マークしてあった・・・
夕方前にはステラ村へと引き返し、使節団を転移させて馬車で門を通過してから、ホテルでは先にタクトが見られているので、態々部屋まで馬車から転移して分体と交代、そして漸く今に至ったのだ。
無論拓斗達が貸し切った高級ホテルの最上階とその下のフロアーにも、ワイツ家の諜報員は潜んでいた。女中に化ける者、下男や下女働きをしている中にも、そして部屋自体にも盗聴などが可能な設備が整えられて、四六時中監視されている・・・
当然知った上なのだが、敢えて此処を選んだのは、此処以外では使節団などを受け入れられる程の格があるホテルは数える程、何処に行ってもワイツ家の諜報組織は抜かり無く、段取りを日頃から怠っていないからなのだ。
何処も一緒なら一番良いホテルが良いと、前以てディアナ達を先行させて抑えていたが、知っていたのはカムセラとアムセラの二人だけで「明日の夕方到着するディオン家使節団の為に部屋を頼む」などと言いながら前金をタップリと渡して、殆ど使う事が無い最上階のバカ高い部屋と、護衛の為にその下の階全てを押さえた。
そして自分達は階下の一般よりは少し良い部屋へと前日から泊まっている「姉様、今回のアタシ達、お仕事の方は此でお役御免なの?随分と楽ね」「明日、使節団が入るのを見届けた後からだね」「なら明後日にはこの贅沢な暮らしもおさらばか」
「ディアちゃんは外に出られなくて、ぐずったから始めた遊びだけど・・・可成りキツいよ姉様」「アムセラ、こんな嵌めに成るとは、アタシも考えて居なかった」二人はシャワー室に居るディアナの様子をそっと伺う・・・
だが二人は、拓斗達が現れる事を泣く泣く一日千秋の思いで待つ事と成るのだが、この話は別の機会にでも語るとしよう・・・
ディアナ達が段取りを付けたホテル・キングダム・・・其処へタクト達がロボスやギンガを伴って入ると拓斗が既に中で待って居て、早速「それじゃ後を頼みます」拓斗とタクトが転移をして消えるのと、入れ替わりにカムセラとアムセラ、そしてディアナが訪れる・・・
予定より遅れた到着で、本当は前日に合流していた筈なのだが、拓斗達はディアナ達の気持などには斟酌せず。クラン雌虎本部で泊まって仕舞ったのだ・・・
それ迄は毎日お風呂や何かで会えていたものが、たった一日二日会えないだけで、ディアナは知らず知らずのうちに寂しい思いをしていたのだが、又もや拓斗とすれ違う・・・拓斗がタクトを魔の国へと送った後、ステラへと引き返して、交渉団を転移する為に再び消える、などと言うハプニングがディアナ達を襲い、ガッカリと肩を落とした。
もう拓斗の居ない部屋で、話す気力も無くしたディアナは黙っていたのだが・・・
ロボスが取り出した紙に筆談で『壁に耳あり、大事な話はしない事』などと書かれていた物を全員に見せると頷いて「おいロボス」「何だいギンガ?」「明日も俺は参加か?退屈何だが」筆談を急いで書いて『明日は波乱あり』「まぁそう言わずに護衛を頼むよギンガ」ギンガは頷いて「仕方ねえ~な!」態と大きな声で言った。
その後は軽く明日の予定を相談し始める「ディアナちゃんと双子の二人は明日出発してよ」「はいロボスさん、了解しました」「そちらの君達もだよ、交渉事は僕と使節団が後を引き受けるからね」「了解したわロボス兄さん」ミウが返事をすると「次はいよいよアルビオンだね」片目を瞑りながらロボスは話す。
間髪入れずにミウが「そうよ、アルビオンだわよ」辺りを睥睨する様に伝えると、あぁそう言う事かと全員が納得して、翌日は北門から迂回してプィテマへと向かうのだと了承した。
そして派手な一行が到着して、使節団が部屋へと入る・・・雌虎の数人は護衛にと雇われた様で、階下の贅沢な部屋を満喫するのだが、籤に外れた者達は残念そうにクラン本部へと帰って行った。
拓斗が転移して部屋に戻った頃には、既にディアナ達は、階下の部屋で明日からの旅支度を終えて、退屈な夜を過ごす。兎も角、次からは最低でも温泉で会える事を知らず知らずのうちにディアナは、楽しみにしている自分自身に気が付く・・・
そして観客の少ない芝居を打つ、交渉の幕開けは、いよいよ明日に迫る・・・
深夜、ザイオンの下町で・・・
焦燥感を隠しも為ずに数人の男が「おい、どうするんだ?」「どうもこうもない、するべき事をするだけだな」「だが交渉団がもう到着したぞ」「途中で張って居た奴を呼び戻したよ」「真逆こんなに早く転移陣を使って来るとはな・・・」
残り数人は二人の会話を聞いているが、苦々しげな顔付きで何も言わない「それはありだろう、ステラから何処かへ転移して、ザイオンに繋がっている街から此処に来れば良いだけだからな」「だがそれにしても早過ぎる・・・」
「あぁそうだよな、情報では一昨日に接触したと聞いたがな、そうであるならば、使節団は可成り前から出ていた事に成る」「そうだな、そしてあの忌々しい雌虎を懐柔して、あんな派手な登場をされれば、難癖を付けて、門外で排除する事も出来無かったぜ」「一応張っていたのか?」
「其方が主力だ!お前分かっているのか?ジャッカ領を堂々と使節団が通れる筈も無いだろう、只どうやら最初の接触が、建設中の砦だと報告があったのでな、後を追う形で偽装して、ジャッカを抜ければ、無い話しでは無くなる、と考えて街道も見張らせたんだ」
「成る程な、だがそれでは如何するんだ?」「其処だよ、話しは戻っちまったが、手の打ち様もねえな」だがそれ迄黙っていた一人が「当初の計画通りに要人暗殺を狙うしか無い」「誰をだよ、あんな子供を狙えってのか?交渉中の大人を狙う方が未だましだ」「だがそれを狙うなら我らも命懸けに成る」
苛々と男は「城への行き帰りにでも狙えば良い話しだろう、何も交渉中に襲えって言う話しじゃねえよ」「いや、明日からは雌虎の護衛参加があると、当然見るべきだろうな」「チィ、今朝襲撃しそびれたのが痛いぜ」
この時は未だ参集が間に合わず、たった三人と人数の方が少なかった・・・
「だが雌虎本部を此の人数で襲うわけにも行かなかった。城へ向かう道中でも態と人通りの多い場所を移動していたからな、それに俺達の行動を止めて【宿屋にでも泊まれば襲おうぜ!】と言ったのはお前だぞ!」
男は頭を掻きながら「どうも子供を狙うのがなぁ・・・いけねえぜ」「何を今更」「まぁお前はプレイヤーだからな、だが変な倫理観を持つんじゃねえよ」
最初の男が窘めると、プレイヤーと言われた男は「元いた世界では、あの位の歳は未だ子供で、俺は弟や妹が居たんだよ、お前ら無理やり強制するなら抜けるぜ?」「まぁまぁ少し抑えようぜ」今迄黙っていた男が仲裁に入る・・・
其処へ使いに出ていた男が戻ると「どうだった?」「あぁ、どうやらあの子供は、ディオン家の養子らしくってな、当然ながら的には成り得るんだが、明日早くには此処を出て行くらしい、行き先の方はアルビオンらしいぜ」「まぁそうだろうな」「敵地のプィテマは無いだろうぜ」「いや、分からんぞ?」
最初の男が話しを戻す様に「それで何と言っていた?」「話し合い自体は蹴るか、態と長引かせて、ワイツ家はイヤ、ランデル達は中立を狙うらしいが、アルビルの話しでは、ザイオン近辺でもディオン家の関係者を殺せば、当然同盟は破談に成るから狙えとさ、どうやらトップがステラ寄りらしい・・・」
プレイヤーと言われた男は「ケ!全くやってられねえよな」やや批難する様な顔を向けて「それでも組織の命令を遂行する為にやって貰わねばな」「あぁ~あ!クロノス、クロノス、組織、組織、お前ら何も考えていないのかよ?何時もやっている事と言えば、陰謀と人殺しばかりじゃねえか・・・帰る段取り何ざ、こっから先も話しに出ねえじゃねえかよ」男は自分の親指を立てて、爪を見せる素振りをした。
仲裁していた男が「まぁやっている事は非合法で悪辣な事ばかりをしているがな、元の世界に帰る為なら此の俺は何でもするぜ?なぁ次郎さん、アンタもだろう?」「次郎は止してくれ、此方ではカイザーⅡ(ツバイ)何だからな」「よくもまぁ、そんな中二病的なキャラ名を付けたよな?皇帝次郎てかぁ♪」
笑いながら揶揄っていた男が言うとカイザーⅡは「お前だって似た様な物だろが、なぁファイアーバーストさん」嫌みたらしく名前を呼ぶと「プレイヤー同士で諍うなよ」「お前は黙っていろよ」「何様だぁ?お前はよぉ~!」「俺は仲間内で争うなと言っただけだ。何だよ二人してけんか腰でぇ・・・」
纏め役の男が「其処までにしておけ、それよりも話しが先だ。俺は今回アルビルに賛成する」数人が手を挙げるとカイザーⅡは「やりたくねえが仕方無いか・・・」ファイアーバーストは「俺も良いぜ」最後に仲裁役をしていた男が「プレイヤーが二人も居るんだからな、子供相手なら問題も無いだろう、賛成するぜ」
纏め役の男が「それでは全員が賛成と言う事で、街道の人気が無くなった時点から襲うで良いな?」カイザーⅡは「危なく成ったら助けてやるが、俺は消極的な賛成だからな」「それでも見殺しにはするんだ」ファイアーバーストが、揶揄する様に突っ込む・・・
キッ!と睨み付けて「組織には逆らわねえがな、やりたくねえもんは仕方ねえだろうが!邪魔しねえだけでも感謝しな」纏め役の男が「あぁそれで良い、大の大人が十人もいるんだ。一人ぐらいやる気が無くても、仕事はちゃんと終わらせられる」カイザーⅡは面倒臭そうに「あぁそう願いたいな」
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翌日、派手な登場を詰る同盟反対派にロボスが応酬して「ぐぬぬぬぬ・・・」ランデルは唸る・・・
「どうやってタイガーウイッチ、いや雌虎を懐柔したのかは知らぬが、彼奴らにもキツいお仕置きを為ねば成るまい」ランデルの言葉に風のバインドは「雇われれば何でもするのが冒険者、然程目くじらを立てる必要もありますまい」
ジロリと睨むランデルをアッサリと無視してバインドは「それにラージル様、いやお館様も笑っておられました故、方々、事を大きくするのは如何な物かと・・・」忌々しげに「お気に入りじゃからの、だが何も為ぬ訳にも行かぬわ」
ロボスが其処へ口を挟む「クラン雌虎とは、飽く迄も雇用関係以外御座いませんがランデル殿、僕達が雇って問題が有りますかな?」言いたいことは幾らでもあったのだが、先程の唸り声が答えだった。
ニヤリとロボスは笑って「兎も角、正式な使者として此処に居られる外交特使が、全権を担っています」ロボスの横で少しペコリと頭を下げると「銀狼のリーダーでフェルと言います。役不足ですが、どうか宜しく」そして日頃はクラン白豹の爪で事務を担当している者達が数人居並ぶ・・・
前夜、スラの分体から情報を仕入れたロボスと拓斗は相談の上で、銀狼のメンバーを迎えに行ったが、寝耳に水のフェルは交渉をロボスに任せる気満々で、ギンガと並んで中央のランデルとバインドに向かい合う席に着いていた。
バインドが目元に笑みを浮かべながら「兄弟揃ってお出ましか、先ずは懐かしいなフェル」「バインドさん、僕も懐かしく思いますよ、今回はどうぞお手柔らかに」「あぁ、此方こそ・・・」
漸く話し合いを始める雰囲気に成って来たがランデルは「昨日の代表はどうしたのじゃ?」「昨日は急場の事で、仕方無く出て貰っただけで、今日から本格的な話し合いに成るなら遠慮させただけですよ、子供が相手では失礼でしょ」
ランデルはフェルを睨みながら「子供とは言えどもあの子はディオン家の後継者なのじゃろう、お主の兄如きでは役不足、代表に成りは為ぬの」フェルを含めロボスに対しても挑戦的な物言いをするランデルだった。
だがロボスは「ランデル殿、飽く迄も今回は事前協議の場でしょ?身内が居る必要性が無いのではありませんか、それに全権を担っていれば兄でも問題は無いと思いますが、それでも駄目なのでしょうか、その上其方も息子さんがお見えでない様子ですが如何?」
再び唸る反対派だったが「誰かラーハルト様を此処にお呼びしろ!」官僚の誰かが腰を上げかけたが、バインドがそれを制して「それには及ばぬ」今朝、ランデルと一部高官に【お館様の命令で、ラーハルト様の出席を直接差し止められた。息子はこの様な席では未だ相応しくない、と仰せである】話しを聞いた者達は、前日の発言を思い出して納得したのだが、ラーハルトの恥に成るとそれぞれが思い、理由を他の者達には告げて居なかった。
この時点で代表はランデルが担う物と、一部の者は歓迎して何も言わなかったが、其処を突っ込まれると面白く無い・・・
バインドは何食わぬ顔で「其方と同様だな、仕方在るまい、と思うが如何?」ランデルも不承不承ながら「まぁ良かろう、認めよう」ホッとした様子のステラ側代表団だったが「だが昨夜の不在証明をして貰おう」「え?何ですと・・・」ロボスが驚きながら問い直す。
不貞不貞しく笑いながらランデルは「昨日の深夜、お館様の寝所へ押し入った賊が多数居るのじゃ、この様な事は今迄無かった事での、疑いが出るのも致し方無い」「差し支えが無ければ、詳しく話しを聞いても宜しいでしょうか?」「差し支えは大有りじゃ、先ずは深夜から今朝に掛けて、お主達はどうして居ったのじゃ?」
互いに惚けて此れ迄遣り取りをしていたが、何とも役者な会話を続けて居た中で、ランデルが口火を切ると、事実を知らなかった者達から、当然ながら動揺する声が彼方此方で上がる・・・
ロボスは当然ながら「全員がホテルで休んで居ましたよ」「嘘じゃの」「どうして嘘などと仰るのですか?」「其処に座って居るフェル殿は、昨日見掛けて居らぬと報告が入って居るのじゃ、それを何とする?」
昨夜襲撃が行われたのは事実で、失敗したのだがこの時期なら不穏な話しである。
ロボスはフェルを見てから「今朝、南側の西門からザイオンへと兄達は入って来ましたが、それが何か?」不敵にランデルは笑いながら「転移が出来ると申したのは其方じゃ、それが申し開きに成ると考えるのは苦しい言い訳じゃな」
痛い所を突かれて「確かに・・・転移の事を言われれば微妙ですかね、事実は全く違いますが、僕達はホテルで監視されていたので不在証明が在ります。転移には多少条件が複雑で、何処にでも出来る訳では無いのですが、それを教える事は我々の不利に成りますし言えない、仮に教えてそれを信じて貰っても、兄の不在証明とは成りませんか・・・」
バインドの方を見ながらロボスは「ワイツ卿はお怪我などをして居られないのですね?」「襲撃は失敗に終わり事無きを得たが、知らぬ顔許りで賊の特定に至っては居らぬ」「特徴は無しですか?」「何も・・・」
ランデルが向かいの三人を交互に見ながら「兎も角じゃ、お主らが此処に居っては我らも碌に寝られぬの」バインドがそれを制する様に「ランデル様、何もその様な言い方を為ずとも宜しいのでは?」「本当の事じゃ、未だ証拠が上がって居らぬが怪しい事此の上無い、その方は転移の事を此方の説得をする材料で申し出たのじゃろうが、策士策に溺れるじゃの、ワッハッハァ」如何にも楽しそうに笑う・・・
「この様な状況では其方を信じる事は出来ぬ話しじゃ、足元の明るい内に帰る事を進めるが、だがそう言う訳にも行かぬ、この襲撃犯が全員捕まる迄か、或いは裏が取れる迄は此処に滞在して貰おう」大勢の武装した兵士が乱入して来る・・・
しかしバインドは「ランデル様、少しお待ちを・・・」「何をじゃ!」「襲撃犯がノコノコと何食わぬ顔をして、交渉の席に来るとも思えませんが如何?」「それは此奴らの面の皮が厚いからじゃ、下手に行方を眩ますと更に疑いが掛かるからの、何はともあれこの話は破談じゃ!怪しく無ければ見逃したが印象は黒じゃ、合図を送り先程ガキ共にも追っ手を向かわせたわ」
武器の類いは、当然ながら取り上げられている状態で、ステラ側の使節団は一切の動きを見せなかったが「一つ聞きたいのですが宜しいか」「何じゃ!」「何処かに五芒星の印が在りませんでしたか?」「何故それを知っているのじゃ、墓穴を掘ったの・・・語るに落ちるとはこの事、ヤハリお主達が犯人か!」
「いや、そうでは御座いませんが、プティマの子飼いか、恐らくそれに類する闇の組織にクロノス・ペンタグラムと言われる集団が御座います。その者が使う武器や奴隷紋、或いは入れ墨などで、五芒星の印が入って居るのです」
バインドとランデルは顔を互いに見合わせて「それは本当の事か?」「はい、最近ステラ村でも暗躍しておりますから間違い無いかと・・・偶然その情報を僕達は知りました」ロボスが肯定すると「じゃがプティマじゃと言って居るのは、その方の話しだけじゃ、ディオン家が雇って居ないとは限らぬわ」
ランデルが決め付けるとロボスは「それを指摘したのは僕ですが、それでも信じて頂けないと言う話しですか?」「クロノス何ぞ儂は知らぬからの、賊の特徴を言い当てただけで関係無いとは限らぬ」「そうですか・・・致し方無い、それで僕達を監禁しますか?」
バインドが穏やかに「確たる証拠も無しで使節に手を出す事も出来ませぬな」ランデルを見ながら話すと「だがしかし、此の儘みすみす逃がすと言う訳にも・・・」「彼らの話しを確認する迄は、暫定的にホテル・キングダムで軟禁、と言う話しで如何な物ですかな?」「ぐぬぬぬ、致し方無い」
武装した兵士に囲まれて辿り着いたホテル・キングダム、雌虎の護衛を解散させて階下のフロアーを占拠、上階の部屋に軟禁された。此れ見よがしに移動したので、人々の耳目はステラ側代表団に向けられる・・・
だがその夜、忽然とステラ使節団は行方を眩ます・・・
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。次回の更新予定は01月27日です。
細かな部分の言い回しやその他で気が付いた間違い等を随時訂正しています。
何時も応援を感謝致します。少しでもポイントが上がるのは励みに成ります。
此れからも頑張りますので、感想などを聞かせて頂ければ幸いです。作者拝




