105話 動き出したヘキサグラムの状況⑨密約
交渉の初日が終了して、一息吐いたランデルの元へ届いた一件の知らせ。
大騒動の裏側では、各々の錯綜する思惑が入り乱れる・・・・
夕刻、交渉の方は早く切り上がり、ランデルは意を同じくする同士達との相談事を済ませて帰る・・・その途中で、ザイオンの街では騒動が勃発していた。
注進してきた家臣達の話しを聞き終わり、ランデルは「あの小僧・・・」ロボスのニヤけた顔を思い出し、歯軋りをせん許りに奥歯を噛み締める・・・その雰囲気に呑まれて誰もが口を噤み見ていた。
同時期に話しを聞いたラーハルトとバインドは、ステラ側の派手な対応とその手の内を推察して、ワイツ卿の前で思わず笑い、二人は盛大に噴き出した。
バインドがラーハルトを見ながら「奴らやるな」「その様だバインド」ワイツ卿も「此で無かった話しとして終わらせたかった同盟の反対派達も、隠すことは敵わぬ仕儀と相成ったの・・・」「はいお館様、然様で御座います。仮に断っても会談を行った事実は残り、噂は当然拡がります」バインドが付け加える・・・
実際街では噂話所の騒ぎでは無かったのだ。話しは少しだけ遡る・・・
日が暮れる少し前、門の閉鎖にも十分に間に合う時間帯だったが、この時間帯は冒険者や探索者、そして旅商人や何かの用事で出ていた街の住民などが、帰って来る時間帯でもあった。
前日、トキからの指示で分散して出て行った雌虎の面々は、とある場所で着替えて派手な衣装を纏うと「さてみんな!用意は良いかい?」「ミカゲの姐さん、ウチらこんな派手な格好をして誰を迎えるんでさ?」「もう直ぐ来るよ、そんときゃ言わなくても分かるからね、何も言わなくても集まって来るんだよ」「はぁ~い」
何時もは防具に身を包み武器を携行して、街を歩いている雌虎のお姉さん方だが、其処は若い女許りの集団が綺麗な衣装を嫌う道理も無く、支給されたドレスを身に纏うと、それぞれが褒め合ったり腐したり、姦しくも誠に賑やかだ。
前日から当日にかけて居残っているクラン雌虎のお姉さん達は何と二百と三十人、トキやスズ、そしてフウや遠征組の女の子達と共に、雌虎全員のサイズを思い出しながら、最近ステラ村で売り出されていたチャイナ風の派手なドレスを注文した。
勿論遠征中の二百にも「アビスの旦那がみんなの活躍に感謝してくれて、ドレスを奢ってくれるそうだよ、甘えようじゃないか!」一斉に歓声が上がり、指定された新しい評判の店へと大挙して行く・・・
生地も迷宮絹、芋虫のような魔物が吐き出す糸を紡いである丈夫で防御力も十分、派手さも清楚さもある異国風デザインが、冒険者だけに限らず村の若い子達に忽ち受けた流行の店だった。豚耳の可愛い魔獣人が愛想も良く応対して、既製品の多少サイズの方が融通の利く物は、目の前で手直しをしながら合わせる素早さだ。
各サイズを取り揃えているので、丈の長短を合わせる程度の人や胴回りを合わせるだけの人もいる、無論それぞれの体型に合わせて、一から作らなくてはならい人もいたが、常日頃の鍛錬のお陰でスタイルの良い若い子が多く、問題も少なく雌虎の面々は、遠慮無くご馳走に成った模様だ。
ザイオンの居残り組にもと、トキ達や雌虎の面々は、何時の間にか勢いに任せて、なし崩し的に追加で三百着を注文して、誂えた様なタイミングで出来上がり、ソロソロ最後の仕上げに針子を連れて一時的に帰る予定だったのを拓斗の転移魔法で、急遽昨日にザイオンの雌虎本部へと来ていた。
真逆、パーティーに発展していると迄は、思って居なかったトキだったが、予定と違って本部へと転移した時、ロボス同様トキにも行き成りの話しに成り、企画書は既に渡していたが、予定変更を含めてミカゲに再び事情を詳しく説明した。
因みに拓斗達の事で、ミカゲがトキに散々ぼやいた事などは言うまでも無い・・・
パーティーの最中から今日の午前中一杯まで一晩中、一人ひとりサイズを合わせて出来上がったドレスを持参、ステラ村からの使節を乗せた馬車三台を囲んで派手に登場すれば、目立たない筈も無く、当然ながら大騒ぎに成る!と言う目論見だ。
余談だが、急場の事でもし人数が揃わなければ、ステラ村遠征組を動員してでも、トキは達成する積もりの仕事だった。針子が仕事を終えた時、何人かは口から魂が出掛かっていたのは(はへー)ご愛嬌だ・・・
数日前にドレスをプレゼントされた後、アビスとロボスから聞かされた計画を悪戯心半分で面白そうな話しだと思った。確かに感謝の気持ちもあるのだろうが、それさえも利用する強かさに舌を巻き、トキ達はザイオンが味方に付くのなら、ステラ村の者達と手を取り合い、雌虎全員の運命を彼らに預けて、いや賭けて、近頃漸く噂に成って来ている此の難局を乗り切ろうと考えた。
其処でトキは「雌虎も近年は頼ってくる女達が増えているさね」「規模は家臣団に引っこ抜かれた白豹の爪以上だものね、数は五百近くにはもう増えてるよ」フウが感想を述べると「もう超えているさね、だからなのさ、今度の戦は是非ザイオンに勝って貰わなくては、アタシ達はならないのさね」「此処じゃ無くザイオン何だね姐さん」
フウが言うと「そうさね、本部があるし、みんなの生活基盤があるからね、そしてステラに敵対すると言う事は、あの子達と戦う事に成るんだが勝てるか?お前達」二人が首を振ると「だったらザイオンとさ、どんな事をしてでも、この両者をくっ付けなければ成らないってもんさね」そしてトキ達は相談の上決論を出し、そしてこの計画に喜々として乗った・・・
アビスから大盤振る舞いされたこの衣装は、雌虎にとって高く付いたのか安かったのか?今後の話し次第と言う展開よりは、積極的に加担する方を選んだのだ。
後に雌虎戦闘服としても名を馳せるチャイナ服は、後日動きやすく改良された物を改めて注文して、それ以降ユニフォームとして定着する切っ掛けに成る・・・
閑話休題・・・
一方通行なら転移陣に割り込む事は可能で、今朝タクトに全身を被って貰い、光学迷彩で人目を誤魔化しながら、必要な事だったので寄り道だったがザイオンの転移陣を調査、位置関係を割り出してステラ村から拓斗は繋ぎ、通常転移に見せ掛けて最後は自ら馬車に乗って転移した。
現在ザイオンに繋がっている何処かから転移していると、周りは思っている・・・
一時的に結んだザイオンの転移ゲートに三台の馬車が現れると、何処から集まって来たのかは不明だが、大勢の女性達が異国風のドレスを身に纏い、取り囲んで入管手続きをする門の列へと並ぶ・・・
一旦は戻って派手に装ったトキが、最初の馬車と一緒に現れる・・・黒をベースに刺繍で銀の竜が胸辺りで戯れる様子を描き、金の虎が足元で吠える!と言う凝った衣装だ。二台目の馬車には、スズが真っ赤なドレスに刺繍で黒のバラの花、フウは三台目と現れて、紺のドレスに金銀の竜が二匹で風を吹く図柄の刺繍だった。
一人ひとりが登場すると歓声が上がり、派手な扇子を優雅に振ると、トキ達は一々洗練されたお辞儀をする・・・誰もががさつな雌虎幹部達とは思って居なかった。
因みにミガゲは、紫の地で黄色と赤の花を派手に刺繍した物を賜っていた模様だ。
ザイオンは転移陣の入管と、外部からの出入り口を纏めて、一箇所で手続きをする方式だ。前日直接的に街へと入った南門とは違い、北門は街の主要部分が転移陣のある場所と橋で隔てられているお陰で、この様な方法も採用する事が出来る・・・
門で待つ冒険者や探索者達が「おい、あれは雌虎か?」「違うだろ?雌虎の姉さん達はもっと厳ついぜ」そんな話しを聞けば、素っ飛んで行って影でボコボコヤキを入れる「私達はタイガーウイッチなの」などと言いながら・・・
何時ものゲートへ何食わぬ顔をし、クラン雌虎の旗(ピンクの小虎)を打ち立て、ステラのディオン家が使う、黒と白の豹が赤い玉に戯れている様なデザインの旗を掲げている馬車を取り囲んで、素通りを仕様とすれば、慌てて門番と集まって来た警備の者達が当然制止する・・・
責任者が誰何すると「何だい、アタシの顔を見忘れたのかい?情け無いたらありゃしないね」トキが兵士達にも聞こえる様に答えると、スズとフウも派手なドレスを着て、その責任者を責める様に「このアタシ達も見忘れたの?」などと言いながら他の者達もそれぞれに密着する・・・
悪戯心も随分働いて、大胆なスリットから伸びる足や膝が、兵士達の微妙な部分を攻めると、思わずニヤける者や飛んで逃げる者、男共の反応は様々なのだが雌虎のお姉さん達は、一様に楽しんでいる・・・
カラフルなドレスだが異国風なのは統一している派手な集団、況してや顔見知りの雌虎なら問題は無いのだが、気丈にも勇気を振り絞り「いや、お前達は問題無い、問題無いがその馬車は駄目だ!」「何故なんだい、余所様の正式なお使節が乗っているてぇのに邪魔しちゃアンタの首が跳ぶさね」
トキが脅すと馬車から少年が出て来て「おトキさん脅しちゃ駄目だよ」トキは舌を出して笑っていたが、手渡した通行証にはワイツ卿のサインが入っていて正式な物だった。何度もサインを確かめた後、その責任者が認めると、雌虎のお姉さん達が口々に半分揶揄いながらお礼を述べて門を通過した。
貴族街と商業区の間にある高級ホテル迄、その派手な一行は練り歩き、その存在を誇示したが、人々は時ならぬお祭り騒ぎに喝采を揚げる者やディオン家の旗を見て何やら噂する者達、歓迎する者が居ればそうでない者達も居る・・・
もうザイオンでは僅かな時間でステラのディオン家が、雌虎のお姉さん達と派手に到着したと知れ渡る・・・
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初日の事前会議が終了して、双方の言い分を伝え合った後、各々の陣営では・・・
騒ぎを聞き付けてプィテマ側に心を寄せる家臣達は、ランデルの元へと参集した。
貴族街の一番大きな屋敷で、口々にステラ側の遣り様に憤りを感じた者達が「奴ら恥も外聞も無く、何と言う真似をするのだ!此で穏便に断ろうとする我らの努力が台無しだ」「そうだ!破廉恥な登場をした物じゃ、そんな所とは相容れられぬわ」などなど・・・
悪口雑言が飛び交うが、肝心のランデルは客を待たせて執事と相談してる「お前の意見はどうじゃ?」「此でプィテマからの圧力は増すやに思われます」「決裂してもか?」「然様、決裂しても疑いは晴れず、更に用心されるやにもと存じます」
ランデルは少し考えた後「アルビル、お前を雇ったのはプィテマの縁者だからだ」「心得て居ります旦那様」「プティマのアルゴス殿に使いを出して、ザイオンには二心無しと伝えろ!」「それで宜しいので御座いますか?」ランデルは頷いて再び思案の中に没頭する・・・
「プィテマとしては、聡明で扱い難い従兄弟殿よりは、儂の方が与し易いと考えたのだろうが、然に非ずじゃ、儂ではザイオンは治まらぬ、だが従兄弟殿をプィテマ方に誘導する事は可能じゃ、今度の一件は派手に登場したのが、彼奴らの落ち度、内々で済ませる事も出来たのだが、こうなれば派手に断れば、それで良く成った。大恥を掻かせれば良いのじゃ!」
アルビルは此処が勝負所と「使節団が何かの事故にでも遭えば、それで話しも立ち消え、決定的な確執が生まれれば、プィテマの疑いも晴れましょう、その様に動きますか?ご命令さえあれば、何時でも願いは叶う事で御座いましょう」
この時ランデルは、アルビルの様子を観察していたが、何食わぬ顔を向けて「何も其処までする事もあるまい、何かの加減で何れ味方同士に成るやも知れぬのだからな、さて不満を持つ輩の機嫌でも取るとしようか・・・」「畏まりました旦那様」この時もコトリと物音がしたが、鼠の鳴き声がしたのみだった。
一方、城内の一室では・・・
派手なステラ交渉団の登場で街でも一騒動が起き、翌日の打ち合わせの為に食後にバインドとラーハルトが、再びワイツ卿の元へと訪れる・・・
二人の顔を見ながらワイツ卿は「くれぐれも転移魔法を扱えるのが、あの小僧だと悟られぬ様にの、アビスとの約束事じゃ、それは守らねば成るまいからの・・・」「委細承知をしております」「然様、ですが父上」「何事じゃな?」「恐らくそれ以上の秘密が彼らにはあります。ゆめゆめ油断無きように」「承知じゃ」
隣国、この場合は隣領か?近いだけに何かと比較されたり、一方的に張り合われたりなどで、プティマとザイオンは余り仲が良くない。そしてワイツ卿は、何よりもプティマのウルサルが気に食わない・・・領主としての遣り様が合わず、苦々しく思っていた。
ワイツ卿は昨日今日の話しで、ステラ村との同盟を安易に考えていた訳では無い、それ以前から入って来る雌虎からの断片的な情報の中でも、信じられぬ話しが多々見受けられて驚いていた。
曰く急速なステラの勃興、曰く精霊魔法を駆使して多数のゴーレムを扱える子供、最新情報では、曰くスライムの疑似兵、曰く千以上のオーク軍団を退けて、軽々と降伏させた子供達などなど、エトセトラ・・・
その子供が一昨日に見た小僧じゃと、瞬時に悟って儂自身が驚いた程じゃ・・・
ワイツ卿は二人に「雌虎から驚くべき報告が上がって来て居る・・・その全てが、あの小僧を中心にしての話しじゃ、その上更に転移魔法じゃとぉ?夢でも見て居るのかと、儂が罵声を揚げたい程じゃ、侮る事などありは為ぬわ!」「異常ですな」バインドも正直な感想を述べたがラーハルトも「早い段階で知り会えたのは僥倖、逆縁でしたが関係も修復出来て本当に良かった・・・」
「時代が動く時、必ずその様な者が幾人も現れるのじゃ、何れは覇権を争い各々が喰らい尽くす。その様な時代を無能者がやり過ごし生き抜くには、知恵を振り絞り勝ち馬に乗る事じゃ」「お館様はステラの小僧が勝ち馬だと仰いますか?」
バインドの問いにワイツ卿は「此は運じゃ、小僧が最後まで勝ち残るかどうかは、この儂も未だ分からぬが、近くで勃興した者に勝って貰わねば成らぬ、例え此はと思う者が遠くにいても、その者と誼を通じて旗幟を鮮明にした時、近くの者に滅ぼされては堪らぬからの、そして賭けたのなら一点賭けじゃ、ブレて良い話しは古今東西聞いた事が無い、そんな奴は信頼を得られず破滅の道を歩くのみじゃ」
バインドは納得した様子で「畏まりました。お館様、このバインド、知恵と能力をフルに使い、全力でお支え致しましょう」「頼むぞバインド、最悪の話しじゃが、その時には儂の身は兎も角、ラーハルトさえ生きて居れば、我が家の再興は出来るからの、負けそうなら共に逃げるのじゃ、他の子供達も身の振り方を考えねばな」
「お戯れを・・・その様な嵌めに成る事は御座いますまい、必ず勝ちましょう」
其処へラーハルトが「父上、弟は如何に致しますか?」「彼奴も可愛い息子じゃ、才能は普通じゃがの、だからサウス・ザイオンへと向かわせるのだ。周りの勢力が安定して居る彼処なら生き延びよう、それもお家を保つ一手じゃ」「成る程分かりました。父上、彼奴は未だ子供ですから修行を名目に出来ますよ」
頷いたワイツ卿は「近い内に誰か気の利いた者を付けて、川を下らせるとしよう、それと此を見よ」取り出した錫杖は、何か神気が漂う杖で嵌め込み式の魔石が見事だった「此は・・・」「何ですか父上、良い杖とは見受けましたが・・・」「此はあの小僧が持って参った」
二人に手渡すとそれぞれが感想を述べる「此は又見事な物ですな」バインドが先ず褒めると、ラーハルトは「これ程の品物を拓斗が持参したのですね」「うむ、此は千年樹の枝を加工して居る・・・そして位置情報が在ればじゃ、何処にでも転移が可能な転移陣を発生出来るのじゃ、まぁ帰りは小僧に頼んだがの・・・」
見事な木肌に何とも言えぬ光沢、使用している魔石も大きくフレア謹製の逸品だ。
因みに此処の転移陣も後に登録して、数カ所の転移が可能と成り、往復が出来る。
やや自慢げにワイツ卿が話すと「それで父上はその道具を使い、今日はステラ村のアビス卿と、直接の会談を行ったのですね?」「そうじゃ、そして儂は確信をしたのじゃ、この地域で立つのはディオン家じゃとな」「それでは同盟の締結ですね」
ワイツ卿は少し首を左右に振りながら、ラーハルトを諭す様に「いや、同盟は破談と為す」「何とお館様は仰れましたのか?」事情を推察して呑み込んではいるが、一応バインドが聞き返す・・・
やや薄ら笑いを浮かべながらワイツ卿は「表向きは、じゃ!旗幟を鮮明にしてバカ正直に隣のプィテマと諍う必要もあるまい、その間に内を纏めて裏切り者達やフラ付いている者共を一掃するのじゃ、まぁ利用価値が無くなる頃までは生かすがの、心変わりをすれば良しなのじゃが、許すとしても貢献次第じゃ」
やや驚きながらラーハルトは、身内の態度を思いだし「ならば伯父上、いや、ランデルは承知なのですか?」「あぁ、芝居じゃ、儂の心を明かさずともな、反対派を纏める者が必要であろう・・・そして決裂の引き金も派手に引いて貰う」
人の悪そうなニヤけ顔を見て「流石はお館様、ランデル様を含めての腹芸は見事な物ですな、虚と見せ掛けては実、実と見せ掛けては虚、いや、実に見事です」変な褒め様をバインドはしたのだが、ラーハルトはやや複雑だった。
自分は父は元より、バインドにも、そして伯父上にも遠く及ばぬのか・・・本気でランデルの態度に対して不満を募らせていた自分が恥ずかしく成り「未だ未だです父上」などと呟くと「15や其処らで腹芸などを身に付ける必要は無いわ、そして此れからもの・・・性に合わねば出来る者達を雇う事じゃ、信頼が出来る者をの、我ら貴族はその真贋を養う事こそが仕事じゃ、出来る者達に任せれば良いのじゃ」諭されて素直に「畏まりました父上」こうして一歩一歩、大人へと成長する・・・
此処からは暫く錫杖の話しと成ったが、同じくして手渡された仲間の絆、それに登録されていて且つ間近にいれば、同じく転移が8人まで可能だと、ラーハルト達は説明を受けた。一連の騒動が治まれば良いが、さに在らずんば万が一の際、家族の脱出に使えると、ワイツ卿は考えて喜んでいた。
そして擦り合わせ会議には、ラーハルトの出席を見合わせる様にと、命じられた。
やや不満なラーハルトは「この様な高度な会議は又とない、折角の機会なのに残念です。父上何故で御座いますか、是非お心をお聞かせ戴きたいのです」「向こうもあの小僧が不在じゃからの、相手にも突っ込み所を作らねば成るまい、今日其方は要らぬ発言をした、故に儂が見送ったと言えば、誰もが納得しよう程にな」
聞かされて初めて気が付く事もある・・・互いの駆け引きの中で表の会議自体は、家内の耳目を集める為の囮だった。
そして今日一日、会議でラーハルトの正面に座って居た拓斗は少年タクトだった。
それを思い出して「実は事前に知って居なければ、本物と思い込んで仕舞いそうでした」「然様、某も本当に同一人物だと勘違いして仕舞いそうでしたな」
バインドも同意するとワイツ卿は「それも雌虎からの報告の中でじゃ、あの小僧とソックリな小僧が存在していると、知らせて来てあったのじゃ、チラリと此の儂も見たが驚いたわい」「あの変身能力があるスライムでしょうか?」「いや、説明を受けたがよく分からぬのじゃ、樹核石がどうのこうのでサッパリじゃ」
バインドは「確かソックリに成るのは、核石が入っている物だけ、獣魔などの魔石や獣石を加工した物だけに限ると言っておりましたが・・・怪しいですな」「獣魔疑似兵だけではのうて、見知った人物に化けられると、其方も思うか?」「はい、確かな事は申せませんが、疑って掛かる事も肝要かと」「そうじゃの」
〔アチャー確信は持ってないけど、疑われちゃっているよご主人様〕スラだった。
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この日は拓斗が大忙しだったのだ・・・未明に転移陣のマークを付けた後、トキをステラ村に送り届けて、ロボス達を迎えに行き、此れ迄の事情を伝えて余所で待機して貰い、タクトを連れて来るとクラン雌虎へと転移した。
その後は部屋で背丈も衣装もソックリに化けたタクト、拓斗は此れ迄の事情と流れを伝えて立場を変わって貰い、拓斗はタクトに「口調も頑張って似せてくれよな」「分かっているよ拓斗、だけど何時もの癖が出るかもね・・・」
一部始終を見ていた同部屋のガッチャが「大将そんな時にはこのワイが、フォローをちゃんと入れまんがな」「あぁ頼むよ、それでは行くか」「頑張ってね」「今日一日大変でんな、同情しますわ」「言ってろ!」などと言いながら転移をした。
行き先は、予告していたザイオン城、その裏手へ回ると「お待ちしておりました」手引きしてくれたガニメデ達の案内を受けて、可成り早い時間帯だったが、事前に打ち合わせした通りにワイツ卿と会った。
未だ会談が始まる前だったが、持参した錫杖の使い方を教える序でで、ワイツ卿が希望する転移先を数カ所ほど登録、未だ一部しか行った事が無く、登録不可能な場所は、後日済ませる事に成った。
そしてワイツ卿たっての希望で、実地試験を兼ねてステラ村へと転移、杖の献上を済ませて、何事も話しの方に進展が無ければ、拓斗から話し合いを促す様にロボスから言われて居たが、案に相違して有り難い事にワイツ卿から希望された。
しかし、それも不可能な場合は、実の所影に隠れてタクト達の会議を見守る積もりだったのだが、違う意味で秘密会談を最後まで見届ける事に成った。
ザイオンのワイツ家とステラのディオン家、今後のヘキサグラム王国内乱の運命を左右する密約は、此処に軍事を含む秘密協定として締結されたのだ。
拙作ですが楽しんで頂ければ幸いです。次回の更新予定は01月20日です。
何時も応援を感謝致します。少しでもポイントが上がるのは励みに成ります。
此れからも頑張りますので、感想などを聞かせて頂ければ幸いです。作者拝




